「医療×ITベンチャーサミット」リポート(1)
医療産業都市・神戸市から、医療ITベンチャーの振興を提言
ベンチャー企業支援の強化方針が盛り込まれた「産業競争力強化法」。政府の成長戦略の検討方針で重点分野に位置付けられる医療業界では、新サービスの創出につながるITベンチャー企業の参入支援が成長の鍵を握る。
「産業競争力強化法」がITベンチャー参入を後押し
2014年1月20日に施行された「産業競争力強化法」。アベノミクスの第三の矢である「日本再興戦略」に盛り込まれた施策を確実に実行し、日本経済を再生して産業競争力を強化することを目的に制定された法律だ。中小企業や小規模事業者に向けては「地域での創業の促進」「中小企業の事業再生の支援強化」などが示されている。特に、政府の成長戦略の検討方針で重点分野に位置付けられる医療業界では、ITベンチャー企業の参入に注目が集まっている。
そうした中、トーマツベンチャーサポートは2014年1月28日、「医療×ITベンチャーサミット」を開催した。有限責任監査法人トーマツと神戸市も共催するこのイベントでは、医療産業都市である神戸市に集積する医療・ヘルスケア分野の企業、同分野への参入を検討する医療系ITベンチャーが参加した。今回から3回にわたり、イベントの模様をリポートする。
神戸市長が「神戸の強み×IT活用で“医療ビジネスを創出”」と宣言
神戸市は、1998年から「神戸医療産業都市構想」プロジェクトを推進している。このプロジェクトは、「市民の健康・福祉の向上」「神戸経済の活性化」「国際社会への貢献」などを目標としている。具体的には、神戸ポートアイランド地域に先端医療技術の研究・開発拠点を整備し、産学官連携による医療関連産業の集積を図る取り組みだ。先端医療センターや神戸バイオメディカル創造センター、神戸臨床研究情報センターなど14の中核施設が稼働し、265社の医療関連企業が進出(2014年1月末現在)。医療・ライフサイエンス分野の集積拠点としての整備が進められている。
神戸市の久元喜造市長は「神戸市は鉄鋼業やセメント、造船、化学工業などの重化学工業から栄え、その後、異国情緒あふれたファッションや食などの生活文化産業でも注目されてきた。医療分野では新薬の開発、ゲノム解析、iPS細胞の実証実験などが進められている。これらの神戸の強みを広く発信するため、またこれからの産業振興を考える上でITは重要なツール。さまざまな試みに取り組み、新しいビジネスチャンスを創出していきたい」と語る。
新しい市場の開拓が成功するためのポイント?
基調講演ではピーエスシーの代表取締役 相原輝夫氏が登壇し、「医療×ITが実現する医療イノベーション」をテーマに講演を行った。
1998年に医療システムの開発、コンサルティング業務を開始したピーエスシーは、院内のデータ統合管理システムや地域連携システム、ヘルスケア分野におけるシステム開発業務を展開してきた。相原氏は「医療従事者や患者にとって必要な医療システムを開発する集団」と自社を紹介する。
同社が参入した当時の医療分野のIT化について、相原氏は「治療技術や薬、検査治療機器などの技術が先行し、遅れて病院のIT化が進み始める時代だった」と振り返る。そこから「医療にとって最も重要なことは患者の治療であることは当時から変わらないが、ITが日本の医療を支えるようになってきた」と説明する。
相原氏は、医療分野で成功するためのポイントとして「医療システム市場の開拓とイノベーションが重要になるのでは」と語り、「医療分野の市場でシェアを取るためには“他社より先にアイデアを考え製品化して提供する”こと、市場のトップになる近道は“新しい市場を自ら創出すること”にある」と強調する。
実際、同社は「内視鏡やエコーなどのさまざまな検査機器のデータ管理をベンダーごとに専用のソフトウェアが管理していた状況に着目し、検査データを集約して一元管理でき、診療の質向上や経営に活用できるデータ分析製品・サービスを提供することで事業を拡大してきた」という。
また、「現状、医療ITにおける活発な設備投資の中心は大規模病院だが、全国に約9万施設ある診療所の課題を解決する手段を考えることで、新たな市場を切り開くことも可能。医療分野では、特に社会的意義のある新しい価値を創造することが重要だ」と説明する。
医療分野で爆発的なイノベーションが生まれる
イベントを主催するトーマツベンチャーサポートは、全国2000社以上のベンチャー企業の支援を行ってきた。特に、2014年は全国47都道府県でベンチャーサミットの開催を目指している。これまでは農業やモノづくり、女性の起業などをテーマにサミットを開催してきた。医療をテーマとするイベントは今回が初めてとなる。
トーマツベンチャーサポートの取締役 伊東昌一氏は「さまざまな産業分野でITを使った変革が起こる中、近年IT化が進む傾向にある医療では爆発的なイノベーションが生まれるのではと期待している」とコメントしている。
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