【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテにまつわる幾つかの誤解
「電子カルテを導入すると、診察時間が長引いて患者の不満が高まる」という声がある。一方で「診察時間が短くなった」という声もある。両者の違いはどこにあるのだろうか?
診療所のIT化を支援していると、医師からさまざまな質問を受けます。その中には、電子カルテに関して間違った認識があるのではと思われる内容もあります。今回は、そうした電子カルテにまつわる誤解を紹介したいと思います。
診察時間が長引いて、患者の不満が高まる
「電子カルテを導入すると、診察時間が長引いて患者の不満が高まるのでは」と危惧する声があります。一方で「導入したことで、診察時間が短くなった」という医師もいらっしゃいます。診察時間が長引くケースと短くなるケース、その違いはどこにあるのでしょうか。
診療時間が長引くケースは、電子カルテの操作に慣れていなかったり、PCが苦手であるために起きることが多いようです。電子カルテ導入後の3カ月くらいは、マニュアルを参照しながら操作することもあります。診察時間が長引くのは患者の印象も良くないでしょう。
カルテ記入のスピードを落とさない電子カルテの使用方法
では、どうすれば電子カルテを導入しても記入のスピードが落ちないようになるのか。例えば、処方入力を簡素化するセット登録などを用意することが考えられます。
電子カルテは導入準備の良しあしが、その後の運用に大きく影響します。事前に十分な打ち合わせを行い、よく使う薬や検査、処置などをある程度セット化して登録しておくと、電子カルテをスムーズに使えるようになります。この作業を念入りに行うほど入力時間は短縮できるといえます。
また、電子カルテの中には、紙カルテで使用していた「ハンコ」のように定型入力パターンを作成するなど、入力作業の短縮化を支援する機能が多く搭載されています。それらを有効に活用するとよいでしょう。
その他、キーボードによるタイピング入力に完全に切り替えるのではなく、手書きの部分を残す方法もあります。特に、皮膚科や耳鼻咽喉科、眼科などシェーマを多用する診療科では、電子カルテの「手書き」機能を利用すると紙カルテ同様の操作性でカルテ記入ができます。PC操作が不慣れな場合には、その入力の負担を減らすこともできます。シェーマの手書き入力を設定する場合は、事前にテンプレートや下絵の準備を十分にしておくことが重要です。
患者の顔が見られなくなる
また「電子カルテを導入すると、患者の顔が見られなくなる」という話をよく聞きます。これは、医師が電子カルテの入力に必死になるあまり、画面ばかりを見てしまうことで、患者を顧みなくなることを意味しています。診察で重要な医師と患者のコミュニケーションを電子カルテが阻害してしまうというのです。
しかし、私は「電子カルテは紙カルテでは実現できない、さまざまな情報を提供可能にするツールだ」と考えています。例えば、医師は電子カルテやPACS(医用画像管理システム)の機能を利用して、投薬経過や検査、画像診断などの結果を患者に対して提供したり、グラフ表示などで分かりやすく説明したりすることが可能になりました(関連記時:フィルムレス化を促進する医用画像管理システム(PACS))。医師と患者との情報共有により、患者が自ら治療に対してより興味や関心を持つようになるという効果も出てきています。
現在の電子カルテは「診療業務の効率化」と「患者とのコミュニケーション促進」という2つの側面を併せ持つ機能を備えています。電子カルテを導入した当初は、その操作に慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、電子カルテが持つ機能を日々の診療業務にうまく利用することで、徐々にそのメリットを実感できると思います。
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