失敗しない「学校IT製品」の選び方:電子黒板編
「電子黒板」の主流が“移動式”から“常設”に移る切実な理由(2/2 ページ)
電子黒板は“新世代”へ
これら“旧世代”の電子黒板に共通する大きな特徴は、「移動式」であることだ。この特徴自体が結果として、教育機関での電子黒板の活用を難しくしてきた。
国内で電子黒板の本格普及が始まった2009年当時は、導入予算の規模が小さかったことから、設置する電子黒板は1台だけといった教育機関も少なくなかった。階段での移動の難しさを考慮し、各階に1台ずつ電子黒板を設置する教育機関もあったが、いずれにしても利用のたびに教室へ電子黒板を移動し、配線などの準備をする必要があった。こうしたハードルの高さが、積極的な利用を妨げる原因となっていたのだ。
現在の電子黒板は、電子黒板の導入が進んだ当時から大きく進化した。技術や機能面ではなく、使い方の変化に伴う進化だ。“旧世代”である移動式の電子黒板は、次に述べる現在主流の“新世代”の電子黒板に、今後その座のほとんどを譲ってしまうと考えられる。
主流の電子黒板は「大規模導入」と「常設」
最近主流となりつつあるのが、電子黒板の全教室への一斉導入だ。この場合、当然移動の必要はなくなる。つまり「各教室への導入」と「常設化」が、現在の電子黒板導入のポイントになっている。電子黒板を常設すれば、どの教室でも教員のクライアントPCやタブレットの画面を手軽に大画面へ投影できるので、結果として利用頻度が格段に向上する(図3)。
「移動型の電子黒板の台数を増やせばよいのではないか」という考えもあるだろう。だが現場で教員の声を聞くと、それが間違いであることに気付く。移動や設定を伴う移動型の電子黒板は、移動中に破損してしまったり、設定がうまくいかなかったりする可能性があるなど不確実性が比較的高い。授業でこうした機器に依存するとなると、機器のトラブルで授業が止まってしまうなどの影響が出てしまう。特に限られた時間の中、学習指導要領に沿った授業を進める必要がある小中高の教員にとっては、時間のロスは可能な限り避けたい。結果として、教員が電子黒板の利用を避けてしまう傾向があるそうだ。
「常設」を可能にする“新世代”電子黒板の3タイプ
電子黒板の常設を実現するには、コストや使い勝手の面でさまざまな設置方法があり、そのほとんどが以下の3タイプのどれかに当てはまる(図4)。この3タイプが、現在の電子黒板の大規模導入の多数派となっていくだろう。
固定設置式
1つ目は、非常にシンプルな固定設置式の電子黒板だ。製品自体はプロジェクター一体型電子黒板そのものであり、ボルトなどを使って壁や天井などに固定して導入する。以下の2方式と比べて設置方法が単純なので、導入コストが掛かりにくい点が特徴だ。各教室に1台の大規模設置になると、導入コストをいかに抑えるかが課題となる。その点、固定設置式電子黒板であれば、1台当たりの導入単価を抑えることができる。
スライド式
2つ目は、通常の黒板に設置するスライド式の電子黒板である。電子黒板の本体はプロジェクター一体型であり、黒板の上にレールを設置して本体を左右に移動できるようにした。横長の黒板の好きなところに移動して投影できるので、手書きの板書を生かしながら電子黒板を利用可能だ。これまでの手書きの板書の授業スタイルとの相性も良い。
ボード一体スライド式
3つ目は、ボード一体型電子黒板をスライド式にした製品だ。指での操作が可能だったり、設定や運用がしやすかったりといったメリットが付加されている。このタイプが現状の最適な設置方法に近いが、スクリーンボードの取付け工事などが発生するので、通常のスライド式と比べてコストが20~30%上昇してしまう。そのため、予算の少ない学校などではハードルが高い。その他、タッチディスプレイ型電子黒板をスライド式にした製品もあるが、それほど一般的ではない。
「直接書き込める」ことがIT活用をスムーズに
ここまで、電子黒板の普及状況や最新の導入方式などを整理してきた。中でも、大画面化が容易なことやコストの安価さから、プロジェクター一体型電子黒板やその派生製品(ボード型電子黒板やスライド式電子黒板など)を選択する教育機関は多い。一方で、プロジェクター一体型電子黒板と一般的なプロジェクターとの間に明確な違いがあるのか、という疑問に思う人もいるだろう。
正直、現在のプロジェクター一体型電子黒板のほとんどの部分は、プロジェクターの機能に依存している。プロジェクター一体型電子黒板と一般的なプロジェクターとの決定的な違いは、投影画面に直接書き込めるかどうかくらいである。製品価格も、両者の間でそれほど差はない。先駆的にITを活用している教育機関や教員は、既にタブレットなどの学習者用端末を駆使しており、画面への書き込みを含む操作は手元の端末で十分だという意見も多いだろう。
だが、プロジェクター一体型をはじめとする電子黒板が持つ「黒板に直接書き込める」という利点は、教員のIT活用をスムーズに進める上で非常に重要だ。私は、これまでの授業の中核を担ってきた、教員による手書き板書の存在価値は非常に大きいと考えている。従来の黒板と同様に書き込める電子黒板であれば、授業を受ける学習者と、授業をする教員の双方にとって、これまでの授業方式からITを利用した授業方式への転換がしやすい。
そもそも、教員が手元の端末からタッチ操作で入力して大画面で見せるのではなく、大きな黒板に重要事項などを書いて見せる方が、学習者にとって思考プロセスやポイントを理解しやすい。その上で、より記憶に定着しやすくするために動画などのデジタル教材を付加する、といったぐらいの使い方の方が、教育機関がIT活用で取るべき次のステップとして適している。全く新しい授業方式へ一足飛びに移行するより、これまでの手書き板書の延長線上にある授業方式の方が、よりスムーズに移行できるはずだ。
授業を受ける学習者の多くは、生まれたときからIT製品に慣れ親しんできたデジタルネイティブ世代だ。とはいえ、全員がITの活用を得意とするわけではない。教える側の教員にとっても、段階を追ったIT活用の方が抵抗なく取り組めるはずだ。これまでの授業形式からIT活用授業へとスムーズに移行できることを重視し、プロジェクターによる単なる投影ではなく、インタラクティブな書き込みなどの機能を持つ電子黒板の導入を検討する価値はあるはずだ。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 株式会社日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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失敗しない「学校IT製品」の選び方
教育機関がIT製品を導入する際、どのような点に気を付けて製品選定を進めればよいのか。製品分野の基礎知識をおさらいしつつ、製品選びのポイントを伝授する。
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