ハイパフォーマンスコンピューティングを自前で持つ意味とは
IoTで必要な演算能力を「クラウドHPC」で安く手にする
膨大な演算能力を消費するビッグデータやIoTの活用には、大がかりなHPC群が必要だ。クラウドサービスによって一般企業でもHPCのパワーが利用できるようになってきた。
最近、報道で見聞きする機会が増えてきたハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)は、特に新しい技術ではない。ただし、HPCを必要とするアプリケーションの用途はまだ限定的だ。現時点における企業の情報処理において、よほど処理速度を重視するワークロードでもない限り、HPCの使用する必要はない。
だが、ビッグデータやIoT(モノのインターネット)の活用が広がる中、HPCに適したワークロードは確実に増えている。特に、クラウド環境におけるHPC利用は、この先より大きな役割を果たすことになりそうだ。
クラウド環境ならばHPCのコストを引き下げてくれる。大規模なエンジニアリング企業や政府機関は別として、大半の企業にとってスーパーコンピュータにかかるコストは正当化できるものではない。だが、HPCサービスをパブリッククラウドでホスティングすることで、スーパーコンピューティングのコストは大幅に下がりつつある。また、パブリッククラウド事業者はより多くのHPCサービスを提供するようになっている。
一般的なHPCアプリケーション
クラウドで提供するHPCサービスの利用を始めるにあたっては、まず、サービス委提供側が用意する選択肢とどのワークロードであればHPCのコストを正当化できるかを確認しておくことが重要だ。
Amazon Web Services(AWS)によれば、「ユーザーはHPCを利用することで、高帯域幅と拡張ネットワーキング、そして、非常に高度な計算処理能力を必要とするアプリを使い、科学やエンジニアリング、ビジネスの複雑な問題を解決できる」という。通常、こうしたタイプのアプリケーションには以下の特徴がある。
- 計算集約型
一部の機会学習アプリケーションと同様、HPCアプリケーションは1ナノ秒に数百万件の計算を実行する必要がある。
- I/O集約型
ビッグデータやIoTアプリケーションなど、データ中心のアプリケーションはデータを高速で読み書きする必要がある。
- 動画レンダリングなど、計算集約型の動的な演算を実行する能力も必要
ビッグデータとIoTの普及に伴い、HPCの有用性は大いに高まりつつある。特に運用システムをサポートするためには大量のデータを計算する必要がある。このような利用において処理スピードは極めて重要だ。HPCシステムはわずかな時間で膨大な計算を実行できるので、動的な計算集約型システムでも、ほぼリアルタイムでビジネスプロセスと連係できる。
クラウド事業者ごとの違い
クラウドで提供するHPCサービスの内容は事業者によって異なる。
AWSによれば、同クラウドのHPCサービスは「フルバイセクションの高帯域幅ネットワークへのアクセスを提供し、密結合でI/O集約型のワークロードに利用できる」という。これは、ユーザーが数千コアまでスケールアウトし、HPCを使うだけでなく、HPCアプリケーションをスケールできることを意味する。
そのためには、数値計算に最適化された「Amazon EC2」インスタンスの最新版である「C4」インスタンスを利用する必要がある。C4インスタンスは、HPCアプリケーションの他、大規模多人数型オンライン(MMO)ゲームやメディア処理、トランスコーディングなどにも対応できる。
また、Googleは2015年12月、同社の量子コンピュータが実際に量子力学を使っていることを証明する画期的成功を収めたと発表した。科学誌「Popular Science」によれば、Googleが稼働している1000量子ビット搭載の量子コンピュータ「D-Wave 2X」で組み合わせ最適化問題を実行したところ、従来型コンピュータクラウドと比べて1億倍の速度で問題を解いたという。
このように量子コンピュータは非常に高速ではある。だがIT予算を考えると、大半の企業にとってコストが高すぎるだろう。いくら性能が素晴らしくても通勤には不向きな、「フォーミュラ1カーと同じだ。
現在、D-Wave 2Xはクラウドサービスではないが、Googleは自社のパブリッククラウドにD-Wave 2Xを組み込むことになるだろう。Googleは、2016年3月に開催したクラウド関連のイベント「GCP Next」において、機械学習などHPCに適したアプリケーションのサポートを約束している。ただし、D-Wave 2Xの性能はビジネスアプリケーションにとっては過剰なものとなりそうだ。
既にHPCの時代は始まっている。もっとも、現在HPCと考えているものは、数年後に単なる“コンピューティング”になっているかもしれない。新世代のアプリケーションがインフラに期待するパワーは上昇する一方だ。この先、より迅速かつ的確なレスポンスの必要性が高まるにつれ、クラウドHPCの必要性も高まっていくはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー