何がうれしくなるの?
PCを“シンクライアント”に転用する一番シンプルな方法
VDI(仮想デスクトップインフラ)を展開する準備ができても、デスクに大量のPCが置かれている。それらはシンクライアントに転用可能だ。ただし、適切な方法で転用しないとVDIの導入効果が小さくなってしまう。
既存のクライアントPCは、VDI(仮想デスクトップインフラ)の展開に当たって障害になることが多い。総計数千ドル相当のハードウェアが社員のデスクに置かれている企業もある。VDIを展開する準備が整ったときに、ハードウェアをすぐに償却したり、リース会社に返却したりできるとは限らない。データセンターで運用されるVDIの仮想マシンが新しいデスクトップになるが、既存のPCをどうすべきか。
インターネットでちょっと調べると、「ホームサーバやメディアセンターにする」といった案が載っているが、どちらもビジネスで使うものではない。一般的に、企業は処分可能になるまでPCをシンクライアントに転用して使える。そうすることでシンクライアントへの設備投資をデータセンターのVDIに設備投資した年よりも後に先送りしている企業が多い。
PCからシンクライアントへ転用のベストな方法
しかし、既存PCをどのような方法でシンクライアントに転用するかが、シンクライアントのメリットを得られるかどうかを左右する。PCからシンクライアントへの転用の仕方がまずいと、VDIの展開による運用上の効果がなくなってしまう。
PCをシンクライアントに転用する一番シンプルな方法は、VDIクライアントをインストールしてデスクトップにショートカットを置くことだ。こうすれば、ユーザーは自分のVDIデスクトップにアクセスでき、VDIの導入前にアクセスしていたものを削除する必要がない。
これは手っ取り早く安価な転用方法だが、既存PCをそのまま残すお粗末なソリューションだ。社員は何の妨げもなく、従来と同じように既存のPCを使うことができる。つまり、IT担当者は新しいVDIデスクトップに加え、既存デスクトップPCもメンテナンスしなければならない。既存PCでは仕事ができないようにしなければ、そのPCを引き続きサポートすることが必要になるわけだ。
ユーザーが従来のようなPCアクセスを行わないようにするには、PC上にVDIクライアントしかない環境を作る必要がある。通常のWindows Explorerシェルを、VDIクライアントを提供するものに置き換えるアプリケーションが幾つかある。これらはユーザーがPCにログオンすることを要求し、ログオンすると、VDIクライアントが起動する。シェルの置き換えにより、ユーザーはローカルアプリケーションを利用できなくなり、VDIデスクトップしか見えなくなる。この方法により、最小限の手間で、全てのユーザーをそれぞれのVDIデスクトップにアクセスさせることができる。
この方法のデメリットは、PC上に既存OSが残っているため、ウイルス対策ソフトウェアが必要であり、パッチも適用しなければならないことだ。さらに、社員がPC全体を使うため、Windowsをサポートしていたハードウェアが全て使われることになる。HDDが故障したら代わりを見つける必要がある他、消費電力も数百ワットになる。シンクライアントの場合は数十ワットで済む。
シンクライアントのサポート面でのメリットの一部を享受するには、ユーザーのデスクにあるデバイス内のソフトウェアを削除する必要がある。これは、既存PC上でWindowsの代わりにシンクライアントOSを使用するシンクライアント化ツールで行える。当然のことながら、この作業は、PCを転用するに当たって採用したシンクライアントベンダーがこのツールも提供している場合に最もうまくいく。
シンクライアント化ツールを使えば、既存のHDDにシンクライアントOSを展開でき、シンクライアント管理ツールでデバイスを管理することが可能になる。これにより、パッチの適用とウイルス対策ソフトウェアの更新が不要になり、1つのツールで既存PCハードウェアと新しいシンクライアントの両方を管理できる。新OSを既存ハードウェアに導入するのはかなりシンプルなプロセスであり、通常、大量のデスクトップPCに迅速に適用できる。
このようにソフトウェアのみでPCをシンクライアント化する場合のデメリットは、既存PCハードウェアがそっくりそのままユーザーのデスクに残ることだ。ハードウェアが古ければ、障害が発生しやすいかもしれない。IT担当者はユーザーの席に足を運んで部品交換をしなければならなくなるということだ。
一方、PCのHDDをフラッシュベースのブートメディアに置き換えるシンクライアント化ツールもある。一部のシンクライアントベンダーは、PCシンクライアント化ツールをハードウェアとして提供している。このハードウェアは一般的に、既存のHDDの代わりにディスクコントローラーに接続する小型のディスクオンモジュール(DOM)だ。
DOMはブートディスクとなり、シンクライアントOSを格納する。DOMを使ってPCをシンクライアント化する方法では、展開の手間が少し掛かる。全てのPCのケースを開けて既存のHDDを取り外し、DOMを組み込む必要があるからだ。だが、この方法には、既存HDDが電力を消費することがなく、故障する恐れもないというメリットがある。IT担当者がユーザーの席に赴く必要はなくなりそうだ。
しかも、ソフトウェアのみのシンクライアント化ツールをDOMに多数展開することも可能だ。自社が利用するシンクライアントベンダーがシンクライアント化ツールをDOMで提供していなくても、HDDを取り除くことができる。
PCをシンクライアント化する方法が違えば、得られるメリットも違う。PCをよりシンクライアントに近づける方が初期コストは高くなるが、サポートコストが下がるため、時間が経てば元が取れる。常に念頭に置かなければならないのは、PCをシンクライアント化しても、いつまでも使えるわけではないことだ。故障率が高くなる前にハードウェアを交換するようにしよう。正攻法は、最初からシンクライアント専用に設計された機器を使うことだ。PCをシンクライアントに転用するのは、あくまで暫定的な措置なのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー