2050年には500億個のモノがネットへ接続
「モノのインターネット」に目の色を変え始めた経営者たち
あらゆるモノをネットにつなげる「モノのインターネット(IoT)」。業務の効率化といったメリットを期待し、IoTに目を付け始めた経営者も少なくない。一方で、普及に当たって越えるべき壁もある。
2014年5月上旬に米国で開催されたカンファレンス「Axeda Connexion 2014」。リアルとデジタルの人脈作りのために600人以上の参加者が詰め掛けた同カンファレンスでは、「モノのインターネット」(Internet of Things、以下“IoT”)と、膨大な“モノ”が接続された世界で何が実現されるかに関する議論が続いた。オープニングセッションで解説されたように、ビジネストレンドの変化が、世界中のIoTの動向に大きな影響を与えている。
米AT&Tの先進モビリティソリューション担当副社長を務めるマイク・トロイアーノ氏は基調講演で、IoTおよび「M2M」(機器間通信)市場のこれまでの発展について説明した。「2015年には、約250億個の“モノ”がインターネットに接続するようになるだろう」と同氏は予想している。2050年までに、この数字は500億個に達する見通しだという。
「2020年までに、インターネットに接続されるモノの数は、現在の地球の人口と比べて7倍程度になるだろう。以前から皆さんの多くがこうした状況の変化に直面しており、有線接続から完全なワイヤレス環境への移行が進んでいる。ただし、中にはこの移行に手間取っているケースもある」(トロイアーノ氏)
経営者にとっても重要性高まるIoT
トロイアーノ氏によると、AT&Tのネットワークは現在、約1700万台の無線機器をサポートしており、この1年でM2Mの顧客は54%増加したという。2014年第1四半期にAT&Tが獲得した“コネクテッドデバイス”サービス新規加入者の前年同期比伸び率も、2倍以上の61%に上昇したと、トロイアーノ氏は付け加えた。
米PricewaterhouseCoopersの最近の調査でも示されているように、「IoTがもたらすビジネスの可能性へのCEOの関心が高まっている」とトロイアーノ氏は指摘した。同調査では、「今後5年間で自社のビジネスに変革をもたらす最大の要因は何か」という設問に対し、CEOの回答率が最も高かったのは「技術」で86%だった。
「技術」に加え、同調査で2位、3位の回答率を示した「人口動向の変化」と「グローバル化」も、IoTと密接に関連している。若い新入社員の方が日常生活で通信ネットワークを使いこなしており、それらに依存するようになっている。
企業が国際的な規模で生産と販売を展開する中、「グローバル化は、通信ネットワークの強化による対処が必要となるビジネス課題だ」とトロイアーノ氏は指摘した。「ここ数カ月に私が話したCEOは皆、商品やビジネスのグローバル化を経営課題の1つと位置付けていた。彼らは、今後5年間でこの課題に対応しなければならないと認識している。無線通信など、そのために役立つ技術はたくさんある」(同氏)
「向こう10年に全世界で約7000社の大企業が生まれ、そのうち70%が新興国に本社を置くだろう」とトロイアーノ氏は説明。「地域や時間帯を問わず、リモートネットワークを活用し、そこからデータを引き出せることがますます重要になっている」と、同氏は付け加えた。
トロイアーノ氏は、企業がIoTやM2M技術の導入に踏み切る理由の上位5つも紹介した。最大の理由は「業務の効率化」で、わずかの差で「コストの削減」「時間の節約」「データの可視性の向上」「既存売上の維持・拡大」が続くという。
IoTで“スマート”カートが病院で活躍へ
トロイアーノ氏の講演の中で、多様な製品を手掛けるメーカーの米Emerson Electricの事業部門、Emerson Commercial & Residential Solutionsで医療ソリューション担当副社長を務めるロブ・ソビー氏も登壇した。Emersonは2014年2月からAT&Tと共同で、病院で使える“スマート”モバイルワークステーションカートの開発に取り組んでいる。
「ダウンタイムが分単位で測定される環境で、医療で求められるビジネス価値の実現を支援するには、強力な技術基盤と通信機能が必要になると認識していた」とソビー氏は説明した。開発中のワークステーションは、病院スタッフが患者のベッドサイドで医療記録を更新し、貴重な時間を節約できるように設計されている。メンテナンスも容易で、作業が必要になると、ワークステーションからアラートが自動送信されるようになっている。
IoT導入につまずく原因
トロイアーノ氏が見てきたところでは、企業がIoT導入につまずく最大の原因の1つは、主要な意思決定者の後押しを得ずに事を進めることだ。
「われわれの顧客の中堅および小規模企業の間では、社内の支持を取り付ける必要があるビジネスモデルや社内体制を十分綿密に検討しなかったために、IoTやM2Mソリューションの導入が難航した事例がたくさんある。最高戦略責任者はこれらの技術にワクワクするかもしれない。だがビジネス部門や最高マーケティング責任者の支持を十分に得られているかという問題がある」(トロイアーノ氏)
ソビー氏もIoTの導入を進めるのに苦労している。「周囲の人が皆、IoTを構成する“コネクテッドマシン”を見たことがなければ、IoTの取り組みの重要性を説明するのは難しい」と同氏は語った。「何が価値を生むのかを教えて、理解してもらえるようにしなければならない。彼らが主要なステークホルダーと、IoTで実現したいビジネス価値について話し合えるようにしていきたい」
「ユーザーとメーカー(この場合はIoT技術のプロバイダー)の橋渡しをするのは、いつも大変だ」(ソビー氏)
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