安全とプライバシーのはざまで揺れる米国
iPhoneのロック解除論争で浮上した「プライバシーと人命、どちらが重いのか」問題(2/2 ページ)
暗号化は規制して、銃は規制しないのか
質疑応答セッションの最中に、1人の聴衆が拍手喝采を浴びた。「銃に対する規制はほとんどなされていないが、政府にとっては暗号化を規制することの方が重要なのか」と質問したのだ。この問いに対し、マッコール氏は次のように答えた。「テロリストに好まれる銃といえば『AK-47』だが、米国政府は、こうした武器が世界の闇市場で取引されることを規制する手段を持ち合わせていない」
「これを止めるには何ができるだろうか」とマッコール氏は参加者に問い掛けた。そして、「合法的な認可を得た上で通信にアクセスできなければ、攻撃を阻止する取り組みはずっと困難なものになる」と付け足した。
マッコール氏は、ゴーイングダーク問題が最近、パリでどのように表面化したかについても言及した。「私たちには攻撃者が何をやっているのか分からなかった。それは攻撃者が通信をエンドツーエンドで暗号化していたからだ。攻撃者はこのように通信の“暗部”を利用している。これは実に難しい問題だ」
ゴーイングダーク問題の解決策に対するベンダーの反応
「セキュリティベンダーとして、何よりも優先すべきは顧客の保護。米国の全ての企業にとってもそうあるべきだ」。サンフランシスコに拠点を置くモバイルアプリセキュリティ企業Appthorityの共同創設者であり代表取締役のドミンゴ・ゲラ氏は、RSA Conference 2016が開催された週に米TechTargetに対してこう語った。
ゲラ氏は「『そんなことをしたら、政府の仕事をわざわざ難しくすることになるのではないか』という指摘は当たらない」と言い切った。「顧客の保護は、悪意のある攻撃者の取り組みを可能な限り困難にすることにつながる。それに暗号化は、他の方法によるデータへのアクセスに対して強力なストッパーになる。門番と言い換えても良いだろう」(同氏)
一部の暗号化技術は現在、実際にクラッキングすることが不可能な域にまで達している。そのため、「法的処置があってもアクセス権を取得できない可能性はある」とゲラ氏は指摘。「何より重要なのは顧客全てを確実に保護することであって、バックドアを作ったり、それをごまかしたりする方法ではない」と語った。
ゲラ氏は次のように補足した。「米国に拠点を置くセキュリティ企業として、自社のソフトウェアやハードウェアのセキュリティを突破する手段を製品に潜ませることを強制されたとしよう。その場合、そうした法律に影響されない海外のベンダーは、米国企業よりも優れた製品を提供することになる。そうなれば、市場で痛い目を見るのは私たち米国企業だ」
こうしたことは既に起こっている。エドワード・スノーデン氏による暴露があった後、Appthorityの製品/サービスを利用する欧州政府の多くが、NSAが同社のデータへ簡単にアクセスできるのではないかと心配していたという。
米国のセキュリティ企業の多くは、欧州のデータセンターに投資することを余儀なくされた。米国内にデータを保持するのではなく、より安全性が高く見えるようにデータを米国外に置くためだ。「こうすることで『潜在的な機密を公開して明らかにせよ』という裁判所の命令からも距離を置くことができる」(ゲラ氏)
「セキュリティに関して最先端でありたければ、顧客のデータを守るために最善と思える方法はどんなものであれ実施しなければならない」とゲラ氏は強調した。
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