2012年11月28日 08時00分 UPDATE
特集/連載

まずは医用画像の外部保管から 失敗しない医療クラウドの選び方

医療分野におけるクラウドサービスの開始が相次いでいる。さまざまな種類のサービスがあるが、現段階ではクラウド利用のメリットを享受できないこともある。選定に関する見極めポイントを有識者に聞いた。

[翁長 潤,TechTargetジャパン]
photo Annexe R&Dの井形氏

 2010年2月、関連省庁のガイドラインの順守を前提に認められた「民間事業者による診療録などの外部保存」によって、医療分野のクラウドサービス提供が始まった。そのサービス選定の視点について、ヘルスケアIT分野のコンサルティングに長年従事しているAnnexe R&D 代表取締役の井形繁雄氏にそのポイントを聞いた(関連記事:医療のIT化が遅れている原因は何か?)。

 井形氏は「昨今のネットワーク技術の急速な進展に伴い、いつでも、どこでも情報を利用できる“ユビキタス情報空間の構築”が現実的となってきた。医療機関でもシステムの“所有”から“利用”へという意識が芽生えており、医療ITをサービスとして利用する時代が到来しつつある」と説明する。

 井形氏は、医療クラウドの定義について「“少なくとも院内よりは安全な”データセンターにシステムやデータを置き、サービスを使用した分だけ料金を支払うことに集約される」と語る。しかし、医療クラウドの利用については注意すべき点がある。井形氏は「SaaS(Software as a Service)型クラウドは難しい部分もある」と説明する。病院情報システム(HIS)は専門性が高い部門システムの有機的な結合から成り立っている。また、今後も医療技術や現場業務の進歩をITシステムが半歩遅れて追いかける構図が続くと予想しており、HIS全体のパッケージ化は事実上困難だという。そのため、全面的なSaaS型のクラウド実現は難しいというのだ。

 さらに、医療クラウドの利用メリットとして「EHR(Electronic Health Record)(※)」や、2011年3月に発生した東日本大震災を契機とする「事業継続計画(BCP)/災害復旧(DR)」を挙げるベンダーが多い。これらの観点で医療クラウドに注目することは間違いではないが、井形氏は「EHRやBCPだけが、医療分野のクラウド活性化につながるものではない」と説明する。EHRは地理的・地域的な特性ごとのユースケースで検討すべき課題が多岐にわたるため、クラウド導入の目的としてはハードルが高い。また、BCPへの寄与として取り上げられることもあるが、BCPの肝は災害発生直後の通信手段の確保、職員・患者の安否確認、被災者が必要とする証明書の早期発効などの初動対応であり、医療クラウドはBCP全体の一部の機能にすぎないという。そのため、「EHRやBCPを医療クラウドの利用メリットや導入目的として真っ先に打ち出すのは、利用者をミスリードすることになる」(井形氏)

※ EHR:地域/国家単位で医療情報を集約・統合して共同利用する情報連携基盤。

 その上で「より“早期”に“平常時”のメリットを享受できるサービスから利用を始めて、段階的にクラウド適用の可能性を探るべき」と話す。特に、まずはテキスト情報に比べて容量が多い医用画像情報の外部保管からのクラウド利用を例として挙げている。

データの院内保管が病院経営を圧迫するケースも

 日々、医療機関には膨大な量の医用画像情報が蓄積されている。法的な保管義務期間は3年間だが、病院のリスク管理や長期間の病変把握、症例研究への2次利用に備えて、基本的には破棄されることはない。

 井形氏は「捨てられない医用画像を保管するストレージの増設だけのために年間1000万円を費やしている病院も存在しており、医用画像の院内保管は病院経営をじわじわと圧迫することもある」と指摘する。参照頻度の少ない情報を外部保管サービスに預け、院内保管の量を軽減することは、病院経営者から現場スタッフまでが実感できる“分かりやすいクラウド利用の効果”であるという。

photo 医用画像保管クラウドの将来イメージ Copyright(c)2012 Annexe R&D All Rights Reserved.

外部保管サービスを見極める3つのポイント

 医療クラウド利用に関しては、「情報漏えいや損失などのセキュリティ面が心配」「一度、データを預けると他の事業者に移行しづらいのでは」という不安を抱える医療機関も存在する。井形氏は、医用画像の外部保管サービスを見極めるポイントとして以下の3点を挙げている。

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