破産企業も続出
Dropboxの躍進が原因? ストレージ専門プロバイダーは風前のともしび
Amazonなどの参入で活況を呈するクラウドストレージ市場。生き残りを懸けたストレージ専門プロバイダーが付加価値のあるサービスを提供することに奮闘している。
米AmazonなどIaaS(Infrastructure as a Service)の大手プロバイダーは、クラウドストレージ専門プロバイダーの多くが対抗できないほどの低料金を打ち出して、クラウドストレージの市場をコモディティ化しつつある。変化を続ける市場で顧客をつなぎとめ自社の地位を維持するために、クラウドストレージ専門プロバイダーは事業のポートフォリオを拡大し、付加価値となるサービスを加える必要に迫られている。
企業向けのクラウドストレージプロバイダー、米Nirvanixは先日破産手続きを開始して、顧客には同社クラウド上のデータを社内のデータセンターまたは他のプロバイダーのクラウドに移すように要請した。通知では、クラウドストレージのプロバイダーにはデータ容量以外にも提供しなければならないものがあることが強調されていた。クラウドサービスの専門性が高まりつつある現在では、ストレージはもはや、その中で提供される機能の1つにすぎない。
クラウドストレージは、例えばDRaaS(Disaster Recovery as a Service)やバックアップといったサービスの基盤に向いている。「こうしたサービスは、Nirvanixの失敗に困惑している多くのストレージプロバイダーにとって、バリューチェーンを強化するための次のステップになる」と話すのは、米ITソリューション企業Current Analysisでセキュリティおよびデータセンターサービス部門の主席アナリストを務めるエイミー・ラーセン・デカルロ氏だ。
「汎用性がありコモディティ化したストレージのシナリオを提供しているだけでは、プロバイダーはこの先生き残れない。何らかの形で付加価値がなければならない」とデカルロ氏は語る。「DRaaSのような、現在需要の高いサービスに結び付けて(ストレージの)価値を高めた方がいい」(同氏)
バックアップやディザスタリカバリのプロバイダーへと進化
かつてクラウドストレージに特化していた米Zetta.netは、IT業界の最大手企業、Amazon、米Google、米Microsoftなどがクラウドストレージ料金の値下げ競争に加わったタイミングで、バックアップやディザスタリカバリ(DR)へと軸足を移した。「Zetta.netもクラウド分野の新興企業の例にもれず、(業界のトップ企業と)同じ市場で勝負する体力がなかった」と、同社マーケティング部門の副社長、ゲイリー・セブンツ氏は説明する。
「クラウドストレージは依然としてZetta.netの事業の中で重要な要素であることに変わりはないが、顧客のマインドシェアを高めるには業務拡大の必要があると当社は認識している」(セブンツ氏)。「現在当社はバックアップ、アーカイブ、ディザスタリカバリをSaaS(Software as a Service)として提供している。ストレージは製品ではなく機能の1つにすぎない」と同氏は語る。
セブンツ氏は、「Nirvanixは、以前の目玉商品だったクラウドストレージをソリューションに進化させることができなかったが、われわれは、ストレージアーキテクチャをバックアップやディザスタリカバリの戦略の基盤として活用している顧客が多いことに早くから気づいていた」と語る。「アーカイブ、バックアップ、DRaaSといった分野に当社を導いてくれたのは顧客だ。そしてついに当社は、DRに特化したソフトウェア『ZettaMirror』を開発した」(セブンツ氏)
「クラウドストレージプロバイダーは、DRaaSやバックアップなどの方面にサービスを拡大するためには新たな要件に向き合わなければならないが、サービスを進化させるためにバックエンドのテクノロジーを大規模にアップグレードする必要はない」と、前出のCurrent Analysisのデカルロ氏は語る。「新しいSLA(サービス品質保証契約)の内容と、プロバイダーの時間を保証する能力次第で、多くの変化が起こるだろう」と同氏は予測する。また、プロバイダーが既存顧客向けに新しいサービスをパッケージ化して提供したり、新たな顧客にアピールにしたりするためには、マーケティング手法の転換も必要になるとデカルロ氏は主張する。
「DRaaSやバックアップなどの新しいサービスを追加するのならば、プロバイダーにとって大規模な先行投資が必須というわけでもない」と、米調査会社Forrester Researchでインフラストラクチャおよびオペレーションの上級アナリストを務めるヘンリー・バルタザール氏は話す。「サービスプロバイダーには、コロケーション施設に新サービスを投入したり、ホワイトボックスサービスを提供できる大企業のパートナーと提携するといった手がある」と同氏は指摘する。「新規のサービスをサポートするために、新しいデータセンターを買収したり建設したりしなくても、プロバイダーが自社ビジネスを成長させるための方法は幾つもある」(同氏)
ストレージに演算機能を追加すれば競争力は強化されるのか
「DRやバックアップへの業務拡大に加えて、演算機能をストレージと組み合わせることが、ストレージプロバイダーにとっては新たな扉を開くことにつながる」とバルタザール氏は主張する。アーカイブとビッグデータに対するニーズも、ストレージプロバイダーが進出できる市場だ。そこで新たな収益源を育て、顧客層を拡大できる可能性もある。
ただし同氏によると、演算機能をストレージに追加することは、全てのプロバイダーにとって容易なプロセスではなく、実現方法もリソースと規模によって変わってくるという。一方で、OpenStackなどのオープンソースのプロジェクトで、演算とストレージのリソースを一体化したレイヤーの開発が進められている。「OpenStackの支持に向けて動いているプロバイダーもある。ストレージ、ネットワーク、サーバ管理を統合したものを作るプロジェクトだからだ」と同氏は説明する。
「演算サービスを付加するストレージプロバイダーは、アナリティクス、検索、ディスカバリー(電子情報開示)サービスもさらに追加してほしいと顧客から要望されることが多くなるだろう」と、前出のデカルロ氏は話す。同氏によると、特定の業界向けのデータストレージの要件を満たす形で、ストレージやアーカイブの既存サービスを補う付加価値を提供しているストレージプロバイダーは多数存在すると言う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
6
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
「SIEMの利用」に関するアンケート
-
10
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー