医療系ITベンダーの市場参入が進む
医療機関がクラウドストレージのお得意さまになっている理由
クラウドストレージの利用を検討する医療機関が増加している。それを後押ししているのは、データ圧縮技術の進化と低価格化だ。
コモディティ化によって、クラウドストレージは消費者と専門家の間で普及が進んでいる。また、クラウドストレージの導入が急増したことで、どのデバイスからでも、いつでもデータにアクセスできる環境が整った。このトレンドによって、医療系のITベンダーはこぞってクラウドサービスを活用し、患者や臨床医が医療データに簡単にアクセスできるようにしている。さらに、重要な医療データを患者や医師に提供することにクラウドが役立つと気付いたクラウドストレージプロバイダーが、医用画像を重視するようになっている。
業界トップのクラウドストレージプロバイダーである米Boxが2014年10月に放射線ソフトウェアとクラウドサービスのプロバイダー米MedXTの買収を発表した。この取引はある事実を示唆している。それは、医療に特化した機能を顧客に提供することにクラウドプロバイダーが関心を示していることだ。過去には、EHR(電子健康記録・生涯医療記録)にアクセスしづらいことについて患者から不満の声が上がっていた。医療データの保存先が単一のプロバイダーに集約されていなかったので、患者が複数のWebポータルを閲覧しなくてはならない場合もあった。また、データが見つかったとしても内容が完全とは限らず、医用画像が含まれていないことも多かった。
「Meaningful Use」(米国の医療ITの有効利用)プログラムによって、ポータルまたはデジタルメディアから患者が医療データにアクセスできる認定を受けたEHRを採用する組織はある程度増加した。だが、患者に医用画像を提供することが求められるようになったのは「Meaningful Use Stage 2」からだ。その最終規則では「画像とその説明/付属情報から構成される画像結果に、認定を受けたEHRテクノロジーからアクセスできなくてはならない」と定められている。
ここ数年、「Radiological Society of North America」(北米放射線学会)カンファレンスでは医用画像コンテンツをホスト/管理したり、医師や患者と共有したりできるクラウドサービスを提供するベンダーが歓迎されていた。だが、そのようなデータを転送して保存するには多くの帯域幅が必要となる。そのため価格を抑えることができず、これらの製品の普及は進んでいない。一方、近年ではクラウドストレージの低価格化と圧縮機能の進化により、放射線情報システムや医用画像管理システム(PACS)などの画像システムのベンダーが製品ラインにクラウドサービスを追加しやすくなっている。
Boxは、同社のクラウドで消費者や企業ユーザーのデータを管理できるようにしている。MedXTの買収後は、患者と医師が私物のモバイルデバイスから医用画像にアクセスできるようにするという新しい目標に取り組んでいる。
今後、MRI装置やX線など多くの医用画像機器が、クラウドベースのPACSに直接データを送信するようになることが予想される。クラウドサービスをワークフローに取り入れて、研究結果の確認に使用し、患者の症例を他の医師と共有して共同研究に役立てる放射線科医も増えるだろう。ただし、医療データは米HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)で保護されている。医療データストレージ市場に参入するクラウドベンダーは、この点に留意されたい。
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