テレワークの運用ルールと評価制度を考える【第1回】
人材不足は「待ったなし」、中堅・中小企業の経営課題にテレワークは有効?(2/2 ページ)
政府のテレワーク普及促進の動き
労働の時間と場所の制約を取り払うテレワークは、女性活躍推進や地方創生においても効果がある。
政府は、世界最高水準のIT活用社会の実現と、成果の国際展開を目標としたIT戦略の基本方針となる「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、2020年までの雇用型・在宅型テレワーカー数を10%以上にすることをテレワークのKPI(重要業績評価指標)として掲げ、助成金や補助金を含む数多くのテレワークの普及促進策を打ち出している。
企業におけるテレワークの導入に際しても活用できる施策については連載第5回「行政の支援制度」で説明する。
企業にとってのテレワーク導入効果
日本テレワーク協会は、テレワークの導入効果を大きく5つに分類している。
- 業務生産性の向上
- 従業員の意識改革
- 従業員のワークライフバランス向上
- コスト削減、節電
- 事業継続性の確保
1. 業務生産性の向上
営業職であれば、顧客からの問い合わせに迅速に対応できる。顧客先で、在庫状況を聞かれた時に、その場でタブレットから会社のサーバへアクセスして即座に回答できるのと、会社に帰ってから顧客に連絡するのとではスピード感が全く異なる。また顧客先での商談後、次の顧客先でのアポイントまで2時間あったとすれば、その間本拠地に戻って短時間事務作業をするのと、次の顧客先近くのサテライトオフィスやカフェで仕事をするのとでは移動効率が大幅に変わる。これにより顧客面談時間や顧客訪問件数が増加するなどの効果が期待できる。スタッフ職であれば、電話や来客、同僚などからの話し掛けがないので、 デスクワークを中断されずに、集中して仕事ができることによる業務効率向上を期待できる。
2. 従業員の意識改革
いつでもどこでも誰とでも働けるような働き方の変革によって、従業員のフットワークが軽くなり、他部門や他社との連携が進んだり、現場部門からの的確な情報を入手しやすくなったりといった効果が期待できる。近年、ワークスタイル変革が1つのブームになりつつある。多くの企業がワークスタイル変革によって従業員の意識を変革し、企業の成果に結び付けることを狙っている。
3.従業員のワークライフバランス向上
在宅勤務導入により、育児や介護を担う優秀な従業員が退職するのを引き留めることができる。テレワーク導入企業の多くでは「在宅勤務制度がなかったら、私は会社を辞めざるを得なかった」という声が育児期の従業員から聞かれる。
通勤困難な障害者を在宅勤務で雇用することも可能だ。2013年に障害者法定雇用率が1.8%から2%へ引き上げとなり、障害者の雇用義務を負う対象企業の条件は「従業員数56人以上」から「従業員数50人以上」に変更された。日本全国の障害者を在宅勤務で雇用し、法定雇用率を達成している企業もある。
一般の従業員にとっても家族とのだんらんの時間を確保することができ、趣味や自己啓発のための時間も確保しやすくなる。また男性も在宅勤務すれば、育児や家事に参加しやすくなり、子育てをしやすい家庭環境を作ることができる。
さらに働きやすい環境を整備することにより、優秀な人材の採用もしやすくなる。特に最近の女子学生は結婚後も働き続けられる企業を選ぶ傾向にあり、在宅勤務制度などワークライフバランスに配慮した企業の人気は高くなりつつある。
4.コスト削減
テレワークの導入と併せてオフィスをフリーアドレス化すれば、オフィス賃料や電力をはじめとするオフィス関連コストを削減できる。
5.事業継続性の確保
震災や新型インフルエンザなどによるパンデミック(感染爆発)発生時には、在宅勤務が有効だ。普段から在宅勤務をしていれば、非常事態が発生しても在宅勤務で事業継続が可能となる。東日本大震災後の首都圏の交通機関の混乱時でも在宅勤務をすることによって、支障なく業務継続ができていたテレワーク導入企業は少なくない。
企業におけるテレワーク利用の最近の傾向
過去、日本におけるテレワークはIT企業や外資系企業を除けば、従業員向けの福利厚生施策として、大企業から導入されてきた。
しかし、この2年ほどで状況は変わりつつある。製造業やサービス業などの大企業での全社レベルでの利用が増えているのだ。日産自動車、トヨタ自動車、サントリー、リクルートホールディングスのテレワークに関するニュースを見た人もいるのではないだろうか。これらの企業は、一部の従業員を除き、会社全体がテレワークで場所を問わず働けるようにすることで、移動や待機などの無駄な時間を省き、仕事の効率を上げて生産性を向上させている。
第2回では、中堅・中小企業でのテレワーク利用事例を取り上げる。
日本テレワーク協会
2000年の設立から一貫してテレワークという新しい働き方の調査研究・普及推進活動を展開してきた国内唯一のテレワーク普及推進活動団体。ワークスタイル変革には欠かせない、多様な働き方を実現するツールであるテレワークの普及によって持続的発展が可能な社会の実現を目指す。
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テレワークの運用ルールと評価制度を考える
本連載ではTechTargetジャパンの読者である情報システム部門の読者に対して 、中堅・中小企業におけるテレワークの導入をテーマに、ICT以外も含めた包括的な情報をお届けする。「日本の現状」「企業事例」「導入までのプロセス」「労務管理上の留意点」「行政の支援制度」「関連製品/サービス」と、全6回の連載で各項目を解説する。
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