SaaSは一度使うと病みつきになる
止まらないSaaS導入 IT部門は喜ぶべきか、焦るべきか
企業へのSaaS導入が進むことで貴重な人的リソースが解放され、IT部門の役割も変化しつつある。
「これまでより良いとか悪いとかではなく、とにかくこれまでとは違ったものになる」。従来オンプレミスで運用してきたアプリケーションをSaaS(Software as a Service)型のサービスに移行する場合に生じる、IT部門の役割の変化について、IT担当者らはそう語る。
SaaS型サービスがIT部門の負担を大幅に軽減することは容易に想像できる。何しろ、オンプレミスのアプリケーションを1つホスティング環境に移行すれば、IT部門にとっては「調達、プロビジョニング、設定、バックアップ、パッチ/アップデート管理を行わなければならないアプリケーション」がいきなり1つ減ることになる。
一方で、ホスティング環境への移行には事態を複雑化させる側面もある。SaaSへの移行は、IT部門の役割を従来とは大きく異なるものへと変えることになるからだ。アプリケーションを管理する人間が不要になるのであれば、会社はそのITスタッフを雇い続ける必要が本当にあるのだろうかという疑問も湧いてくる。
ホスティング環境のアプリケーションはオンプレミスほど保守の手間が掛からないが、アーキテクチャや統合に関連した多くの事前作業を必要とする。そうした作業を一番うまくこなせるのは、やはりIT部門ではないだろうか。さらにSaaSはいったん使い始めると、さらに多くのアプリケーションを移行したくなる場合が少なくない。そうなれば、アーキテクチャや統合に関連する作業もさらに増える。また、ホスティング環境のアプリケーションに何か問題が発生した場合に備え、事態の収拾に当たれる人物を待機させておく必要もある。SaaSへの移行はさまざまな変化を伴うということだ。SaaSへの依存度がますます高まる中、IT部門は自分たちが今後どのような役割を担うことになるのかをよく考える必要がある。
SaaSへの移行は止まらない
今や世界中がSaaSに移行しつつあるとの見解に異論を唱える人は、そう多くはいないだろう。
「2007年以降に資金調達を実施したオンプレミス型ソフトウェア企業は1社もない。もう選択の余地はないのだ。全てがSaaSに向かっている」と、米調査会社Constellation Researchの首席アナリスト、R.レイ・ウォン氏は指摘する。
米ベンチャーキャピタルNorth Bridge Venture Partnersが最近実施した調査によると、SaaSの採用率は過去4年間で11%から74%に急増している。一方、従来のオンプレミス導入モデルは縮小傾向にあり、米調査会社Gartnerによれば、採用率は現在の34%から2017年には18%にまで縮小する見通しという。
ありがたいことに、SaaSアプリケーションは迅速かつ容易に導入できるので、企業は多大な恩恵を享受できる。しかも多くの場合、IT部門への影響はほとんど、あるいは全くない。
全米で11ブランドのアミューズメントパークとウォーターパークを運営する米Cedar Fairは最近、米Merkleと米Salesforce.com傘下のExactTargetが提供するホスティング型のCRM/メールマーケティングソフトウェアを使い始めた。「かつては、顧客データがサイロ化され、情報入手に手間が掛かった。だが今では、来園者の行動をはるかに詳しく把握できるようになり、接客や売り込みの能力も随分と強化された」と、Cedar FairのCRM担当副社長ダリル・パワーズ氏は語る。
一方、この移行に際してのIT部門の労力は最小限にとどまった。時折、新たなデータ取得方法の追加を求められることはあるにせよ、大部分において、これらのプラットフォームはIT部門の手を離れている。
「IT部門はMerkleやExactTargetのソフトウェアには関与していない。こうしたプラットフォームをサポートしているのはIT部門ではない」と、パワーズ氏は語る。
代わりにIT部門のスタッフは、顧客情報のマスターデータベース、チケット販売、Webサイト、クーポン利用データの管理など、日々のパーク運営を支えるインフラの保守に集中している。
「おかげで自由になる時間が随分と増えた。IT部門が顧客データを分析する必要がなくなり、パークのインフラに集中できるようになった」と、パワーズ氏は語る。
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