月額料金を支払うだけで煩わしいデータ管理を委託できるクラウドストレージサービス。多くの医療機関はそのメリットは理解しているが、実導入に対しては慎重な姿勢を見せているようだ。
電子記録とデジタル画像データの増大に直面する病院は、クラウドストレージサービスの有望な顧客といえるだろう(関連記事:クラウドコンピューティングが変える医療の未来)。だが、セキュリティなどの問題を懸念する医療関連業者は、そうしたサービスの利用に慎重だ。ためらう理由の1つは、医療情報漏えいに対する政府の金銭的ペナルティの厳しさだ。
クラウドストレージサービスを利用すれば、顧客は月額料金を支払うだけで、全ての雑用を引き受けるサービス事業者にデータ管理を委託できる。データの増加に合わせて新しいファイルサーバやストレージを購入していたユーザーは、そうした単調な購買行動から解放される。顧客になれば、電源や空調関連の支出やストレージ管理の人件費も抑制できる。
現在、数多くのサービス事業者がエンタープライズ市場にクラウドストレージを提供している。主要ベンダーには、Simple Storage Service(S3)を展開するAmazon Web Services、Nirvanix、そしてCloud Filesを展開するRackspaceなどが含まれる。一方、Dropboxなどの消費者志向が強い企業も、ビジネスユース向けのストレージサービスに力を入れつつある。
その他、ユーザーの社内ストレージを外部のクラウドリソースに拡張するクラウドゲートウェイベンダーも登場した。この分野には、NasuniやTwinStrataなどのベンダーがひしめく(関連記事:成熟化に向かうクラウドストレージのエコシステム)。
こうしたベンダーは、ストレージへの強い要求がいずれ外部にデータを委託する恐怖心を打ち負かすだろうと信じている。「新しいテクノロジーの導入は、常に頭痛とリスクのバランスの上に成り立っている」と語るのは、Nasuniの創立者でCEOのアンドレス・ロドリゲス氏だ。
そんなクラウドストレージに病院が手を伸ばすとすれば、まずはアーカイブデータをストレージサービス事業者に移行することからだろうと業界関係者は話す。その導入初期の段階で、医療機関は医療データを長期にわたってアクセス可能にする課題に取り組むことになる。「病院関係者は10年から15年前の記録までアクセスしたいとする声が多い」とロドリゲス氏は指摘する。
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