EdTechフロントランナー【LoiLo編】
Keynoteを超えた? iPad用プレゼンアプリの新標準「ロイロノート」
LoiLoが開発・販売するiPad用プレゼンテーションアプリ「ロイロノート」。発売から1年足らずで幅広い教育機関の支持を集めた理由は何か。LoiLo取締役へのインタビューで明らかにする。
「iPadのプレゼンテーションアプリケーションの定番は?」という質問に対して、恐らく多くの人が米Appleの「Keynote」を挙げるだろう。だが学校などの教育分野では最近、違った答えが返ってくることが多いのをご存じだろうか。そのiPad用プレゼンアプリが、LoiLoが提供する「ロイロノート」だ。
ロイロノートは既に、筆者が確認しているだけで国内20校以上の学校が導入し、活用している。しかも、利用している教育機関が幼稚園から大学までと非常に幅広い。同一製品でここまで幅広く支持されるプレゼンアプリは、非常に珍しいといえる。このロイロノートについて、開発元であるLoiLoの取締役、杉山 竜太郎氏に話を聞いた。
連載: EdTechフロントランナー
ロイロノートとは:「多機能なのにシンプル」を極めたプレゼンアプリ
「簡単であり、シンプルである」。杉山氏は、ロイロノートの特徴をこのように説明する。
ロイロノートでのプレゼン資料作成は、「カード」という要素を並べて互いに結ぶ作業が基本だ。写真や動画、文字などを含むカードを並べていき、表示したい順にカードを線でつなぐだけで、プレゼン資料を作ることができる。ユーザーインタフェース(UI)は、机の上に付せんを並べて、それぞれを線でつないでいくようなイメージだ(画面1)。
カードとして用意しているのは、
- テキストカード(入力した文字を表示)
- お絵描きカード(画面に直接手書きした絵や文字を表示)
- 地図カード(地図と地名、建物名などを表示)
- ウェブ検索カード(Webページの内容を表示)
- 動画、写真カード(動画や写真を表示)
の6種類。地図カードは、地図を容易にプレゼン資料へ挿入できるだけでなく、手書きで文字やルート情報を書き加えるといった加工もできる(画面2)。
またウェブ検索カードは、同じくiOSの標準Webブラウザである「Safari」のAPIを利用してWebページの内容を表示する(画面3)。Webページの特定部分をクリップして、手書きで注釈を加える、といった使い方も可能だ。
競合との違い:多彩な機能を1アプリでシンプルに実現
ロイロノートで特筆すべき点が、通常であれば複数のアプリを切り替えて作業しなければいけない作業を、1つのアプリで完結できることだ。「地図の活用も、Webページの引用も、同じアプリ内で完結できる」(杉山氏)
他のプレゼンアプリでも、
- スクリーンショットで地図やWebページの画面を取得する
- 取得した画面を画像ソフトで加工する
- プレゼンソフトで画像を読み込む
といったステップを踏めば、ロイロノートと同じことは可能だ。ただし、このように複数のアプリを切り替えて利用する際は、「タスク切り替え」というiOS独特の操作と概念を理解する必要があり、ややハードルが高い。ロイロノートであれば、こうした本質的ではないところで迷うことなく、プレゼン資料作りに専念できる。
ウェブ検索カード機能にはwebフィルタリング機能を標準で用意しており、「教育上ふさわしくないWebサイトには接続できないようにしている」(杉山氏)ことも大きな利点だ。Web検索カードを開いたときのトップページは、日本放送協会(NHK)が提供する動画教材サイト「NHK for School」など、小学校から大学向けの教育系サイトへのポータルになっている。教科別のお勧めWebページへのリンクを用意しているのも便利だ(写真4)。
動画アプリの開発経験を生かす
細かい点で気付かない人が多いかもしれないが、動画カードで再生する動画の動きも非常に自然だ。競合ベンダーが開発するiOS向けのプレゼンアプリと比較した場合、特に動画のシーク(タッチ操作による高速早送り、巻き戻し)時の画面追従性能が優れているという。
LoiLoは2008年から、ビデオカメラなどに同梱されている動画編集ソフト「ロイロスコープ」の開発を通じて、動画関連技術を蓄積してきた。ロイロノートの動画カードにも、このロイロスコープで培った技術を生かしている。
また、ある生徒が編集した写真や動画、地図、Webページなどのカードを端末間で受け渡ししたいときには「トンネル」機能が役立つ。例えば、教員が作成した手書きのメモ入りの地図を学習者へ配布したり、学習者が作成した解答例をトンネル経由で教員へ提出する、といったことも可能。同じ無線LANネットワークへ接続している端末同士であれば、トンネルを張るために特別な準備は必要ない。
こうした多彩な機能を備えつつ、非常に直感的なUIにまとめている点も見逃せない。「ロイロノートのUIは、アナログ的な感性を大切にしている」と、杉山氏は強調する。事実、冒頭に記載した通り、幼稚園児も使っていることがその証明だともいえる(参考記事:「タブレットで動画撮影」が“学び心”を刺激する――大阪大学 岩居教授)。
導入済み教育機関:国内だけでなく、海外の教育機関にも活用が広がる
LoiLoが教育分野への取り組みを始めたのは2010年ごろのことだ。先に紹介したロイロスコープの教育版で、NHKが提供するフリーの動画素材を利用できる「ロイロエデュケーション」は、既に多くの教育委員会に導入実績がある。ロイロエデュケーションの開発は、有志の学校の先生と一緒になって進めたそうだ。
こうした教育分野への知見を基に、2013年3月に開発したのがロイロノートだ。500円(税別、2014年3月現在)の有料アプリであり、かつリリースからまだ1年あまりであるのにもかかわらず、幼稚園から高等学校、大学、特別支援学校と、多くの国内教育現場がロイロノートを高く評価し、利用している。
さらに2014年1月には、米国メイン州とニューヨーク州の公立小中学校での試験導入が明らかになるなど、ロイロノートはロイロエデュケーション以上の広がりを見せている。iPad用プレゼンアプリのデファクトスタンダード的な立ち位置にあるといっても過言ではないだろう。
フラッシュカードから振り返り学習まで用途はさまざま
ロイロノートの活用の仕方は、導入初期は教員によるフラッシュカード(学習者に英単語などを素早く大量に見せて、その意味をすぐ答えてもらうといった教育手法)などの「教材の提示」での活用が多い。活用に慣れてくると、実験の様子や授業風景などを写真や動画に撮って「振り返り学習」に使うようになるという。電子黒板と組み合わせて活用されることも非常に多いそうだ。
学習者が端末を利用できる環境では、記録からまとめ、発表までの一連の流れを1アプリ内で完結できるツールとして、さまざまな教科で活用されている。
ロイロノートに込めた思い:自分の考えを自ら発信する武器に
「未来の文房具」というキャッチフレーズを掲げるロイロノート。“文房具”という言葉が示すように、学びのツールとしてごく当たり前に教室に存在し、利用される。そんな姿を目指しているのだという。
「ロイロノートで目指したいのは、『自分の言葉で自分の思いや考えを伝えたい』と考える子どもたちを支えることだ」。杉山氏は子どもたちへのこうした思いをロイロノートに込める。「自分で考え、そしてその考えをうまく他人に伝えることができる大人になってほしいし、自ら発信することで自分の“才能”にもっと気付いてもらいたい」。杉山氏自身も、ロイロノートを情報を整理する道具として役立てているそうだ。
「私はもともとゲーム業界出身であり、ロイロノートの開発も“楽しさ”が出発点だった」と、杉山氏は振り返る。「使っていて楽しい」と感じられることも非常に大切にしているのだ。直感的に使えるUIも、スムーズに動く動画も、こうした「楽しさ」を阻害しないために非常に重要な要素なのかもしれない。
「これからも人間の可能性を伸ばすソフトやアプリを通して、ユーザーである教員や学校と新しい授業を一緒に創造していきたい。例えば、自由研究をいわば“教科”のような形にして、通年を通して長いスパンで実施し、研究内容をどんどん深めていけるといい。ロイロノートでそのお手伝いできれば、すごくうれしい」。このように、杉山氏はロイロノートを活用した“未来の学校”への思いを語る。
LoiLoでは、社員に対しても「自分のエンジンで自ら飛んで行く」ような人を求めているのだという。同社は今後、アプリケーションやサーバのエンジニアの人員を拡大させていく計画であり、教育分野への取り組みもさらに強化していく計画だそうだ。
短期間で教育分野向けプレゼンテーションソフトの新たなスタンダードを築いたロイロノートと、開発元のLoiLo。同社の今後の展開が楽しみだ。
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