後発のVMwareが苦戦している理由
注目度“高”のハイパーコンバージド市場、VMwareの「EVO:RAIL」に勝算は?
VMwareが「EVO:RAIL」と「EVO:RACK」でハイパーコンバージドインフラ市場に参入する。問題は競合製品との差別化だ。VMwareの参入はVDIを導入する企業にとって何を意味するのか。
米VMwareのハイパーコンバージド(超垂直統合型)インフラストラクチャアプライアンス「EVO:RAIL」と「EVO:RACK」は、VDI(仮想デスクトップ基盤)を念頭に設計された製品だ。既存の環境に追加するだけで、すぐにVDI環境を実現できる。ただし、これらのVMware製品には顧客の採用を妨げかねない問題点も幾つかある。
ハイパーコンバージドインフラはそのシンプルさから、急速に人気を高めている。すぐに導入でき、既存のインフラとの連係も可能で、スケーリングも容易だ。米Nutanix、米SimpliVity、米Scale Computingなどは早くからこの分野に進出し、今では市場のトップに立っている。VMwareは2014年8月、EVO:RAILでハイパーコンバージドインフラ市場に参入。2015年にはEVO:RACKを投入し、製品ラインアップを拡充する方針だ。
だがこれらのVMware製品は、既に市場に浸透している競合製品とどのように差別化を図るのだろうか。また、企業でのVDI導入にとって何を意味するのだろうか。VMwareの幹部は、EVO:RAILの導入事例のうち約50~55%はVDI向けと推定している。しかし、仮想デスクトップの実装は容易ではない。期待通りのスケーラビリティと柔軟性を実現するためには、入念な計画が必要だ。立ち上げに必要なインフラやスタッフやリソースを持たない企業の場合、その取り組みはさらに難しいものとなる。これは、小規模なIT部門に共通する問題だ。小規模なIT部門は、必要な専門知識が社内に備わっていないために、スタッフの再配置や再教育を強いられることが少なくない。
EVO:RAILやEVO:RACKを使えば、VDIの導入はもっと簡単になる。ハードウェアの電源を入れてわずか15分で仮想マシンを立ち上げ稼働できるので、システムを中断することなく、仮想ワークロードのパフォーマンスと柔軟性を発揮できる。
EVO:RAILとは
EVO:RAILは、VMwareがハイパーコンバージドインフラ市場に初めて投入する製品だ。VMware製品で構成される初のハイパーコンバージドインフラアプライアンス製品でもある。Software-Defined Data Center(SDDC)を実現するための設計となっており、VDIの導入に必要な要素を全て備えている。一般的なハイパーコンバージドインフラ製品と同様、ストレージ、ネットワーク、コンピューティングリソースが単一のアプライアンスに統合されているのに加え、EVO:RAILにはサーバ仮想化「VMware vSphere」、仮想ストレージ「VMware Virtual SAN(VSAN)」、ログ管理「VMware vRealize Log Insight」などのVMwareソフトウェアも搭載される。インタフェースや画面が共通なので、インストールはシンプルだ。「EVO:RAILエンジン」を使えば、リモート管理など各種の管理も簡単に行え、あらかじめ定義したサイジングポリシーとセキュリティポリシーに従い、仮想マシン(VM)も容易にプロビジョニングできる。こうした機能のおかげで、顧客はより迅速に仮想デスクトップを配備し、ストレージをプロビジョニングできる。
EVO:RAILは4ノード構成で、約13TバイトのHDD容量を利用でき、アプライアンス1台当たり、仮想マシンなら約100台、仮想デスクトップなら最大250台をサポートする。中小規模の企業に適したソリューションだ。
VMwareはEVO:RAILの提供に関して、米Dellや米EMCなどハードウェアベンダー大手と提携している。ただし一部の認定パートナーとVMwareの間には、EVO:RAILの在り方についての認識に差異がある。例えば、EMCはEVO:RAILにデータ保護製品などの自社技術を追加し、他の認定パートナーが提供するEVO:RAILとの差別化を図っている。全てのEVO:RAILアプライアンスで統一性を提供したいというVMwareの思惑にもかかわらずだ。興味深いことに、米Hewlett Packard(HP)は最近、米国でEVO:RAIL製品の提供を打ち切っている。
EVO:RACKとは
EVO:RACK(本稿執筆時点ではまだリリースされていない)は、EVO:RAILよりも大規模な環境を想定した製品だ。EVO:RACKはEVO:RAILよりも多くのアプライアンスに対応し、より多くの仮想デスクトップを配備できるようになる見通し。ラックの接続には、ネットワーク仮想化ソフト「VMware NSX」を使用する。
VMware環境との互換性は、EVO:RAILとEVO:RACKの大きな強みだ。インタフェースに「HTML5」が採用されている点も同様だ。HTML5のおかげで、プラグインやFlashを使わなくても各種のデバイスでユーザーインタフェースを共通化できる。どのデバイスを使おうと、全く同じインタフェースで仮想デスクトップの管理やストレージのプロビジョニング、アップグレードの追加などを行えるというわけだ。
懸念事項
ハイパーコンバージドインフラ市場への参入が遅かったVMwareは追う立場にある。その上、DellやEMCなど、認定パートナーの多くはEVOシリーズをめぐる提携以前から、EVO:RAILやEVO:RACKと同様の製品を提供しており、それが今も続いている。これは、VMwareにとっては問題だ。パートナーがVMwareの製品よりも自社製品を販売しようとする可能性があるからだ。例えば、DellがEVO:RAILやEVO:RACKよりも、自社のハードウェアと自社のハイパーコンバージドインフラソフトウェアを顧客に勧める可能性は十分に考えられる。
さらに状況を複雑にしているのは、EVO:RAILは認定パートナーを通じてしか提供されないという点だ。これでは余計な時間がかかりかねない。EVO:RAILを自社で販売するからには、チャネルパートナーは製品テストも自社で行わざるを得ないからだ。
そして何より、ここ2年の間に新たにハードウェアを購入したばかり、あるいは最近サーバの更新を済ませたばかりの企業であれば、恐らく少なくともあと1年は新しいハイパーコンバージドインフラを導入する余裕はないはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー