デジタル時代のERP再考(3)【後編】
IoTで変わるビジネス、求められる未来のERPの形とは(2/2 ページ)
“つながる”時代の“人”の役割
どのような技術が登場したとしても、企業が競争に勝ち残っていくために考えるべきことは、技術をいち早く取り入れることではない。下記を考えることが重要である。
- 狙いを定めた顧客に、いかに独自の価値を提供するか
- いかに無駄のない業務遂行を実現するか
これまでの考察で、ハードウェアベンダーやソフトウェアベンダー、サプライヤー、製造元などの各プレーヤーが密接につながるような新たなバリューチェーンの形成が急務となっていることが理解できたはずだ。センサー技術にしても、日進月歩で安価になり、いろいろなモノがインターネットに接続可能な状態になった。だからといって、何もかもをつなげればいいかというと、そうではない。下記のようなことを考え、新たなビジネスモデルを組み上げることが、つながる時代に求められる人の役割だといえるだろう。
- どのような競争優位を築くか
- そのためには何を、どのように接続させるか
- その結果、何を追求するのか
2014年には米Googleが、家庭用の室温制御装置を開発する米Nest Labsを買収した。この買収は、テクノロジーを軸とした新たなバリューチェーンの形成が本格化し、その範囲が社会インフラなどのセグメントにまで広がりはじめていることを示している。例えばこの場合、収集した電力消費パターンデータなどを基に、下記のようなサービスを提供していくことが可能になる。
- 電力会社向けに効率的な発電パターンに関するコンサルティングサービス
- 消費者向けに電気料金の時間帯ごとの変化に応じた各家電の消費電力の自動コントロールサービス
つまり、Googleは単にサーモスタット業界への参入を果たしただけではなく、エネルギー業界全体にまで影響を与える新たなバリューチェーンを形成できるようになったのである。
また、他社との関係性を考慮した自社のポジショニングを決定することも、人の役割だと位置付けることができる。Googleの買収を例に取ると、Googleは自社をデータ収集/分析プラットフォームを提供する企業としてポジショニングした。こうしたプラットフォームを他社に開放することによって、より広範囲なバリューチェーンを構築することができるだろう。例えば、各部屋に設置されたセンサーと連係し、人の行動パターンデータを基に室温を自動で快適にコントロールするサービスや、人の動きを検知する技術を基にホームセキュリティサービスを提供することもできるだろう。
「IoT(モノのインターネット)」は新たな価値を顧客に提供できる可能性を秘めている。しかし、どの技術を利用して、どのような顧客価値を提供するかを定めなければ、つながる時代で競争優位を築くことはできないだろう。いま一度、現状のバリューチェーンを見直し、自社のポジショニングを再考するところから始めることが成功への近道かもしれない。
坂田英宣
アクセンチュア
デジタル コンサルティング本部
シニア・マネージャー
英University of Southampton Business School(サウサンプトン大学ビジネススクール)でMaster of Business Administration(MBA:経営学修士)課程を修了。アクセンチュアのデジタルコンサルティング本部でデジタルマーケティング関連のソリューションをリードする。Eコマースを中心に数多くの大規模なシステム構築プロジェクトやマーケティング支援プロジェクトに携わってきた経験を持つ。IoTを活用した店舗デジタルソリューションやオムニチャネルソリューションに対して豊富な知識を有しており、外部セミナーでの講演など、積極的な情報発信を行っている。
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