文化的な変革をもたらすモバイルDevOps【前編】
気まぐれユーザーを満足させるモバイルアプリ開発、肝は“DevOps”
多くの企業がモバイルアプリケーションの開発、準備、管理にDevOpsを利用するようになっている。だが、確実なDevOps戦略を策定することは必ずしも容易でない。
DevOpsは、企業のIT部門、特にデータセンターにおける既存の価値基準を破壊するトレンドだ。エンタープライズモビリティが普及するにつれて、アプリケーションの開発や管理プロセスの改善にDevOpsを利用する企業が増えている。
DevOpsのベストプラクティスは、開発者と運用スタッフを結び付け、手動プロセスを自動化し、継続的なデリバリーを促す。企業がサーバベースのアプリケーションの開発、管理、拡張を円滑に行う一助となる。エンタープライズモビリティが拡大する中でDevOpsが登場したのは驚くべきことではない。DevOpsの原則の多くは、モバイル戦略の成功に欠かせないものである。具体的には、複数プラットフォームでのテストと開発、短期間のリリースサイクル、開発と管理の密接な統合などだ。
だが、新しい概念のモバイルDevOpsには少なからず課題がある。
文化的な変革をもたらすモバイルDevOps
それは、懐疑的なビジネス部門のリーダー、従来のセキュリティ慣習、開発スキルの不足だ。この全てにはモバイルDevOpsの採用に歯止めをかける可能性がある。
米CA Technologiesの最高技術責任者(CTO)がいるオフィスで統括責任者を務めるアンディー・マン氏は次のように話す。「DevOpsを採用するとプロセスが根本的に変わる。文化的な変革をもたらすといっても過言ではない。このような転換を大企業が行うのは容易でない」
ある程度の規模の物理や仮想、クラウドのインフラを人の手で監視および管理することは、不可能ではないにしても難しくなっている。こうしたインフラで実行されるアプリケーションの開発と管理についても同じことがいえる。開発プロセスが何カ月にも及び、機能を何百回も更新する場合は特にそうだろう。
2009年に誕生したDevOpsの目的は、企業におけるコンピューティングの需要が複雑になるにつれて発生した問題を解決することだ。DevOpsは、開発とITの運用にまとめて対処し、開発部門とIT部門を異なるプロセスを採用している専任のスタッフを抱えた別の部門とは見なさない。また、タスクを自動化するコーディングを促す。それから、DevOpsには、アプリケーションを開発、テスト、導入し、機能の増分更新を行う継続的なサイクルである継続的デリバリーが欠かせない。
ユーザー評価に翻弄される開発者
継続的デリバリーという言葉に聞き覚えがある方もいるだろう。継続的デリバリーとは、モバイルアプリケーション開発の一般的なアプローチだ。これは従来のアプリケーション開発のアプローチと大きく異なる。従来は、頻度が少なく規模の大きい、修正と新しい機能を詰め込んだ更新が好まれていた。だが、モバイル時代の開発者は、このように長期間を要するぜいたくなアプローチを採用することはできない。アプリケーションストアとユーザー評価の登場によって、開発者はユーザーからのフィードバックにすぐに反応することを余儀なくされている。
米Forrester Researchで主席アナリストと統括責任者を兼任するジェフリー・ハモンド氏は、「ユーザーの不満や提案への対応に数カ月もの時間をかけようものなら、アプリケーションの評価は落ち込み、離脱率が上昇する」と指摘する。そこで役に立つのがDevOpsだ。
「できる限り早くフィードバックを入手して、フィードバックに基づいて対応する必要がある場合、DevOpsの原則なしで対応速度を上げることは非常に困難だ」(ハモンド氏)
DevOpsのベストプラクティスに従うと、IT部門は、ユーザーの満足度やアプリケーション内の活動について詳しい情報を入手することができる。この情報は、レビューなどの直接的なフィードバックだけでなく、アプリケーション内の分析によって得られる。また、開発者は監視機能をアプリケーションに組み込むことで、クラッシュやユーザーの動作などについて、リアルタイムで情報を入手することが可能だ。そのような分析から得られる大量の情報を手動で集めることは不可能だろう。1つのモバイルアプリケーションに、複数の種類/バージョンのOSや複数のデバイス向けに作成された多様なバージョンが存在する場合は特にそうであろう。現在利用されている米GoogleのAndroidだけを取ってみても数千パターンのOSバージョンとデバイスの組み合わせが存在しているとハモンド氏は指摘する。
「モバイルの分野では、さらに多くのことがDevOpsに求められている。それは、リリースされる全てのプラットフォームでモバイルアプリケーションをテストすることは、ほぼ不可能だという前提に端を発している」(ハモンド氏)
DevOpsを運用する
DevOpsが活躍するのは、アプリケーションのユーザー向け機能だけではない。アプリケーションをバックエンドインフラ、データリボジトリ、管理システムに関連付ける上でも重要な役割を果たしている。これらを開発プロセスでアプリケーションに組み込むことで、企業は導入に掛かる時間を短縮して、より簡単にインフラの変更に対応できるようになる。インフラの変更には、新しいストレージの場所の追加やアプリケーションとバックエンドインフラ間のネットワークトラフィック処理方法の変更などが含まれる。
製品開発サイクルを踏まえて運用しなければならない。そう語るのは、ITオートメーションソフトウェアベンダーの米Puppet Labsでテクニカルマーケティングマネジャーを務めるカール・カウム氏だ。
Puppet Labsでは、エンジニアがインフラ固有の属性を表すコードを記述している。そのため、アプリケーションの開発時に、開発者はバックエンドインフラを統合するコードをゼロから記述するのではなく、単純にエンジニアが記述したコードを組み込むことができる。インフラ関連の変更が必要な場合に必要なのは、古いコードを新しいコードに交換するだけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
5
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
9
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
10
多品種小ロットの「手書き・配合ミス」を克服 キャニオンスパイスの食品工場DX
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー