【連載コラム】医療ITの現場から
患者満足度の向上につながる地域医療連携ネットワークへの参加
地域医療連携ネットワークは、病院や診療所などの参加メリットのバランスが取れている必要がある。また、最近では地域住民(患者)の地域医療連携への関心も高まっている。
前回の「クラウド解禁は地域連携ネットワークを加速させるか」では、診療所が地域医療連携ネットワークに参加するメリットを紹介しました。今回は地域医療連携ネットワークが成功するために重要なこと、地域住民(患者)のメリットなどを紹介します。
地域全体を1つの大きな病院に見立てる試み
厚生労働省が推進する医療政策は、この10年間で「地域完結型医療」にベクトルが向けられています。地域全体の医療機関を「外来から入院、在宅まで担うことが可能な大きな1つの病院に見立てる試み」といえるでしょう。その実現に向け、各地域の医療機関を連携させる体制の構築が着々と進められています(関連記事:地域医療の問題解決を支援する情報ネットワーク)。
地域医療連携が活発になることで、病院においては患者の紹介率、病床の稼働率などが向上し、高額な医療機器の回転率も高まります。これは、病院の経営面にも良い効果が生まれることになります(関連記事:「地域医療連携」を活用したビジネスモデルの創出)。
病院と診療所のメリットのバランスが大切
しかし、これまでの病院主導による地域医療連携ネットワークは、特定の病院による「診療所の囲い込み」につながるとして、必ずしも好意的に受け取られていませんでした。病院、診療所の参加メリットのバランスが取れていなければ、地域医療連携ネットワークはうまくいかないといえます。
地域の中核病院がITを利用した地域医療連携ネットワークを構築し、そこに多くの診療所が参加することで、双方の情報共有が活性化されます。地域一帯の医療機関が一枚岩となることで、「病院完結型医療」から「地域完結型医療」に移行できます。
地域医療連携ネットワークは、その地域の病院や医師会が協力して構築しなければ、多くの診療所の参加は見込めません。また、地域医療連携ネットワークを構築することで、地域医療の全ての問題を解決するわけではありません。しかし、現状のさまざまな医療問題を解決する地域完結型医療の実現の第一歩として、まず「複数の病院と多数の診療所を連携するネットワークを構築する」ことが必要になります(関連記事:「単なるIT化は医師の負担が増えるだけ」 日本版EHR研究班が指摘)。
患者満足度の向上にも
前回は、診療所の地域医療連携ネットワークに参加することによるメリットを紹介しました。
診療所が地域医療連携に参加するメリット
- 紹介患者の経過をリアルタイムに知ることができる
- 高額医療機器の共同利用で投資を抑えられる
一方、診療所の患者(地域住民)のメリットとは何でしょうか? 診療所が地域医療連携ネットワークに参加することで病院への橋渡しがスムーズになり、また病院と診療所との間で密なコミュニケーションが可能となります。これによって提供される医療サービスの質を高めることができ、患者の満足度向上につながると考えています。
また、患者自らが地域医療連携で共有しているカルテ情報を見せてほしいという要望も実際に出てきています。地域医療連携ネットワークに参加することは、診療所の武器になる可能性も今後高くなるでしょう(関連記事:コミュニケーションツールとしての電子カルテ活用)。
紙による紹介状のやりとりやフィルムの受け渡しなどの従来のフローでは、医療情報をリアルタイムに情報共有することは困難です(関連記事:効率的な紙カルテのデジタル化がペーパーレスを成功に導く)。インターネットが普及した現在では、患者からも「なぜ情報共有にITを活用しないのか」という疑問が生まれる可能性も考えられます。
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