本音で議論、学生×教員IT活用座談会【第4回】
現役大学生と先生が議論、「学校IT活用」の理想像とは?(2/2 ページ)
教員のITスキル向上が急務
小酒井 全国の教職課程の学生に対して、ITの活用方法が十分に教えられていないことは大きな課題だと考えています。教職課程で学ぶ学生が、オンラインサービスに資料を置くこともできない。ITを使いこなせる教員の育成が急務だと考えています。
玉川大学 大武さん(以下、敬称略) 学生だけでなく先生にも、今のITの現状に合ったITリテラシーが必要だと思います。スマートフォンでコミュニケーションを取った経験もなく、そもそもスマートフォンがどういうものなのかも分からないまま、頭ごなしに「スマートフォンはダメ」だと言っている先生もいるのではないでしょうか。逆にスマートフォンをはじめとするIT製品を自ら使っている先生であれば、節度ある使い方を教えることができるはずです。
教えるといっても、先生が「こういう使い方があります」と一方的に教えるのではなくて、学生と「一緒に学ぼう」というやり方がいい。あれもこれも使ってと言うつもりはないけれど、先生にもソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「Facebook」やTwitterといったアプリケーションを実際に使ってもらいたい。先生は目の届く範囲で学生のアプリケーションの利用状況を見つつ、基本的には学生に自由に使わせておいて、あまりに目に余るものは注意する。そんな教わり方、学び方ができたらいいな、と考えています。
“IT依存”は避けてほしい
片岡 動画教材を見て1人で講義を受けるやり方では、周りの学生とも教員ともコミュニケーションを取らない状況がどうしても生まれがちです。私も周りの学生がどのように勉強しているのか、何をしているのかが分からないときがありました。
こうした状況って実は、私が中学校、高等学校にいたときに似ています。絶対的な存在としての先生がいて、生徒は自分で学び方を考えようとしなくなる――そんな状況です。
自分1人で学べることには限界があります。コミュニケーションがなくなるようなIT活用ではなくて、コミュニケーションが増えるようなIT活用が大事だと考えています。
大武 何にでもITを使えばよいとは考えていません。例えば対人スキルは、人と接していなければ身に付かないこともあります。完全にITに頼り切りになってしまうのはおかしい。
幼稚園から携帯電話を持っている学生もいるけれど、私はそういう方針はあまり好きじゃない。もし自分が保護者なら、子どもに携帯電話を持たせるとしたら小学校高学年くらいからにしたいと考えています。調べることに使うためであれば持たせてあげたい、という考え方です。
私たちデジタルネイティブ世代が子どもに対して、「ITはただの手段。人としての魅力も磨かないといけない」と教えられるようにならなければ、と考えています。そのためには、こうしたことを教えてくれる先生が必要です。
小池 IT活用を進める上では、手段ではなく目的にフォーカスしていないとダメだということですね。今までに出てきたコミュニケーションやITリテラシーの問題も含めて、いかに教員側が意識を変えることができるかが鍵になりそうです。
栗谷・小酒井 おっしゃる通り、教員側の課題ですよ。
小池 こうした課題を、われわれ教員がどう引き受けていくかが重要ですね。今日はありがとうございました。
座談会を終えて――筆者から一言
座談会では、学生側からの「こういう活用事例がよかった」という声を聞いた教員側がそのシステムの導入の意図を語ったり、また逆に「そのアイデアは良いからやってみようか」と考えたりしていた。共に学びの場を良くしていこうという方向性が見え、非常に建設的な議論だった。IT活用を進める他の教育機関も、学生と本音で語り合う場を設けることで、継続すべきことや改善すべきことが見えてくるはずだ。
学生の話からは、ITを活用する目的を明確化できている教員はまだ多くなく、教員によってIT活用の意識に差があることも推測できた。教育活動にITをどう使うべきかといったITリテラシーが十分とはいえない教員も少なくないという。小酒井氏や栗谷氏の言葉通り、教員側にも対処すべき課題はまだあると考えられる。
とはいえ、学習者の要望に逐一応えていけるかどうか、そもそも応えるべきかどうかは、環境や要望の内容によって異なる。例えばデバイスについては、1人1台の思考ツールとして持つならば、目的に合った選択肢の中から、学習者自身が使いやすいものを選べるようにすべきだというのは正論ではある。だが教員のスキルや講義の実態などを考慮すると、どの教育機関でもこうした環境をすぐさま実現できるとは言い切れない。
いずれにしても、教員の一方的な考えでIT活用を進めることは望ましくない。取り組みの当事者である学習者の考えもうまく取り入れ、理想と現実のバランスを取りながら、現時点で最適だと考えられるIT活用を進めていくことが必要なのではないだろうか。
執筆者紹介
為田裕行(ためだ・ひろゆき) 教育ICTリサーチ主席研究員
大学卒業後、西日本の大手学習塾企業へ就職。一斉指導、個別指導、合宿教育など現場で先輩方に鍛えられ、1999年フューチャーインスティテュートの設立に参画。東京都における教員への教材開発支援プロジェクトに関わり、公教育だけでなく、私教育の現場への教育IT導入の可能性を模索。活動の詳細は「教育ICTリサーチブログ」にて発信している。
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本音で議論、学生×教員IT活用座談会
先駆的なIT活用校で、ITを日常的に活用している大学生と教員。それぞれの視点から活発な意見が交わされた教育IT座談会の様子をレポートする。
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