いまだに残る“男の職場”イメージ
セキュリティ担当に女性はなぜ少ない? Facebook幹部が「残念な誤解」を指摘
Facebookのセキュリティ担当ディレクターは、情報セキュリティ分野で女性がキャリアを成功させることは可能であり、人材の多様化はセキュリティ対策の強化に有効だと訴えた。
米Facebookの情報セキュリティ部門のトップによれば、情報セキュリティ業界の長期的な成功は恐らく、より多くの女性にこの分野での就業を促せるかどうかに掛かっているという。だがそのためには、女性とセキュリティに対する幾つかの残念な誤解を解消する必要がある。
Facebookのセキュリティ担当ディレクター、ジェニファー・レッサー・ヘンリー氏は2014年9月5日(米国時間)に米Bay Path大学で開催された第2回年次セキュリティカンファレンス「Cybersecurity Management Summit」で基調講演を行い、「情報セキュリティの分野では技術よりも人に重点が置かれるようになってきている」と語った。
セキュリティ分野で女性が占める割合は11%
ヘンリー氏は「ゲームチェンジ(流れを大きく変えること)」の重要性を繰り返し強調し、情報セキュリティ分野における勢力バランスを攻撃側から防御側へと引き戻す方法を見つけることが重要だと指摘した。同氏によれば、そのためには「共感力を持つ人材」を業界に引き入れることが不可欠だという。他者の感情を理解し共有することで、他者と気持ちを通わすことができるような人材だ。
「人は皆それぞれの人生を生きているが、われわれはそうした人々の行動を理解し、人々を守りたいと考えている」と、ヘンリー氏は語る。「そのためには、情報セキュリティに対するイメージを変えるために、われわれの行動や行動理由を人間味のあるものにする必要がある。われわれが下す判断の根底にあるものについても考える必要がある」
近年は、共感や協調、多要素分析など非技術系のスキルの重要性が増している。ヘンリー氏によれば、だからこそ、情報セキュリティの分野には女性に非常に多くのチャンスがあるのだという。ただし女性の採用ということになると、この業界にはイメージの問題がある。業界の推計によると、情報セキュリティ分野で女性が占める割合は約11%にすぎない。
「セキュリティ業界で働く人のイメージを絵に描いてもらうと、十中八九、男性が描かれる。ほとんどの場合は白人男性だ」と、ヘンリー氏は語る。
同氏によれば、実際、女性とセキュリティに対するイメージは大半が誤った固定観念にとらわれており、イメージされるのは大抵の場合、「何か必要とされているときにしか同僚男性と接することがない、どこかクセのある、周囲から孤立した女性」という、いかにもテレビに出てきそうな人物像だという。
「情報セキュリティ分野で必要とされる技術スキルは幅広くて奥が深い。われわれは人材の多様化がゲームチェンジに一役買うであろうことを認める必要がある。『セキュリティ業界は同質的な人材で構成され、他には誰も受け入れない』という神話をまず打ち破らなければならない」と、ヘンリー氏は語る。
従来とは異なる道筋で
ヘンリー氏は自身のキャリアパスについて詳しく語った。同氏が情報セキュリティの分野で働くことになったのは、偶然の流れからだったという。
同氏は小さい頃から科学と数学が好きだったが、高校卒業後はリベラルアーツカレッジ(人文社会・自然科学を幅広く学際的に学ぶ大学)に進み、コミュニケーション学を専攻した。大学卒業後はコンサルティング会社の米Andersen Consulting(現Accenture)に就職し、その流れでC++プログラミングを学ぶための10週間の研修に参加した。
それをきっかけにITに対する情熱に火がつき、その後、さまざまな面白い経験を重ね、ITプロジェクト管理の役割を担うようになっていったという。
「仕事はとても楽しかった。これこそ自分がやるべきことだと感じた。私自身、人々を1つにまとめ、複雑な問題に取り組むのが好きなようだ」と、同氏は語る。
その後、インターネットオークション大手の米eBayで情報セキュリティ部門のプロジェクト管理に携わることになったヘンリー氏は、「長期的なキャリアを築きたいと思える分野が見つかった」と直感したという。
「自分たちがやっている仕事の根底には人々を守るという目的があった。それがうれしかった」と、同氏は語る。「われわれはネットワークの保護に力を尽くしていたが、結局のところ、そうしたセキュリティやコンプライアンスの取り組みは全て、従業員やeBayを利用する何百万人ものユーザーを守るためのものだった」
ヘンリー氏は現在Facebookにおいて、eBayの子会社PayPalにいた頃と同様、情報セキュリティ部門の日常的なオペレーションの管理に従事し、最優先の取り組みを統括したり、チームの目標達成を支援したりしている。だがヘンリー氏のキャリアパスは依然として、情報セキュリティ分野の標準というよりは例外であり、まだほとんどの女性は、ヘンリー氏のように女性が活躍できる場がこの分野には豊富にあるという事実に気付いていないという。
Facebookをはじめ多くの企業は依然として、「OSやインタプリタ型プログラミング言語の知識を持ち、サーバやネットワークやアプリケーションなどの分野で経験のある人物」を情報セキュリティ部門の人材として求めている。だがヘンリー氏は女性に対し、そうした事実は全て無視し、同氏自身のキャリアを手本とするようアドバイスする。
「情報セキュリティの分野には万人向けのキャリアパスはない。情熱とやる気があり、学ぶ意欲があるのなら、スキルを磨き、この分野を選択肢の1つと考えるべきだ」と、同氏は語る。
インターネットセキュリティには多要素認証が不可欠
ヘンリー氏の講演はキャリアに関する内容が大半を占めたが、米Appleの「iCloud」から著名人のプライベート写真や動画が流出した事件の直後だったこともあり、同氏は手短ながら2要素認証の重要性についても述べている。
ヘンリー氏によれば、1要素のパスワードを使った認証は簡単に破れる方法が幾つもあるため、今日のインターネットにおいては、信頼に足る単体のセキュリティ対策にはならないという。
「Facebookに限らずどこにでも通用するベストプラクティスがあるとすれば、それはどこであれ可能な全ての場面で2要素認証を使うことだ。『Gmail』は2要素認証を提供している。米Yahoo!と米LinkedInもだ。2要素認証を有効化するのを忘れないことだ」と、同氏は語る。
ヘンリー氏によれば、ユーザーは従来、不便さを嫌い、多要素認証の利用には消極的だが、Facebook社内では2要素認証の導入に成功したという。Facebookは、タッチするだけでワンタイムパスワードを生成するUSBセキュリティトークン「Yubikey」を採用し、いつもと違うデバイスやロケーションからログインするユーザーには、通常のパスワード入力に加えて、Yubikeyへのタッチを求めるようにしている。
「Facebookはこの2要素認証を受け入れた。当初はこの技術に懐疑的な人が多かったが、今では皆が気に入っている。この技術のおかげでいかに柔軟性が高まったかを皆が口にしている。『IT部門の行動には従業員とそのデータを守る目的がある』ということへの理解も促した」と、ヘンリー氏は語る。
さらにヘンリー氏はFacebookユーザー向けのセキュリティ強化策として、ログイン承認を有効にするよう強く奨励している。この機能を使えば、使用したことのない新しい端末やブラウザからアカウントにアクセスするユーザーには、一度限りの特別なコード(ワンタイムセキュリティコード)の入力が求められる(このセキュリティコードは認証済みのモバイル端末宛てに送信される)。
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