MITが考える目標達成のヒント
常勝企業が決して軽視しない「デジタル化」「ユーザー」、そして「女性」
2014年の「MIT Sloan CIO Symposium」では、企業にとってチャンスでもあり、脅威でもある「デジタルエンタープライズ」にスポットライトが当てられた。
「デジタルエンタープライズを推進する」というテーマで開催された第11回となる年次シンポジウム「MIT Sloan CIO Symposium」では、「現状維持だけでなく、ビジネス戦略の決定にITを活用するために最高情報責任者(CIO)が果たすべき役割」について議論が交わされた。丸1日にわたって行われた今回のイベントは、「企業の改革を進める一方で、デジタル化に伴うかく乱要因から企業を防護するには、CIOはITをどう活用すべきか」という問題を考える上で有意義なヒントを与えてくれた。
1. 3つの強みを持つ
「かく乱要因に対する最大の防御は強くなることだ」――米Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)情報システム研究センター(MIT CISR)のピーター・ワイル上席研究員はオープニングパネルでこのように語った。「問題は何に対して強くなるかということだ」
「そう言われても、いろいろとあり過ぎて思い付かない」というCIOは、よく考えていただきたい。ワイル氏によると、デジタルエンタープライズの成功の鍵は3つだという。「製品と情報」「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」そして「既存の、あるいは新しい製品やサービスを、インタラクティブかつユーザーフレンドリーに提供するためのプラットフォーム」である。「われわれが経営陣と議論するときは、これら3つの分野での強みをアピールしている。あなたの会社では、その中でどれが競争優位の源泉になるのだろうか」と同氏は問い掛けた。
2. 全体的な整合性を確立する
「ITとビジネスの整合性」という表現は今や陳腐化した感もあるが、今回のシンポジウムで新たな意味合いを帯びて復活した。米投資会社Fidelity Investmentsでエンタープライズ最高技術責任者(CTO)を務めるスティーブン・ネフ氏によると、「整合性は何にも増して重要」だという。「技術とビジネスの整合性、ならびに異なる技術グループ間の整合性が重要だ。また当社の場合は、米国内および海外3カ国で事業を展開しているのでグローバル規模での整合性も不可欠である」
独Deutsche Post DHLグループのDHL Global Forwardingで南北米を担当するリカルド・バートラCIOも整合性の大切さを強調した。「顧客向けのソリューションであれ、社内プロジェクトであれ、優先順位の整合性を図ることが非常に重要だと思う」と同氏は述べた。さらに同氏によると、従業員の意思の統一を図る方法の1つが「ビジネス用語で話す」ことだという。
バートラ氏によると、整合性が求められる範囲は広く、社外の顧客のみならず自社の株主をも含める必要があるという。シンポジウムに参加したCIOからも同じ意見が相次いだ。だがMIT CISRのステファニー・ワーナー調査研究員によると、CIOと企業の経営陣との間のコミュニケーションが全般的に不足しているのが現状だという。「今のところ、経営陣とCIOの間で話題になるのは受動的な戦略に関する問題、つまりセキュリティとプライバシーをどうするかといった問題だ」とワーナー氏は述べた。
ワーナー氏が最近実施した調査によると、CIOと経営陣は「デジタル化はビジネスモデルをどう変えるのか」あるいは「デジタル化は企業にどんな混乱を引き起こすのか」という問題について話し合っていないという。「だがあと2年もすれば、この状況が変化するだろう」と同氏は予測する。デジタル化に伴う混乱の影響を受ける業界が増えるのに伴い、「こうした混乱を避けるためにITをどう活用すべきか」を経営陣が考えるようになるからだ。
3. ユーザーのデジタルライフに浸透する
ユーザーがITに慣れ親しみ、インターネット接続も日常的になるのに伴い、彼らは企業の製品とサービスに関する大量の情報を手に入れることができるようになってきた。米通信大手Verizonのロジャー・ガーナニーCIOの場合、それは同社のユーザーとの新たなかかわり方を構築することを意味するようだ。
Verizonでは、ユーザーが販売チャネルを通じて自社につながるのを待つのではなく、「ユーザーに浸透するチャネル」を模索しているという。「ユーザーのライフスタイルに合った形で彼らと関わるということだ」と同氏は述べた。
Verizonは2013年のクリスマスシーズンに、自宅で新しいデジタルデバイスを利用するユーザーが同社のインターネット接続サービス「Verizon FiOS」を利用できるようにした。また、一部のユーザーには「スマート提案」(ガーナニー氏)も行ったという。帯域幅の拡大でメリットを受けると思われるユーザーに対して、Verizonはユーザーのタブレットやテレビに通知をプッシュ配信し、タップまたはクリックするだけでサービスをアップグレードできるようにしたのだ。
「当社は自らをユーザーの自然なエクスペリエンス、すなわちユーザーの生活に浸透させた」とガーナニー氏は語る。「これがわれわれの新しい浸透的関係モデルだ」
4. 収益に貢献する
軍需メーカー米Raytheonのレベッカ・ローズCIOは「IT部門は当社の業績と不可分の関係にある」と語る。売り上げへの貢献という面では、ローズ氏が率いるITチームは、提案の作成、各社の戦略の把握、事業基盤の拡大に向けた隣接市場の調査などに協力している。また利益面での貢献に関しても、IT部門は「資金の運用から利益率の最適化に至るまで、さまざまな分野で積極的な貢献が求められている」と同氏は述べた。
IT大手の米DellでグローバルCIOを務めるアンディ・カラバウティス氏も同様の考えに基づき、自社のIT運営委員会を廃止した。「私は船ではないので、誰かに操縦される必要はない」と同氏は語った。Dellはそれに代わる組織としてビジネスアーキテクチャチームを設立し、カラバウティス氏はそこでビジネス部門と共にビジネス戦略の策定に携わり、その戦略の推進に向けて人材、プロセス、技術、ツール、情報をいかに活用するかについて話し合っているという。
ビジネスに対するIT部門の位置付けについて、カラバウティス氏は「IT部門はビジネス部門をサポートしているのでもなければ、ビジネス部門のパートナーでもない。DellのIT部門はビジネス部門の一部なのだ」と話す。
5. 集団的知性を磨く
ソーシャルネットワークを通じて明らかになったのは、集団的知性の活用が利益を生み出す可能性があるということだ。だが、自社のデジタルエンタープライズ化を目指すCIOは、集団的知性をどのように磨けばいいのだろうか。マサチューセッツ工科大学集団的知性研究所(MIT Center for Collective Intelligence)のトーマス・W・マローン経営学教授によると、集団的知性を測定できるのであれば、その問題に答えられるという。
マローン氏は研究を通じて、「組織に優秀な人材を集めれば、それなりのメリットが得られるが、それだけで優秀な組織ができるわけではない」ことを発見した。その他に「統計的に相関関係のある」3つの要因が組織の集団的知性に影響するという。それらは「社会的知性」「集団力学」「性別」である。「1人あるいは2人がグループ内の会話を支配していたケースでは、集団的知性が全般的に低いという結果だった」と同氏は語った。「性別も集団的知性を左右する。集団的知性はグループ内の女性の比率と強い相関関係があるからだ」
マローン氏によると、集団的知性のテストでは女性の方が成績が良いという傾向が見られたという。「社会的知性が高い男性も集団的知性を高める可能性がある」と同氏は付け加えた。「だが性別だけに注目した場合、女性の数が多いほど集団的知性が高くなるようだ」
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