“私物バトル”は第2ラウンドへ
スマホもアプリも「私物」を使いたがる社員、それを止めたいIT担当者
私物端末の業務利用(BYOD)をめぐるIT担当者とビジネスユーザーの緊張状態はある程度緩和されつつあるが、今度はIT部門の許可を得ていないクラウドアプリの利用が問題になりつつある。
「どのハードウェアデバイスの業務利用を許可するか」をめぐる企業のIT部門と従業員間の緊張状態は、ある程度和らいだ。だが、今度は「クラウドベースのアプリケーションの無断使用がもたらす脅威」をめぐる懸念が高まっている。
私物アプリの業務利用(BYOA)が企業環境にもたらす混乱は、ハードウェアデバイスの問題よりも複雑であり、その影響ははるかに広範囲に及ぶ。BYOAはセキュリティ面だけでなく、法規制やソフトウェアライセンス条項の順守を維持するという観点からも脅威となる。
落としどころは見つかるか?
米ITコンサルタント会社Constellation Researchの主任アナリスト、アラン・レポフスキー氏は次のように語る。「10分もあれば、従業員は『Evernote』や『Yammer』『OneDriveといったアプリを使い、仕事のやり方を一変できる。IT部門はかつて、社内の全ユーザーのデスクトップにある全アプリの全バージョンを把握するほどの掌握力を持っていた。そして今、IT部門は同じように“Webトップ”(Webブラウザから利用できるデスクトップ環境)も自らの管理下に置きたいと考えている。
もっとも、IT担当者の中には、無断で業務利用されているアプリをもっと詳しく把握する必要性には同意しつつも、かつてと同じレベルでユーザーを管理する必要性については否定的な人もいる。彼らはBYOAの問題に対処するアプローチとして、単にユーザーが利用するアプリやサービスの管理を強化するだけの方が適切と考える。
米小売業者で上級システム管理者を務めるある人物は、「従業員に自分で管理させるわけにはいかない。われわれは会社に対し、ユーザーが利用しているアプリやサービスを把握する責任を負っている」と語る。ユーザーが何か法に抵触することをすれば、結局のところ、IT部門が経営陣に対して責任をとらなければならないというのがその理由だ。
一方で、そもそもほとんどのIT担当者には、従業員のスマートフォンやタブレットに何がインストールされているかを気に掛けているような時間の余裕はないという見方もある。インドに本社を置くITサービスのグローバル企業Wipro Technologiesで米国担当ソリューションアーキテクトを務めるマイク・ドリップス氏は「データベースの不具合に対応したり、管理職からの“メールが届かない”といった問い合わせに対処したり、スケジュール通りにアプリをロールアウトしたりなど、日常の雑務に追われて、それどころではないからだ」と語る。
社内のIT環境の最新状況を確認するための製品を提供しているソフトウェアベンダーの1つに、米LogMeInがある。同社は最近、監視機能と管理機能を組み合わせたクラウドアプリ管理製品「AppGuru」を発表した。AppGuruを使えば、IT担当者は従業員によるクラウドアプリの利用状況を可視化し、「Dropbox」「Box」「Office 365」といった、一般に広く使われている各種アプリ間でユーザー管理を一元化できるという。
「IT部門から与えられる製品よりも自分の業務に適したアプリを、ユーザーはそれぞれ自分で見つけている」。そう語るのはLogMeInの製品担当シニアディレクター、ジョン・パーセル氏だ。「だからと言って、IT部門は取り乱す必要はない。また、セキュリティ違反があって当然と決めて掛かる必要もない。ただ、少なくとも従業員の生産性のコアとなる部分への関与の仕方が問題になるということだ」(同氏)。AppGuruの基本の料金プランは、管理対象となるユーザー1人当たり年間29ドルからで、契約最小単位は10ユーザー。プレミアム版の料金プランは、ユーザー当たり年間39ドルからで、こちらも契約最小単位は10ユーザーだ。
IT部門には社内の実態が見えていない
情報セキュリティ研究機関の米Ponemon Instituteが発表した調査リポート「Data Breach: The Cloud Multiplier Effect(データ漏えい:クラウドの相乗効果)」では、調査に参加した613人のITプロフェッショナルが一様に、「社内におけるクラウドサービスの利用状況をある程度は把握している」と答えている。
回答者によると、ソフトウェアアプリ全体のうち45%がクラウドに置かれているが、IT部門はそのうちの22.5%については把握できていないという。ビジネスに不可欠なアプリに関しては、全体の約36%がクラウドに置かれているが、IT部門が把握しているのはそのうちの半数だけという。
前出LogMeInが米Edge Strategiesの協力を得て実施した調査の結果からは、IT部門が社内のBYOAの実態をいかに見誤っているかが読み取れる。
この調査では、ITプロフェッショナルが推定した「社内のBYOAアプリの本数」は1社当たり平均2.8本だった。だがその後、同じ規模の企業を対象にアプリ発見技術を使ってデータを収集したところ、BYOAアプリの本数は1社当たり平均21本弱との結果が出ている。
LogMeInのAppGuruは、IT部門がソフトウェアライセンスの順守を維持する上でも役に立つ。ライセンスの順守は以前よりも難しくなっている。今やユーザーは、会社がライセンスを取得済みのアプリを自分でダウンロードできるからだ。同じアプリではあっても、同僚が使っているバージョンとは互換性のないバージョンをダウンロードしてしまうユーザーも少なくない。
LogMeInのパーセル氏は「既に会社でライセンスを取得しているのに、同じアプリを従業員の半数以上が自分でも調達しているケースは珍しくない。つまり、会社が既に料金を支払った分のライセンスが使われないままということだ。これではお金の無駄だが、IT管理者にはなすすべがない」と語る。
IT担当者の中には、こうした潜在的な危険性を理解しながら、社内IT環境の稼働を優先させて日常業務に専念している向きもいる。こうしたIT担当者は、自分たちが社内に敷いたセキュリティ体制によって、いかなるセキュリティ違反が発生しようとも、大きな損害を被る前に迅速に対処できると自信を持っているのだ。
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