Microsoft in Education Global Forumリポート【第1回】
数学問題をKinectで解答? 世界の学校はITをこう使う
スペインで開催された教育関係者向けイベント「Microsoft in Education Global Forum」では、世界中から集まった教員が先駆的なIT活用事例を多数披露した。その中から興味深い事例を紹介しよう。
2014年3月11日~14日の5日間、スペイン・バルセロナで開催された教育関係者向けイベント「Microsoft in Education Global Forum 2014」。米Microsoftが主催したこのイベントには、教育関係者や政府・自治体関係者を中心に世界97カ国から1100人以上が参加。世界の教育IT事情を理解し、自らの実践に生かそうと考える教育関係者の熱気であふれていた。
イベントの中核の1つが、世界の教育関係者がIT製品の活用事例を紹介する「Educators Exhibits」だ。各国の選抜を勝ち抜いた世界中の教員がブースを構え、資料やデモによる説明を交えて、自らの実践内容を来場者にアピールしていた。
まさに教育IT活用の“国際見本市”ともいえるEducators Exhibits。本稿では、Educators Exhibitsにあった200以上のブースの中から、興味深いブースの展示内容をピックアップして紹介しよう。
「Kinect」で数学の解き方が変わる?
洋の東西を問わず、数学に苦手意識のある生徒は少なくないようだ。Educators Exhibitsでも、主要教科の中では比較的多い、11個のブースが数学学習をテーマにしていた。特に、生徒が基礎的な計算問題に取り組みやすくするためにITを活用する実践が多かった。
多くの来場者の注目を集めていたブースの1つが、ルーマニアのSaint Varvara Secondary Schoolで数学を教えるLukacs Tiberiu氏のブースだ。同氏は、人のジェスチャーを認識できるMicrosoftのゲームコントローラー「Kinect」を数学に応用する取り組みを披露した。
Kinectを使った数学ソフトウェアで、数学の計算問題を両腕のジェスチャーで回答できるようにしたのが実践の骨子だ。学習者は例えば、画面に「(-8)+(-5)」「(-10)×(-5)」と表示されたら、右腕を右上、左腕を右下にして「<」を形作ることで問題に解答する(写真2、3)。
「Kodu」を使ったゲーム開発の実践も
IT製品を授業や学校に生かすだけでなく、情報モラル教育をはじめとしたITに関する教育も重要だ。特に中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修になったことを受け、プログラミングやソフトウェア開発への関心は高まっていくと考えられる。Educators Exhibitsでも、ソフトウェア開発教育の実践に関するブースが複数あった。
特に目立ったのが、ゲーム開発環境の「Kodu Game Lab」(日本語版は未提供)を使ったソフトウェア開発の学習事例だ。Kodu Game Labは、アイコンの組み合わせといった簡単な操作で、Microsoftのビデオゲーム機「Xbox 360」やクライアントPC向けのゲームを開発できる。主に子ども向けの開発環境として、Microsoftが無償提供中だ。
ボリビアのRichard Revollo Torrico氏は、Kodu Game Labを使ったソフトウェア開発の学習に加え、主要教科の学力向上も一緒に実現すべく実践を進める。生徒はKodu Game Labを使い、コース中にある障害物にぶつかると数学の問題を出題するレースゲームを開発(画面1、画面2)。生徒はKoduでソフトウェア開発を学び、開発したゲームを遊ぶことで数学も学ぶことができる。いわば“一石二鳥”の取り組みだ。
国内からも出展、手話学習やキャリア教育にITを活用
日本からも4人の教員がブースを展示し、多くの来場者が足を止めていた。イベント参加時は福岡県田川郡の大任町立大任中学校勤務で、現在は福岡県教育センター 産業情報教育部情報教育班 指導主事を勤める森 孝太郎氏は、数学や算数の反復学習を支援する「スパイラル計算学習コンテンツ」の開発と、その実践内容について説明した。
加法(足し算)や減法(引き算)を習得した後に、乗法(かけ算)や除法(割り算)を学習すると、以前はできたはずの加法や減法の計算を間違えてしまう――。こうした生徒を数多く見てきた経験から、森氏は乗法や除法の学習の際、加法や減法の復習を絡めながら進める必要があると判断。新規の学習内容と既習の内容を混在させたドリルを自動作成するスパイラル計算学習コンテンツの開発に至ったという(写真4)。
大阪府立生野聴覚支援学校の稲葉通太氏が紹介したのは、下水処理の専門用語を説明する手話の開発だ。「聴覚障害のある生徒に、手話通訳を介さず、下水道の重要性を直接伝えたい」。こうした思いを持った大阪市の下水道関連職員の有志と共同で、下水処理用語を解説するための手話を開発。併せて習得用の講座資料もプレゼンテーションツールの「Microsoft PowerPoint」で作成した。このPowerPointファイルは、特定非営利活動法人であるデフサポートおおさかが全国の特別支援学校へ送付している。
大阪市立東都島小学校(大阪市都島区)の平安山(へんざん) 英郁(ひでふみ)氏は、キャリア教育の一環としてITを活用する事例を披露した。都島区の花である「桜」をテーマにしたラスクやサイダーなどを、生徒が地元の店舗と共同で製品化。製品企画のプレゼンテーションにPowerPointを利用したという。また和歌山市立有功東小学校の福井規之氏は、地元にある和歌山城の魅力を伝えるために、生徒がPowerPointや動画編集ツールの「ムービーメーカー」を利用し、和歌山城に関するスライドショーやプロモーションムービーを作成した事例を紹介した。
“タブレット導入”で騒ぐブースは皆無
本稿以外にも、Educators Exhibitsでは世界中の教員によるさまざまな実践が紹介されていた。「Project Based Learning」(課題解決型学習)を意識した実践も多く、例えば地震多発地帯にある台湾の学校が、地図サービス「Bing Maps」を使った最適な避難経路の検討に取り組むなど、地域特有の課題を解決するためにITを活用する例もあった。
意外かもしれないが、「Surface」シリーズをはじめとするWindowsタブレットの活用を中心的にアピールするブースは皆無だった。「どのタブレットを入れた」「タブレットを何台入れたか」といったIT製品の導入ではなく、あくまでも「IT製品で何を実現できたか、何を実現したいか」を強調するブースがほとんどだったのが印象的だった。
第2回では、イベント2日目に開催された基調講演の内容を中心に紹介する。
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