“スノーデン事件”で脚光も対策は進まず
「信頼される社員こそ監視すべき」――内部犯行を阻止する条件
内部関係者による情報漏えいへの不安が高まる一方、多くの組織で特権ユーザーをはじめとする権限の管理が欠如している――。調査結果からは、そんな実態が浮き彫りになった。有効な解決策はあるのか?
米国家安全保障局(NSA)の仕事を請け負っていたエドワード・スノーデン氏や告発サイト「WikiLeaks」に関する集中的な報道をきっかけに、内部関係者(インサイダー)による重要情報のリークに対して、企業の不安がかつてなく高まっている。だがこうした不安とは裏腹に、システム管理者権限である特権ユーザーの行動制限や監視といった根本的なコントロールが多くの組織で欠如している実態が、このほど発表された調査で浮き彫りになった。こうしたコントロールは、インサイダー脅威に対抗する上で重要な鍵を握る。
この報告書「Privileged User Abuse and the Insider Threat」(特権ユーザーの不正とインサイダーの脅威)は、特権ユーザーの管理実態に詳しいユーザー約700人を対象に、米調査会社Ponemon Instituteが実施した調査結果をまとめたものだ。回答者の88%は、「特権ユーザーに起因するリスクはこれから先も同じ状態が続く」あるいは「増大する」と答えている。
予想通り、特権ユーザーの不正に対する不安は、内部関係者の脅威に対する不安増大に直結している。スノーデン氏やWikiLeaksの事件によって、組織内の関係者に対する不安が増したという回答は89%に上った。
多くの企業は、いまだに特権ユーザーの規制に苦慮している。例えば「社内でのユーザー権限割り当てが“場当たり的”だ」という回答は49%を占め、2011年調査の51%と比べて微減にとどまった。「特権ユーザーの審査や承認にはメールやスプレッドシートといった手作業のプロセスが使われている」という回答もほぼ半数に上る。
この数字は、特権ユーザーの管理やインサイダー脅威の対策に充てる予算不足と関係がありそうだ。88%が「ユーザー権限の管理を成功させるためには豊富な予算が必要だ」と答える一方、30%は「特権ユーザーの監視には経費が掛かり過ぎる」と回答した。
調査を委託した米防衛技術企業Raytheonのインサイダー脅威戦略担当ディレクター、マイケル・クロース氏は、「たとえユーザーに悪意がないケースであっても、特権ユーザーを監視できなければ会社の重要なデータが危険にさらされる」と指摘する。米カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所の2013年の報告書によれば、インサイダー脅威の52%は偶発事故に起因していた。
Ponemonの調査結果は、クロース氏の見方を裏付けているようだ。インサイダー脅威の筆頭として、不満を持ったユーザーによる情報リークを挙げた回答者は全体の約4分の1にとどまった。それよりも、在宅で勤務したり、適切な審査を受けずにアクセス権を与えられたユーザーに対する不安の方が大きかった。
クロース氏は、「特権ユーザーの監視において、企業がもっと積極的な役割を果たす必要がある」との考えだ。例えばデトロイトの自動車製造工場で、現場監督が組み立てラインの従業員を監督するのと同じだという。
「デジタル時代でも依然として従業員を監督する必要はある。情報へのアクセス権を持った監視対象の相手は、長年信頼してきた人物かもしれない。だが今この時にも、その情報で愚かなことをしているかもしれず、あるいは年月を経て会社に対する考え方が変わっているかもしれない。そうした従業員を信頼しながら、彼らが自分の役割の範囲内にとどまり、権限を逸脱していないことを確認しなければならない」(クロース氏)
特権ユーザーの管理
セキュリティ問題ではありがちなことだが、「企業は技術を使ってプロセスのセキュリティホールをふさごうとしている」とクロース氏は言う。例えば回答者の7割強が、認証ツールやID管理ツールを現時点で利用していた。しかしこうしたツールは問題を解決すると同時に、多くの問題を発生させる。
回答者の3分の2強は、「セキュリティツールでは、社内の人間が不審な挙動を取っているかどうかを判断できるだけのコンテキスト情報が提供されない」と回答。そうしたツールで「多数の誤検知が発生し、事態を一層悪化させた」という回答も56%を占めた。42%は、「ユーザーによるポリシー違反の行動を監視する自社の能力に自信がない」と答えている。
「適切な技術の選定で悩む前に、ユーザーに割り当てるアクセス権のコントロールを強化するための基本的な対策を導入すべきだ」とクロース氏は提言する。そうした対策の多くは、適切な人材の配置によるプロセスの管理を伴う。
クロース氏は、まず主要コンタクトとなる権限管理責任者を置き、そこを通じて全アクセス権を管理するよう助言する。Ponemonの調査では約半数が、「部門管理職にユーザーへのアクセス権付与の責任を持たせている」と答えた。IT部門やアプリケーションの所有者が選ばれるケースも多かった。
権限管理プログラムの責任者選定に当たっては、正しい選択も間違った選択もない。ただ、必要なときにユーザー権が変更されていることを確認するため、別の人物を配置する必要がある。そうした単純なプロセスを導入するだけで、アクセス管理ポリシーの甘さに起因するリスク面の大部分を減らすことができる。最もありがちな、従業員が辞めた場合や配置替えがあった場合にユーザー権が失効されないという問題もこれで対処できる。
Ponemonの調査では54%が、「職務範囲や責任範囲を逸脱したアクセス権がユーザーに付与されている」と回答した。権限管理制度を確立すれば、アクセス権限の与え方が寛大過ぎるという問題にも対処できるようになる。
権限管理責任者に任命された人物は、アクセス権の付与や取り消しに際して、他の主な関係者と信頼関係を確立しなければならない。「例えば私が事業部の管理職で、誰かから特定のデータベースへのアクセス権を要求されたとする。その事業部の管理職は、たとえ最終決定権を持っていたとしても、例えばセキュリティ担当者や人事、法務担当者など、他のステークホルダーと連携しなければならない。他のステークホルダーが二重チェックすることなく、ただやみくもにアクセス権を付与すれば、プロセスはそこで崩壊する」。クロース氏はこう指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー