VMwareのチャレンジの成否は?
仮想化の次は「EVO:RAIL」か、サーバの未来を見通す
米VMwareのユーザーはハイパーコンバージドインフラ「EVO:RAIL」に関心を示しているが、競合製品が複数存在している。EVO:RAILは今後どう戦っていくのか?
米VMwareのハイパーコンバージドインフラ「EVO:RAIL」が2014年8月に公開されたときは好意的に受け止められていた。だが、ほとんどのIT担当者はハイパーコンバージドインフラ製品についてまだ様子を伺っている状態で、既存のサーバ戦略から離れられずにいる。
VMwareはハイパーコンバージドテクノロジーへの関心の高まりに乗じて、この市場に参入した。だが、市場をリードするプロバイダー米Nutanix、米SimpliVity、米Scale Computingは初期のころからハイパーコンバージドテクノロジーに取り組んでいるためVMwareは追い付く必要がある。
市場調査会社の米IDCが最近発表したリポートでは、ハイパーコンバージドテクノロジーの普及の立役者としてNutanixが評価されている。リポートは同社が2014年上半期の市場における収益の52%を占めたことを挙げ、かなりのマインドシェアを獲得していることについても言及した。
VMwareはこの後れを取り戻さなくてはならないだけでなく、EVO:RAILをもっと素早く普及させるために幾つものハードルを乗り越える必要がある。例えば、VMwareは、さまざまな規模のハードウェアパートナー9社にEVO:RAILの販売を委託している。この中には、米Dellや米Hewlett-Packard(HP)も含まれる。だが、これらのパートナーは各社独自の設計なども販売している。
米IT分析会社Evaluator Groupでマネージングディレクターを務めるキャンバリー・ベイツ氏は次のように語る。「過去に多くのVMware製品を販売していた大手パートナーの中には、競合製品を販売するようになった企業もある。例えばHPが自社製のハードウェアで動作する自社製のソフトウェアを持っている場合は、そちらの利幅の方が大きいと思われる。また、自社製品をチャネルパートナーに販売してもらう場合の利幅も異なるだろう」
EVO:RAILの主な販売対象は中小企業であるため、販売経路はチャネルパートナーに限定される。ただし、チャネルパートナーが、自分たちのビジネスにEVO:RAILが合致しているかどうか判断するのには時間がかかる。
「VMwareはEVO:RAILをチャネルパートナー経由で販売することに固執しているが、チャネルパートナーが新しい製品を理解してどうビジネスに生かすのか判断するのには時間を要する」(ベイツ氏)
EVO:RAILのような新しいハイパーコンバージドインフラシステムの普及を阻害するのは、ここ1~2年の間に新しいサーバを購入したユーザーだ。彼らはコンバージド型か旧来型かどうかにかかわらず、多数のサーバを新規購入する予算が少なくともあと1年は取れない。
米国大手メーカーに勤めるIT担当者は次のように話す。「2013年にインストールベースを一新したとき、部門ごとにサーバを配置する従来のアーキテクチャを維持する決断を下した。一度に複数のサーバアーキテクチャをサポートするのは容易でない。コンバージドアーキテクチャならなおさらだ。多数の専門家の基本的な職務範囲を変えなければならなくなる」
ハイパーコンバージドインフラ市場はまだ未成熟で、この先に大きな収益チャンスが控えているとVMwareは信じている。ハイパーコンバージドテクノロジーは10年前の仮想化と同じ道をたどっていると考える企業幹部もいる。
VMwareのEVO:RAILグループで副部長を務めるモルネー・ファン・デル・ウォルト氏は、「ユーザーはスマートフォンと類似した新しい配信/消費モデルを求めていて、それがまさにこの製品モデルだ。これは仮想化が2003~2005年に直面していた状況と似ている。仮想化は主流テクノロジーとして受け入れられておらず、科学実験のように捉えている人もいた。ハイパーコンバージドテクノロジーも同じ進化を遂げるだろう」と語る。
サーバハードウェアベースを一新したばかりのIT部門にハイパーコンバージド製品を購入してもらうのは難しく、EVO:RAILの初動の成功の大きな鍵を握るのは「タイミング」であることをファン・デル・ウォルト氏は認める。
「サーバの一新を完了したユーザーは新規サーバの費用を予算に組み込めなくなる。そのため、タイミングが成功要因の1つとなる。だが、新しい地域データセンターを建設中で新規ハードウェアの購入が必要な顧客にとってハイパーコンバージドテクノロジーは魅力的なソリューションに映るだろう」(ファン・デル・ウォルト氏)
EVO:RAILは長い評価サイクルに耐えなければならないようだ。だが、VMwareはハイパーコンバージドインフラ市場で重要な存在であることを知らしめるのに成功したと考えるアナリストもいる。
「ハイパーコンバージドインフラに関心のある人々はEVO:RAILの存在を把握しており、Nutanixと比較評価している。これはVMwareが大きな第一歩を踏み出した証拠だ」と語るのは、米Forrester Researchで副社長およびインフラを専門とする主席アナリストを務めるリッチ・フィチェーラ氏だ。
それでも、ハイパーコンバージドシステムには非常に複雑な意思決定プロセスが伴うので、EVO:RAILやその他の競合製品を導入するのに二の足を踏んでいる大企業も存在する。大企業のIT担当者がサポートしているのはサーバ、ソフトウェア、ストレージ、ネットワーク機器のいずれかに限定される場合が多い。そのため、大量のハイパーコンバージドシステムを導入すると、従業員の異動、再トレーニング、レイオフに関する問題が生じることになる。
「大企業ではサーバ、ネットワーク、ストレージごとに担当者がはっきりと分かれている。そのため、大規模なコンバージドシステムが導入されると仕事の割り振りを変更しなければならなくなり、大きな影響を受ける。一方、中小企業のIT部門は全てを管理するための知識を習得する必要がなくなるので、責任が緩和される」(ベイツ氏)
VMwareは2015年の上半期にハイパーコンバージドシステムの第2弾「EVO:RACK」を販売すると見られているが、関係者はまだリリース日を正式に発表していない。同製品には「VMware vCloud Suite」「VMware Virtual SAN(VSAN)」「VMware NSX」の他、EVO:RACKの管理ソフトウェアが付属する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー