失敗しない「学校IT製品」の選び方:セキュリティ編【後編】
学校が今、最低限すべき「情報セキュリティ対策」はこれだ(2/3 ページ)
教育機関が上記3つのポイントに基づくセキュリティ対策を進めるために、便利なセキュリティ製品分野を以下に紹介する。
ユーザー権限管理:「アクセス制御」「認証」で不必要なデータアクセスを防止
1つ目は、ユーザーの権限を基に、アクセス可能なシステムやデータを制限する「アクセス制御」「認証」といったセキュリティ製品だ。各ユーザーに必要なデータ以外は見せないように、ユーザーの権限を区分した上で活用する。
アクセス制御の一番素朴な方法は、ネットワークのセグメント分割など、スイッチやルーターといったネットワーク製品の基本的な設定をすることだ。ファイアウォールの機能も、現在では一般的なルーターに標準機能として備わる。最低限、それらの設定をきっちりするだけで、不特定多数のユーザーがデータへアクセスするのを防ぐことができる。
認証は、他人のふりをする「なりすまし」による不正なシステムへの侵入やデータへのアクセスを防ぐためのものだ。いくらネットワークのセグメントを分けても、権限のないはずの人がアクセスできてしまっては元も子もない。そこで、権限に基づく情報へのアクセス制限を可能にする認証が必要になるわけだ。
ID/パスワード認証には強化策が必要
最も一般的な認証手段は、ID/パスワードの組み合わせである。ただしID/パスワード認証には、
- ユーザーが多くのシステムに対して、同一のID/パスワードの組み合わせを使い回す可能性がある
- ユーザーにとっても管理者にとっても、パスワード管理が煩雑
- パスワードが短く平易だと容易に解読される可能性がある
といった問題がある。ID/パスワード認証を利用するのであれば、その強化策も同時に検討することが望ましい。
ログインのたびに異なるパスワードを利用する「ワンタイムパスワード」は認証強度の向上に有効だ。実際、オンラインバンキングをはじめとする身近なWebサイトでも、ワンタイムパスワードを採用する動きがある。ただし、ワンタイムパスワードを表示するための専用機器(トークン)を用意する必要があるなど、少々運用が面倒だという課題がある。
運用の手軽さを重視するのであれば、指紋や静脈、虹彩などのパターンを使って認証する「生体認証(バイオメトリクス認証)」がある。ユーザーの生体を認証に利用するので、ユーザーにとってはパスワードを覚えたりトークンを持ち歩いたりする必要がなく、管理者にとってもパスワードやトークンの管理に悩まされることはない。認証強度と運用負荷のバランスを考えると、教育機関には最適な認証手段ではないかと考えられる。
生体認証には、ID/パスワードのような「再発行」が基本的にできない、裏側では生体情報とID/パスワードがひも付けされており、ID/パスワード認証を根本的に置き換えるものにはならないといった賛否両論がある。ただしユーザーにとっては、手をかざすだけで認証が済むなど利用しやすい認証手法であることは紛れもない事実だ。
現時点で最も身近な生体認証手段といえるのが指紋認証だ。米Appleのスマートフォン「iPhone」に備わる「Touch ID」がその代表例である。ただし、図画工作や技術・家庭科の作業、休み時間などの土遊びなどで手が汚れると、指紋のパターンが読み取れず、認証できない可能性がある。
その点、指や手のひらの静脈認証や虹彩認証は、認識率も高く運用がしやすい。ただし、静脈や光彩を読み取る認証装置はそれほど普及しているわけではなく、認証システムの構築コストがかさむことがネックになる。コストを下げるには、認証装置の数を減らすといった工夫が必要だ。例えば、教室の出入り口に認証装置を設けて、その部屋以外からのアクセスを制限するといった仕組みが考えられる。
学校IT活用を安全かつスムーズにする「RAIDUS」
導入を推奨したいのが、認証プロトコル「RADIUS」を使った認証システムである。RADIUSによる認証システムを導入すると、校内を移動して複数の無線LANアクセスポイントを切り替えながら接続できるようになるなど、ユーザーにとっての利便性が向上する。また管理者にとっても、ネットワーク機器ごとにセキュリティ設定をする必要がなくなり、管理負荷が軽減できるといったメリットがある。
RADIUSによる認証システムは、アクセス可否の判断に利用する認証情報を1つのサーバ(RADIUSサーバ)に集約し、一元管理を可能にする。集約した認証情報は、校内に複数ある無線LANアクセスポイントや、校外からのリモートアクセス用の機器(VPNゲートウェイ)から共通して利用できる。教育機関では無線LANや外部からのリモートアクセスの活用頻度が比較的高いことを考えると、RADIUSによる認証システムは大いに役立つはずだ。
端末管理:「MDM」でタブレットを一斉管理
教育現場で急速に普及しつつあるタブレット。その管理といえば、モバイルデバイス管理(MDM)製品を思い浮かべる人も多いだろう。MDM製品の主な機能は以下の通りだ。
- 端末の盗難・紛失時の情報漏えい対策
- リモートロック、リモートワイプなど)
- 端末の不正利用防止
- 許可しないアプリケーションのインストール禁止など
- 端末情報の収集と設定ポリシーの一斉配布
MDM製品を使って学習者のタブレットを管理する際、できれば避けるべきなのが、あらゆる機能の利用を制限することである。せっかく高い予算を組んでタブレットを導入しても、幅広い活用の芽を自ら摘むという本末転倒の状況になってしまいかねないからだ。学習者の豊かな発想が、時に教員が思い浮かばないようなタブレットの活用方法を生み出すことは、先駆的なタブレット導入事例の多くが証明している。
できれば、あえて制限を最低限に抑えて、学習者の自由な利用環境を推進していただきたい。そこで培った自由な発想が、未来の日本を支える創造力の源につながるかもしれないのだから。
情報管理:アクセス制御や認証でカバー、必要に応じて「暗号化」で保護
情報管理については、情報の重要性をランク付けした上で、先に記したアクセス制御や認証をしっかりすることで一定の効果があるだろう。それでも心配ならデータを暗号化しておくことで、仮にデータが盗まれても、その中身の情報は確認できない状況にできる。
本稿冒頭でも述べたように、教育機関は授業などの現場では、学習者のプライバシー情報を保管したり扱ったりしてはいないと考えられる。その場合は、そもそも守る情報がないことになる。
むしろ手を施すべきなのは、校務や学務(以下、校務)で扱うデータだ。全くセキュリティ対策をしていない教職員の私物PCから、通知表の成績のようなデータが漏れてしまう事件が頻発している状況をまず改善すべきである。まずは、校務で利用するセキュアなPCを全教員に配布するところから始めるべきだろう。
データ活用の活発化は情報管理の在り方を変えるか
冒頭で述べた通り、そもそも現状の授業現場では、試験の成績といった学習者の個人的なデータを蓄積、活用するシステムの整備はほとんど進んでいない。こうした現状を考えると、授業現場にはそれほど重要な情報は存在しないともいえる。ただし将来的には、こうした状況が変わる可能性がある。
学習者一人一人の習熟度に最適な内容やレベルで教えるといった教育手法が一般的になれば、成績や学習方法の好み、学習パターンといった学習者に関するさまざまな情報のデータ化・蓄積が進むはずだ。こうなると、企業が蓄積する機密情報と同様の重要なプライバシー情報を含むデータが大量に生み出されることになりかねない。こうしたデータが盗まれて悪用されたりすると、その被害は学習者の卒業後にも及ぶ可能性が高い。将来的には決して軽視してはならない問題になり得るのだ。
さまざまなデータを教育に生かそうという機運が高まるにつれて、授業データと校務データをひも付けて活用するシステムが求められるようになるのも、遠い将来の話ではないはずだ。
授業用システムと校務システムを別々のネットワークセグメントで運用し、授業現場から校務システムへアクセスできないようにしている教育機関も少なくないだろう。ただし、今後双方のシステム連係が進めば、インターネットに接続された授業現場で校務データを扱うようになる可能性も否定できない。そのときのためにも、情報管理に一定のルールを制定しておくことは重要だといえる。
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