ビジネスユーザー開拓は次のステージへ
「iPad Pro」アプリはどうなる? AppleとIBMの“iOS提携”に目を輝かせる人々
米IBMは米Appleとの提携の1つの成果として、iPhoneとiPad向けのビジネスアプリが100本に到達したと発表した。Appleはますます法人分野への注力を示し、IBMは次の展開にiPad Pro専用のアプリ開発を進めている。
2015年12月には、米Appleと米IBMの提携を通じて48本のiOS専用「MobileFirst for iOS」アプリがリリースされた。いずれもパワフルな分析機能を備えた使いやすいビジネスツールとして設計されている。
IBMは2014年に次のように表明していた。職場でiPhoneとiPadを有効活用してもらうためのエンタープライズ向けiOSアプリを2015年末までに展開する、そしてこのパートナーシップに基づき、IBMとAppleは100本のiOSアプリを、医療、観光、小売り、金融など14業種と65の職種向けに共同開発する、と。
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アプリの設計に当たっては、使いやすさで定評のあるAppleのコンシューマー向けインタフェースと、IBMのパワフルな分析機能を組み合わせた。
「分析の要素に焦点を合わせることが重要だ」と語るのは、米ITコンサルタント会社で、AppleとIBMのパートナーでもあるSIGMAnetのビジネス開発・戦略担当副社長ステファン・モンテロス氏。「ユーザーは成果を測定したいと思っている。成果が測定できる限り、投資は行われる」
IBMはアプリに人工知能の機能を取り入れることも計画している。iOSユーザーが「Watson」アプリを使ってできることはプレゼント選びにとどまらない。Watsonのコグニティブ(※)機能を使えば、未来のiOSアプリは時間の経過に従って従業員や顧客のニーズを継続的に学習できるようになり、使い込むほどそのデータに基づき構築される。Watsonを組み込む狙いは、意志決定と成果の質を高めるために、ユーザーに最も関連性の高い情報とデータを届けることにある。
※:「コグニティブ」(cognitive)は、「認識の」「認識による」「経験的知識に基づく」などの意。
IBMもAppleも、新しいアプリを使っているユーザー数は公表していない。だが加Air Canada、保険会社の米AXA、米Coca-Cola Amatilなど、一部の大手ユーザーの名は明らかにした。
IBM MobileFirst for iOSアプリの初期シリーズの1つ、金融アプリ「Trusted Advice」はアラブ首長国連邦のAbu Dhabi Islamic Bankに採用されている。このアプリはファイナンシャルアドバイザーによる顧客のポートフォリオ管理を支援し、iPadから資産情報にセキュアにアクセスできる。IBMによれば、このツールはIBMの予測分析技術を使ってモデリングツールで提案内容をテストでき、どこにいても安全に取引を実行できる。
エンタープライズへの進出強化を目指すApple
Appleは法人分野への進出拡大を目指す方針を積極的に主張し、IBMや米Ciscoなど法人分野の大手と手を組んだほか、ファイル共有プラットフォームの米Boxとも小規模の提携を結んでいる。2015年9月に開かれたBoxWorksカンファレンスにはAppleのティム・クック最高経営責任者(CEO)がゲストとして登場し、Appleがモバイルエンタープライズの分野で進出を拡大するためにこうした提携を重視していることを明らかにした。
クック氏は決算発表の電話会見の中で、IBMとの提携の背景としてiPadの売り上げの落ち込みを挙げ、「iPadおよびiPhoneにとっての未開拓市場として法人分野に目を向けている」と語った。
2015年8月下旬にはCiscoとの間で大型提携を結び、Ciscoは同社の企業ネットワークにiOSコンテンツ向けの“ファストレーン”(高速車線)を設けることで合意した。これにより、Ciscoのネットワークを使っているIT部門は、iPhoneやiPadとの間を行き来する企業コンテンツを、他のモバイル端末向けのコンテンツよりも優先できるようになる。
「Appleは何よりも、IBMやCiscoとの提携が注目を集めたことで、確実に企業における存在感を増している。Appleの市場シェアは多少伸びたかもしれないが、そのプロセスは徐々に進行するもので、一晩では実現できない」。米Moor Insights & Strategyの主席アナリスト、パトリック・ムーアヘッド氏はそう解説する。
IBMがこの1年間にApple端末向けに開発したアプリに欠けているのは、Appleの最新製品「iPad Pro」の新機能をフルに活用したアプリだ。
MobileFirst for iOSシリーズのアプリはiPad Pro専用には設計されておらず、大画面や処理能力の強化、マルチタスキング機能、スタイラスペン「Apple Pencil」といったiPad Proの新機能を活用する仕様にもなっていない。
「iPad Proではアプリを最適化する必要がある。IBMはiPad Proのことを知っていて、それがIBMをAppleと提携させた理由の1つだったと考える」とムーアヘッド氏は話す。
IBMが約束した100本のアプリは公開されたが、提携はそれで終わったわけではない。同社の次の動きはiPad Pro専用のアプリ開発にとどまらないものの、そのプロジェクトは既に進行中だとIBMは説明する。同社はiPad Proが提供する独自機能を「活用できる」アプリの開発に当たっている。
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