作業は簡単だけど……
AWSのサービスは本当に「シンプル」なのだろうか
米Amazonの「Amazon Web Services(AWS)」には「使い勝手のよさ」と「スピード」という2つのメリットがある。この2つの要素はクラウドの開発と管理を容易にするポイントだ。
米Amazonの「Amazon Web Services(AWS)」支持者に話を聞けば、その多くがAWSは非常に使いやすいと口をそろえていうだろう。クレジットカード情報を入力するだけで、仮想マシン(VM)を稼働させ、パブリッククラウドを使い始めることができる。確かに、テスト環境や開発用環境ではそうかもしれない。だが、エンタープライズクラスのAWS環境を構築しているAWSユーザーは、必ずしも使い勝手の良さを認めているわけではない。
EC2は「意外と手間が掛かる」との声も
米ラスベガスで2015年10月6日~9日に開催された「re:Invent 2015」で発表された新しいサービスは、アプリケーションの開発から管理に至るまで、AWSでの作業を簡略化することを目的としたものがほとんどだ。例えば、「Amazon QuickSight」はビジネスインテリジェンス製品を迅速にセットアップし、「AWS Inspector」はセキュリティホールとコンプライアンス問題の検出にかかる時間を短縮する。
AWSの最高技術責任者(CTO)のワーナー・フォーゲルス氏は、基調講演で「AWSの願いは、皆さんが作りたいアプリケーションをよりシンプルに作れるようにすることだ」と語った。
だが、これは「Amazon Simple Storage Service(S3)」「Amazon Simple Notification Service」「Amazon SimpleDB」「Amazon Simple Email Service」などの、AWSの既存のサービス名に「シンプル」が冠されている理由にはならない。
AWSのサービスは本当に「シンプル」なのだろうか。
「DynamoDB」や「Elastic Block Storage(EBS)」などのサービスを利用すると、クラウドベースのストレージやデータベースをごく簡単に導入できる。一方、「Elastic Compute Cloud(EC2)」などのサービスは前述のサービスより手間がかかる場合がある。
「EC2インスタンスは簡単に起動できるので大量に利用している」と話すのは人探しWebサイトの米SpokeoのCTOで共同設立者のマイク・デイリー氏だ。「だが、AWSサービスの中で最も手間が掛かるのがEC2だ。というのも、サーバにソフトウェアをインストールすることになるからだ」
これに対して「Kinesis」やDynamoDBなどのSaaS製品とDBaaS(Database as a Service)製品の方が使いやすいとデイリー氏はいう。その理由は、インストールやメンテナンスといった“ありきたり”な作業が必要ないからだ。Spokeoでは、各種AWS製品を使用している。具体的には、EC2、「Relational Database Service」、DynamoDB、S3、「Redshift」「Route 53」などだ。デイリー氏は「Amazon Elasticsearch Service」にも関心を示しているが、まだリリースされたばかりだからと慎重な姿勢を見せている。
コスト構造に対する疑問
大手メディア企業のデータ解析を担当するITコンサルティングディレクターの悩みの種は、AWSのサービスを使い始めることではなく、AWSのビッグデータサービスの料金構造を把握するのが困難なことだ。
「AWSでの作業は間違いなく簡単になるだろう。特に、概念実証プロジェクトではそうだろう」とデイリー氏は語る。また、AWSのサービスを使うことで、同社のデータサイエンティストはIT部門の介入を完全に回避して、プロジェクトを短期間で軌道に乗せられるとも付け加える。だが、AWSツールの料金構造は明快ではない。
「新しいプロジェクトの予算を決定する必要がある。コストを制御するためにクエリの数を制限するようなことはしたくない」と語るデイリー氏は、Spokeoのニーズに最適なAWS分析サービスを特定していないが、予測分析やビッグデータプロジェクトで「Amazon Machine Learning」を利用することに興味を示している。
AWS Lambdaのメリットに期待
re:Invent 2015の他の参加者は、「AWS Lambda」と2015年10月の第2週から使用可能になったAWS Lambdaの新機能(Virtual Private Cloudサポートやスケジュールされた関数など)によって、業務が簡略化されることと「サーバレス」システムの開発が加速することに注目していた。
Lambdaが気になると話すのは、一般消費者向けリスク管理ソフトウェアプロバイダーの米ID Analyticsでチーフサイエンティストを務めるマイク・ラザルス氏だ。
ID Analyticsでは、ID詐欺の検出などのリスクを高精度で推定するために、何千もの変数と何Tバイトものデータで運用する複雑な機械学習システムを開発している。
「AWS Lambdaによって、このようなシステムを前例のないスケーラブルな方法で簡単に実装できる新しく興味深いチャンスが生まれている」とラザルス氏は語る。
ラザルス氏は、Amazonが2015年にセキュリティを重視するようになったことを称賛している。また、近い将来にAWSでエンドツーエンドのセキュリティツールが提供され、AWS製品が完全なものになることを期待しているとも話している。それから、re:Invent 2015で有名企業がAWSを導入していることを公式に議論しているのを見て、正しい方向に一歩進んだように感じるとも述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 脆弱性対応のリードタイムと工数を大幅削減、事例に学ぶセキュリティ基盤刷新術 -
製品レビュー
[ServiceNow Japan合同会社] AIによる業務の自律化はどう実現する? 企業に求められる新たな業務基盤とは -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ -
市場調査・トレンド
[オープンテキスト株式会社] 2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
4
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
-
8
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
9
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー