クラウドストレージサービスを補完するソリューションベンダーが提供するさまざまな機能を紹介する。
クラウドストレージサービスと連係する機能、そしてクラウドストレージサービスプロバイダーの製品のセキュリティや可用性、可搬性を強化するサービスを提供するベンダーが増えてきた。
新しい技術はすべて、アイデア段階からβテストへ、そして期待が盛り上がる段階から製品登場へという段階を経る。ユーザーもこれらの段階に沿って必然的な道筋をたどることが多い。最初に興味をそそられ、次に不安を抱き、最後に批判的な見方をするというコースだ。
その後で、新技術の不備を埋め、ユーザーの真の要求を満たすのに必要なエコシステムが出現する。ユーザーが現実に苦労している問題を解決する価値提案が現れ、それからゆっくりと普及が進むのだ。クラウドストレージが登場して約2年が経過した今がその時期に当たる。
現在市場に出回っているクラウドストレージサービスソリューションの多くは、RAIDやリモート監視といった基本的なストレージ機能とデータ保護機能に加え、アプリケーション移行のためのREST(Representational State Transfer)形式のAPIを提供している。いずれも大切な機能だ。しかし厄介な問題も残されている。今日のIT部門で運用されているアプリケーションの多くがRESTを理解しないのだ。これらのアプリケーションは、ブロックインタフェース(iSCSI、SCSI、ファイバーチャネルなど)あるいはファイルインタフェース(NFSやCIFSなど)を必要とするからだ。すべてのクラウドストレージベンダーがREST型APIを提供しているが、これらは各ベンダー独自の仕様となっている。このため、あるサービスプロバイダーのストレージにデータを保存すると、ほかのプロバイダーにデータを移動するのは(不可能ではないにせよ)困難だ。加えて、ユーザーは自社のデータセンターの外に置かれるデータのセキュリティやアクセス性、可用性に対して不安を感じている。
しかし今、こういった問題に対処しようという新たなカテゴリーのストレージエコシステムベンダーが登場しつつある。こういったクラウドストレージ支援ベンダーは、多くのクラウドストレージ製品の不備を補ってくれそうだ。
この1年間で、クラウドストレージサービスへの連係機能を提供するだけでなく、クラウドストレージサービスプロバイダーの製品のセキュリティ、可用性、可搬性を強化するサービスを提供するベンダーが多数登場した。表面的には、これらのメッセージングベンダーの多くが似通っているように見える。それは当然のことだ。同じような問題に対処しているからだ。しかし、これらのベンダーを同じ基準で比較するのは、米国Data Roboticsの「Drobo FS」と米国NetAppの「FAS2000」を比較するようなものだ。両製品ともネットワークドライブで、いずれもデータを保存するための製品だが、用途は大きく異なる。一般的に言えば、クラウドストレージ支援プラットフォームは以下の機能を提供する。
クラウドストレージ支援ベンダーは、クラウドストレージサービスプロバイダーの独自APIに対応し、アプリケーションに対して標準ベースのインタフェースを提供する変換レイヤーとしての役割を果たす。このため、ユーザーがクラウドサービスプロバイダーを変更する場合でも、アプリケーションインタフェースを書き換える必要がない。異なるクラウドサービスプロバイダー間でのミラーリングを可能にする支援プラットフォームもある。ミラーリングによってデータをシームレスに移動した上でプロバイダーを切り替えることができるので、これは究極的な可搬性を提供するものだといえる。
支援ベンダーを利用すれば、クラウドストレージは“プラグ&プレイ”的なサービスになる。支援プラットフォームは、既存のIT環境と連係する標準ベースのアプリケーションインタフェースを提供するからだ。
支援ベンダー各社は、クラウドストレージにスナップショット機能を提供する。クラウドデータストアのコンテンツのスナップショットを作成する機能は、不注意でデータを削除したりソフトウェアが損傷したりした場合にデータを保護してくれる。こういった安全対策がないと、クラウドストレージにはリスクが伴い、下手をすると利用不可能という事態に陥りかねない。
クラウドストレージを検討しているユーザーにとって、依然としてセキュリティは重大な関心事だ。クラウドストレージ支援ベンダー各社は、少なくとも暗号化機能を用意し、暗号化用の鍵をユーザーが保管できるようにしている。支援プラットフォームの機能をチェックするに当たっては、データセンターからデータの転送が開始した時点でデータが暗号化され、転送中もずっとデータのセキュリティが確保されることを確認しなければならない。
クラウドストレージ支援ベンダー各社は、使用中のデータをローカルに保存するキャッシングアルゴリズムを用意することにより、クラウドプロバイダーからの距離に起因する問題を軽減する。クラウドストレージは当分、OLTPアプリケーションをサポートできそうにもないが、データセンターにおける大多数のアプリケーションは、メインフレーム並みのIOPS(I/O per Second:1秒当たりに処理できるI/Oアクセス)を必要としないので、クラウドストレージはこれらのアプリケーションのパフォーマンス要件に十分対応できる。
圧縮とデータ重複排除は、保存データの総量の削減、および帯域要求とコストの削減につながる。
クラウドストレージ支援ベンダーの中には米Nasuniのように、ユーザーのファイルを保存したり、Windowsのファイルベースのデータのオフサイトコピーを作成したりするのに利用できるWindowsファイルサーバ製品を提供している企業もある。一方、米TwinStrataでは、iSCSIをユーザーに提供し、バックアップ/リカバリシステムに連係可能なブロックストレージインタフェースを用意している。NasuniとTwinStrataの製品はいずれも仮想アプライアンスとして販売されている。まだ無名の存在に近い米Cirtas Systemsでは、クラウド内に保存先のストレージを置きながらも、ローカルクラウドストレージコントローラーとして機能するハードウェアアプライアンスを提供している。さらに同社は、第2階層のアプリケーションをサポートするためにユーザー環境に組み込めるiSCSIも提供している。米Panzuraおよび米StorSimpleは、米MicrosoftのExchangeとSharePointを拡張するとともに、これらのアプリケーションのデータを保護する製品を発表した。
これらのベンダーの多くは、直接互いに競合することはない。従って、各社の製品の用途、およびそれらがどういったメリットをもたらすかを自分自身で確認し、理解することが重要だ。
クラウドストレージは、いつまでもプロプライエタリな世界ではないかもしれない。Storage Networking Industry Association(SNIA)には、クラウドストレージサービスプロバイダーとの通信およびプロバイダー間の通信のための「Cloud Data Management Interface(CDMI)」の作成を担当する作業部会が設けられている。この標準はプロバイダー間でのデータの可搬性を提供するかもしれないが、クラウドストレージ支援ベンダーが不要になるわけではない。遅延を防ぎ、可用性、セキュリティ、既存環境との連係を実現し、本稿で指摘したさまざまな問題に対処するには、今後もこういったベンダーの存在が欠かせないと思われる。標準はクラウドストレージサービスの普及を促進するだろうが、支援ベンダーがデータセンターに対する標準ベースのインタフェースを提供することでユーザーは、クラウドストレージによってもたらされるコスト削減効果とITシステムの柔軟性向上というより大きなメリットを手にすることができるのだ。
本稿筆者のテリー・マクルーア氏は米Enterprise Strategy Groupのストレージアナリスト。
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