【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ導入成功のポイントは「効果の明確化」と「運用スタイルの設計」にあり
診療所の基幹システムともいえる「電子カルテ」だが、普及はそれほど進んでいない。普及を阻害する理由は一体どこにあるのだろうか。
医師の負担が増えるなら電子カルテは導入しない
現在、診療所の電子カルテの普及率は約3割。製品が誕生してから15年が経過したにもかかわらず、それほど普及が進まない要因は、「電子カルテの費用対効果」が見いだせないからではないでしょうか。
現在のところ、診療所が電子カルテを導入しても診療報酬の恩恵はありません。そのため、電子カルテの購入をためらう医師からは「医療機器には点数は付くが、電子カルテには点数が付かないから購入しない」という声をよく耳にします。
多くの場合、電子カルテはあくまで設備投資という位置付けにすぎないようです。設備投資であるからには、電子カルテの導入で何らかの効率化が図れなければ、購入を見合わせるのは当然だといえます。また、電子カルテを導入すると業務が増えると考える医師も多く、その考え方から電子カルテの導入を見合わせる場合もあります。こうした理由が、電子カルテの普及を阻害していると考えられます。
レセコンは作業が効率化するので導入するが、電子カルテは……
かつてIT化の代表格であったレセプトコンピュータ(以下、レセコン)は、レセプトを手書きするという事務スタッフの負担を、IT化によって大幅に軽減できます。多くの医療機関が手書きよりもはるかに早く正確なレセプトが作れるレセコンを導入しました。既に診療所におけるレセコンの普及率は100%に近くです。手書きのレセプトと比べて作業が効率化する、レセコンの効果は実に明快だといえます。
電子カルテは導入効果に決め手が欠ける?
では、電子カルテはどうでしょうか。「紙カルテをなくし、ペーパーレスを実現する」といっても、結局は完全に紙がなくなるわけではありません。また、「電子カルテを導入すると、事務スタッフのレセプト入力操作が不要になる」という効果はあっても、実際にはレセプト入力作業が事務側から医師側に負担替えになったと捉えられることもあります。
「電子カルテを導入すると、待ち時間が短縮される」はどうでしょうか。会計の待ち時間は短縮するものの、診察待ちはなくならない。さらに「カルテ出し、カルテ搬送の手間が省ける」という効果も、過去カルテが紙で存在している間は完全にはなくなりません。
通常、電子カルテの導入で挙げられる上記のような導入効果は、実際には医師の導入意欲を満たすためには、いずれも決め手に欠けるようにも思えます。
電子カルテが使いこなせていない理由
また、実際に電子カルテを導入しても「レセコンやオーダーリング用途でしか使わない」という話を聞きます。メディプラザでは、電子カルテの導入を支援した診療所を見学する機会があります。レセコンやオーダーリング用途でのみ電子カルテを使うケースにはまだ遭遇していないものの、「当初、期待していたほど電子カルテを使いこなせていない」という医師が多いように思えます。
なぜ、電子カルテを使いこなせないのでしょうか。患者数の増加によってカルテ入力が負担になるケースや、導入初期の操作研修が不十分であったため、何となく使い続けているケースがあると考えられます。
診療科ごとの特性に合わせて電子カルテはセッティングすべし
電子カルテはあくまで効率化を目的とした「ツール」にすぎません。使いこなすポイントは、初期設定や日々のメンテナンスにあります。初期の電子カルテには機能も未熟であり、現在のものと比べてもかなり見劣りする製品もあります。適切にバージョンアップが行われていなければ、導入メリットを享受できないこともあるでしょう。
また、電子カルテ運用に診療科ごとの違いがあることに気付いていない点も、使いこなせていない理由の1つだといえます。診療科が違えば、使用する医療機器や診療の診察フローも異なります。本来の診察フローに合致する電子カルテを導入すれば解決できますが、これまでは電子カルテに合わせて診察フローを変更するケースが多かったように感じます。「電子カルテは診療所の基幹システムである」といえるため、この部分をおろそかにすれば当然使いにくくなるでしょう。
電子カルテ導入を成功させるためには「導入効果の明確化」と「診療科毎の特性に合わせた運用スタイル構築」が必要です。この点をあらかじめ考慮しないと「費用対効果が見いだせない」「導入のメリットが感じられない」となってしまうことでしょう。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
ITを活用した経営改善・業務効率化が実現できるショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医療機関のための製品導入事例紹介サイト「事例Plaza」
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