「Microsoft Azure」の仮想マシンが最大の改善幅
2015年の主要クラウド稼働率調査――トップはAWS、最下位は?(1/2 ページ)
2014年に比べて2015年は、パブリッククラウド各社の稼働率が改善した。一方で、顧客もダウンタイムへのより良い対処法や自社に最適な障害対策を学んでいる。
クラウドサービスのダウンタイムはメディアに取り上げられることが多いが、実際にダウンタイムが顧客にどのような影響を及ぼすかについては曖昧な部分が多い。
ユーザーは自分が利用しているクラウドサービスのダウンタイムをうまく回避する方法を徐々に見つけつつある。あるいは少なくとも、「何か大胆な策を講じない限りパブリッククラウドの可用性が100%になることはない」という現実を受け入れるようになってきている。一方、公表されるデータが少ないにもかかわらず、潜在顧客は依然としてベンダー各社の稼働率の比較に熱心だ。
クラウド ナビ
パブリッククラウドの稼働率を追跡している主要サイトの1つに、Gartner傘下のCloudHarmonyがある。CloudHarmonyは稼働状況に特化したシンプルな方法を用いて、パブリッククラウドの稼働率を複数のリージョンにわたって追跡。その結果をIaaS(Infrastructure as a Service)、コンピュート(計算処理)とストレージ、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)、DNS(ドメインネームシステム)の4つのカテゴリに分けて公開している。
CloudHarmonyの創業者であるジェイソン・リード氏によれば、同社が追跡するクラウドプラットフォーム間の比較で最も公平なのは稼働率の比較だという。年間のダウンタイム時間には、最初から予定されているメンテナンス時間が含まれるからだ。またベンダーによっては、稼働させているリージョンの数が他社よりはるかに多い場合もある。つまり、Amazon Web Services(Amazon)のようなクラウド事業者の場合、ダウンタイム時間の合計が他社より多くても、そのダウンタイムは複数のデータセンターに分散されている。従って、実際に顧客に提供される可用性は恐らく他社よりも高いということになる。
2015年の主要クラウドの稼働率は全体的に2014年よりも向上している。最大の改善幅をみせたのはMicrosoftだ。同社のクラウドでは2014年、大規模な障害の影響で長時間にわたるダウンタイムが発生したが、その失敗を繰り返さなかったことが大きな勝因といえる。「Microsoft Azure」の「Azure仮想マシン」における稼働率は99.9339%から99.9937%に向上した。
「クラウドベンダーは常に過去の失敗から学んでおり、サービスは時間とともに向上している」とリード氏は語る。
コンピュートのカテゴリでは、主要パブリッククラウドのうち、「Amazon Web Services」(AWS)の「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)の稼働率が99.9985%でトップ、CenturyLinkが99.9647%で最下位となった。ストレージのカテゴリでは、Googleの「Google Cloud Storage」が99.9998%の稼働率でトップとなっている。
ただしリード氏によれば、CloudHarmonyのデータはクラウド稼働率の全体像を示すものではなく、ネットワークの可用性を外部から測定したものにすぎないという。全てのサービスが追跡されているわけではないからだ。従って、ダウンタイムの中には、例えばAWSのデータベースサービスで2015年9月20日に発生した大規模障害のように、測定に反映されないものもあれば、ユーザーが実際に体験したよりも影響が少なく記録されるものもある。
「クラウドでは各種のサービスが非常に複雑に入り組んでおり、それらのサービスをさまざまな方法で連係させる必要がある。クラウドの活用には無限の可能性があり、その全てについて可用性を提示するのは不可能だ」と同氏は説明する。
また同氏によれば、ベンダーの中には、ダウンタイムを実際より少なく報告するところもあれば、CenturyLinkのように大量のデータを公表し、顧客が気付いてすらいない短時間のサービス停止についてまで透明性を徹底させているところもあるという。
ダウンタイムはクラウド事業者の責任ではない場合もある。リード氏によれば、最も深刻かつ頻繁だが実際より少なく報告されているのは、ネットワークが関連するダウンタイムだという。
CloudHarmonyのデータでは、GoogleのIaaS「Google Compute Engine」の2015年の稼働率は99.9796%と、2014年の99.9859%からわずかに低下している。これを受け、Googleは「当社のデータによれば、Google Compute Engineの信頼性は2015年に大幅に向上した」と反論しているが、具体的な数字は出されていない。Googleのエンジニアリング担当副社長ベン・トレイナー・スロス氏は、「クラウド稼働状況の追跡は、ネットワーク、コンピュート、ストレージの全てが適切に機能しなければならない複雑なシステムを測定する1つの方法にすぎない」と語る。例えば、ある任意の時点で顧客が20個のインスタンスを使っている場合、そのうちの1つに保守の問題があったとしても、アプリケーション全体の性能には影響が及ばない。仮にこの問題のインスタンスをちょうど追跡中であれば、サーバレベルではサービス障害が実際より大きく報告され、システムレベルではサービス可用性が実際より低く報告されることになる。
またスロス氏によれば、クラウドではサービス需要が1日を通して増減するので、大規模なアプリケーションの場合、自動スケーリングや負荷分散などの要素が性能に大きな影響を与える可能性もあるという。
「それでも、稼働率に関するデータが全くないよりはましだ。ただし、顧客の体験が実際にどのようなものになるかを正しく予測するには、こうしたデータだけでは不十分だ」と同氏は語る。
リスクとトレードオフを理解する
大半のクラウドベンダーのサービスレベル契約(SLA)では、99.95%の稼働率が保証されている。プライベートデータセンターもダウンタイムと無縁ではないが、パブリッククラウドに関しては「自ら管理できず、可用性に不安があること」が一部のIT部門に採用を思いとどまらせている。ほとんどの場合、本番やミッションクリティカルなアプリケーションにパブリッククラウドが使われないのは、一部にはこうした理由からだ。
米国のニューヨーク州とニュージャージー州に50の施設を持つ緊急外来クリニックのCityMDは、メールコラボレーションにGoogleを使い、外部向けサイトの幾つかをAWSでホスティングしているが、業務インフラは一切パブリッククラウドには置いていない。
「ほぼ年中無休で営業しているので、稼働率は大きな優先事項となる。業務インフラはデータセンターに設置する方がコスト効率が高いと判断した」とCityMDのIT担当副社長、ロバート・フロレスク氏は語る。
Gartnerのアナリスト、カイル・ヒルゲンドルフ氏によれば、クラウドに対する成熟度はIT担当者によってさまざまであり、まだサービス停止に対する懸念が残っている。大半のIT部門はパブリッククラウドには重要な資産を置かないが、ベンダーの実績は信頼しており、クラウド設計への関与には積極的だ。
「IT担当者はパブリッククラウドで提供される最先端の機能やサービスを望んでおり、そのためなら、ある程度のリスクは厭わない。自社のデータセンターには実装できないからだ」と同氏は指摘する。
Googleのスロス氏によれば、パブリッククラウドの一般的なSLAよりもさらに高い稼働率保証を望む顧客はほとんどいない。追加で発生するコストやエンジニアリングの手間と比べると、メリットはごくわずかだからだ。
「当社にせよ、AWSにせよ、ゾーンを増やそうとなれば、追加の作業が必要となる」と同氏は語る。
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