クラウドストレージの注目動向
「Dropbox」の業務利用が冗談でなくなる「for Business」の実力
一般ユーザー向けクラウドストレージサービスとして広く使われている「Dropbox」のビジネス向け機能が大幅に強化された。使い勝手や管理機能はどう向上したのか。詳しく説明する。
米Dropboxは、データセキュリティにする懸念を払拭し、堅ろうな一元管理を実現するため、「ビジネス向けDropbox」(Dropbox for Business)の機能を強化した。
業務に個人用Dropboxを使用し、機密データの保護を目的とした厳格なIT要件から逸脱している従業員は少なくない。ビジネス向けDropboxは、生産性とセキュリティを両立した、IT部門とユーザーの両方に配慮したサービスである。
ユーザーにとって、ビジネス向けDropboxは個人用Dropboxとあまり変わらない。従業員は、一元管理された場所に簡単にファイルを保存、共有でき、どのデバイスからでも、いつでもファイルにアクセスできる。また、ファイルの全ての更新履歴を確認することが可能で、無制限のストレージの容量が提供されている。そのため、Dropboxにファイルを保存すれば、どの時点の状態のファイルでも復元することができる。一番のポイントは、Dropboxユーザーの追跡、管理および既存ディレクトリへの統合に使用する一元管理システムが用意されていることだ。
ビジネス向けDropboxの前身は「チーム向けDropbox」(Dropbox for Teams)である。これは同社がビジネス向けのサービスとして最初に提供したもので、2011年11月にリリースされている。チーム向けDropboxでは、請求処理と管理制御、電話サポート、ストレージ機能を提供していた。基本的にチーム向けDropboxは小規模なチーム向けのサービスで、対象ユーザーの範囲はかなり限られていた。その後、Dropboxは二要素認証を導入したユーザーを管理者が確認できるようにするなどの機能強化を行ったものの、このツールのコンセプトが企業に浸透することはなかった。
ビジネス向けDropboxのセキュリティ強化
2013年2月、Dropboxは新しいデザインの管理コンソールをリリースした。このコンソールでは、チーム向けDropboxユーザーを管理するための新しい共有オプションを提供し、サービスの可視性と制御性が向上した。その後、同社ではこのサービスの名称を「ビジネス向けDropbox」に変更した。ビジネス向けDropboxでは、Active Directoryやシングルサインオン(SSO)のサポートなど、さらに多くの管理機能を提供している。
Dropboxのセキュリティ(過去に広く報道されたDropboxのセキュリティ問題)について心配していた管理者は、Dropboxがデータ保護に関して対策を講じたことを知って少しは安心して眠れるようになるだろう。現在は256ビットの暗号方式Advanced Encryption Standard(AES)によってDropboxに保存されているファイルを全て暗号化し、データの転送にはSSLプロトコルを使用してセキュアなトンネルを提供している。
管理者は、サードパーティーのツールを利用して追加の暗号化を適用することが可能だ。また、Dropboxはパスワードだけでなく、二要素認証も引き続きサポートしている。データの保存には、米Amazon Web Servicesの「Amazon Simple Storage Service」(S3)を採用。S3は、可用性と信頼性に配慮したインフラストラクチャと複数のデータセンターへの自動複製機能を備えたサービスだ。
SSOのサポートにより、ユーザーはActive DirectoryなどのIDプロバイダーに一度サインインすれば全てのビジネスアプリにアクセスできる。ビジネス向けDropboxにアクセスするために別のユーザー名とパスワードを入力する必要もない。SSOの統合によって、管理者になじみのあるシステムの機能も使用できる。ビジネス向けDropboxは、「Okta」「OneLogin」「Centrify」「Symplified」「Ping Federate」などのID管理製品を使ったSSOが可能だ(PingFederateについては「SaaS 280種以上のSSOを認証連携で実現する『PingFederate』」を参照)。
ビジネス向けDropboxの中核となるのは、多数の管理作業を一元管理できるWebベースアプリの管理コンソールだ。IT管理者はユーザーの追加や削除、パスワードのリセット、管理機能の制御、ビジネスユーザーによるアクティビティの監視を行うことが可能だ。加えてライセンスの追跡、請求処理の管理、共有フォルダのセットアップ、2要素のユーザー認証と総合リポートの生成を行うこともできる。
ビジネス向けDropboxの最新機能
Dropboxは2013年11月にユーザーと管理者を対象としたビジネス向けDropboxの新機能と機能強化を発表した。ただし、本記事執筆時点では、まだ提供されていない機能もある。
そのうち1つの機能を紹介しよう。この機能を使用すると、ユーザーは同じインタフェースを使用して仕事用と個人用のDropboxアカウントにアクセスできる。その際、各アカウントのデータは分離した状態が維持されるが、数回のクリック操作で仕事用と個人用の両方のファイルにアクセス可能だ。新しい通知バーには、両方のアカウントのアラートを表示することも、アラートをフィルタ処理してどちらかのアカウントのアラートだけを表示することもできる。管理者は、ユーザーが二重アカウントのオプションを有効にできるかどうかを制御することはできるが、ユーザーが個人用データにアクセスすることは制御できない。
ビジネス向けDropboxには、IT部門の満足度を維持するために多数の新しい管理機能が導入されている。例えば管理者は組織の内外でどのようにファイルが共有されているかを追跡できる。その方法は、運用中のログを確認するか、アクティビティの詳細が記録されたリポートをダウンロードするかの2択だ。また、共有フォルダーへのアクセス許可を制御し、チームメンバー以外との共有を禁止することも可能だ。
ビジネス向けDropboxのもう1つの新機能はリモートワイプ(遠隔削除)である。この機能を使用すると、クライアントPC、スマートフォン、タブレットの紛失や盗難にあった場合や従業員の退職時に、管理者がデバイスにあるDropboxフォルダを遠隔で削除できる。リモートワイプは、1台のデバイスに対して実行することも、1人のユーザーが登録している全デバイスに対して実行することも可能だ。また、ユーザーがDropboxのWebサイトから、各自のデバイスに対して遠隔削除を実行する機能もある。ユーザー間でファイルを転送する機能は新しく導入された管理機能で、人気が高い機能の1つだ。この機能はユーザーが別のチームに移った場合や退職した場合に重宝する。
ビジネス向けDropboxは、IT部門が抱えるセキュリティと管理機能の懸念緩和に関して、大きな進歩を遂げた。だが、Googleドキュメントに用意されている一連の包括的なコラボレーションツールは提供されていない。現在、Dropboxは「HipChat」「1Password」「CloudOn」「Asana」をはじめとする多数の製品やサービスとのデータ連係が可能である。ビジネス向けDropboxの価格構成はシンプルだ。全ての企業顧客は1ユーザー当たり月額15ドル(5ユーザーから)となっている。
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