シンプルなテストで戦略を立てる
頑固な“マーケティング神話”を一掃、ラスベガスのホテルが実践した分析技術の威力
米リゾート運営企業MGMは、必要な情報を収集していなかったり、コンテンツを分析していなかったりと、デジタルデータを十分に活用していなかった。BIツール導入でそれがどう変わったかを紹介する。
「われわれは自分たちをVegas of Vegas(ラスベガスの中のラスベガス)と呼んでいる」と語るのは、米リゾート運営企業MGM Resorts International(MGM)のeコマース担当副社長ジオフレイ・ワルドミラー氏だ。「MGMは米ラスベガスで、4万5000室のホテル、100軒のレストラン、50店のクラブ、20種のショーを運営している。繁華街の45%を所有しており、顧客は必ずわれわれのブランドを体験する」と話す。
数百万人の人々が頻繁にMGMの施設を利用する。その人々に有意義な顧客体験を提供するカギは、「一貫性」だと、ワルドミラー氏は最近開催された米Gartner主催のビジネスインテリジェンス(BI)とアナリティクスのカンファレンス「Gartner Business Intelligence and Analytics Summit」で述べた。毎年開催される同イベントの講演者としてワルドミラー氏は、デジタル情報に依存するようになった顧客にサービスを提供するとき、次世代BIソフトウェアがどのように役立つかを説明した。
アナログとデジタルを結ぶ
「What happens in Vegas stays in Vegas(ラスベガスで起きたことはラスベガスでのこと)」というフレーズは旅行業界が生んだ最も偉大なスローガンの1つだ。だが、悪い欲望を満たすために行く町ということから「Sin City」(罪の町)とも呼ばれるラスベガスも、今や旅行者が匿名を押し通すことはほとんど不可能となっている。ワルドミラー氏によると、一貫した顧客サービスを提供するMGMの能力の大きな部分は、
- 顧客が到着前に自社ブランドとどのように関わるか
- ラスベガスに滞在中の顧客がどのような意思決定を行うか
- 顧客はそもそもなぜラスベガスに行く気になったか
などを探り出す力だという。ワルドミラー氏が4年前に現職に就任したとき、またそのレベルの一貫性は実現していなかった。
「今までゲストに提供してきたアナログの体験に対して、われわれはプライドを持っていた。だが、デジタルでは失敗した。当社のWebサイトは時代遅れであり、必要な情報を収集していなかったし、コンテンツをパーソナライズしていなかった。改善すべき課題は多かった」とワルドミラー氏は語る。
MGMがそのギャップを埋める1つの方法として選んだのが、一連の顧客アナリティクス製品を提供するサブスクリプションベースのサービス、「Adobe Marketing Cloud」への投資だった。このサービスについてワルドミラー氏は、「データ収集を改善し、MGMのWebサイトで実験し、ソーシャルメディアを活用して、デジタルな資産をシームレスに管理する方法だ」と説明する。
Adobe Marketing CloudはもともとCMO(最高マーケティング責任者)の利用を念頭に設計されている。だが、顧客との関係構築のためのテクノロジーとITが脚光を浴びつつある今日の状況を見て、米Adobe Systemsはこの技術をマーケティング部門だけでなく、他の部門にも展開させようと試みている。
「われわれはCMOを顧客の中心に置くことに変わりはないが、他の部門にもよりパワフルな体験を提供するためにさまざまな機能を開発している。そのために、顧客に関心を持ち、顧客データを基に行動する必要があることを理解している」と、Adobe Systemsのアナリティクス部門でプロダクトマーケティング上級ディレクターを務めるジェフ・アレン氏は今回のGartnerのカンファレンスで述べた。
マーケティング神話を一掃する分析技術
よりよい顧客サービスを提供するためにデータに基づいて行動する。それがMGMの取り組みを表すスローガンになるだろう。ワルドミラー氏によると、同社ではAdobe Marketing Cloudを用いてデバイスの行動様式を観察し、それらのデータを全て統合する計画を考えた。だが、その技術への投資が妥当なものかどうか判断するために、まず小規模なプロジェクトからスタートしたという。「われわれはそれなりの大きな投資をしたと認識している。そのため、投資回収期間の短縮に向けて取り組みを加速したいと考えた」と同氏。
2013年の終わりまで残り6週間という時期に、ワルドミラー氏と同氏のチームはIT部門と連携して、全てのデジタル資産にわたって一貫性のあるデータ層や分類体系を構築するために、18種の異なるWebサイトでタグ付けを開始した。そして、それは直ちに成果を上げ、同社は「組織的な勢い」の構築に成功した。
そうした成果の中には、過去に収集していたデータを活用したケースもある。しかし、デジタルデータが存在しないケースでは実験環境を用意する必要があった。それは、MGMの全資産にわたってマーケティング関係者が共有すべきインフォメーションガバナンス(情報統治)のフレームワークを確立することからスタートした。ワルドミラー氏は既にWebサイトの再設計を主導し、レガシーサイトの幾つかを段階的に廃止しつつあったので、まずインフォメーションガバナンス(情報統治)のフレームワークを確立することから始めることにした。
「最初にシンプルなテストを行い、それから急所を攻めていこう、という戦略を立てた」と同氏は語る。最初のテストは、顧客がホテルの部屋を検索したとき、Webサイトの右側のフレームにどのような情報を表示すべきか、という問題の解答を求めることだった。「顧客がラスベガスのホテル「MGM Grand」の空室情報を検索したとき、右側のフレームにどのような情報を表示すべきか? 代替オプションの提示は客室変更を促すか、それとも阻害するのだろうか」(ワルドミラー氏)
同社では、下記のA、B、C、Dの4つのグループに分けて、それぞれの効果を比較した。
- A:コントロール群(対照群)として客室のアップグレードが可能であることのみを提示
- B:右側のフレームに何も表示しない
- C:価格の高い方から順に他の客室の情報を掲載
- D:全ての客室を表示
「最も効果的だったのは、圧倒的に“D”だった」と、ワルドミラー氏は言う。同氏によると、売り上げが7%も向上した。しかし同時に発見したことは、何も表示しなかった“B”が対照群のAよりも好成績だった点だ。「われわれはこのテーマを長年議論してきたが、ようやく確固としたデータで正解を見つけることができた」とワルドミラー氏は述べる。
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