「iTeachersカンファレンス2016」レポート
「オンライン教育」があれば学校は不要か? 学校IT活用の先駆者が白熱議論(2/3 ページ)
デバイスの適切な使い分け方は
教育機関のデバイス導入事例といえば、最近ではタブレット導入事例を指すことがほとんどだ。ただし教育機関が活用できるデバイスはタブレットだけではない。多様化するデバイスをどう使い分けるべきか。タブレットの「iPad」やノートPCの「Chromebook」など、複数デバイスによるマルチデバイス環境を整備してきた広尾学園中学校・高等学校の金子 暁教諭は「デバイスありきで語るのではなく、どのような教育活動にどのデバイスが合うかという観点が重要だ」と自身の考えを述べる。
広尾学園のインターナショナルコースは、ノートPCの「MacBook」を全員が所有している。ただし授業によってはテキストを読むために電子書籍リーダー「Kindle」を使ったり、従来の紙のテキストを使ったりしているという。「教育活動や目的に合わせて、使うメディアやデバイスを選べることが自然な形だろう」と金子教諭は語る。
最近では奈良市立一条高等学校をはじめ、生徒が所有するスマートフォンを教育活動に利用する動きもある。金子教諭は現時点では、「画面の小さいスマートフォンを授業で使うことは考えていない」と語る。広尾学園は映像やプレゼンテーション資料などのビュワーとしてデバイスを活用することが多く、小さな画面ではこうした用途に適さないと判断した結果だ。
広尾学園は今後、中学生に論文執筆を体験してもらう計画だといい、「『その際は入力がしやすいノートPCの方が良いのではないか』という意見が校内では挙がっている」と金子教諭は話す。
ITに不得手な教員でもできるIT活用は
教育現場でのIT活用機運は高まり続けているものの、IT活用を現場の教員一人一人にくまなく広めるためには、どの教員でも実践できるIT活用の方法を標準的なモデルとして周知することが重要だ。ITが得意な教員しかできない活用例ではなく、ITに不得手な教員でも無理なくできる活用例が充実すれば、ITを活用する教員が増え、学習者がIT活用のメリットを享受しやすくなる可能性がある。
多くの教員が実践できるIT活用には、どのようなものがあるのか。大阪大学の岩居弘樹教授は一例として、学習の様子を記録して授業の最後に振り返る「リフレクションムービー」をはじめ、学んだことを記録に残す学習活動にITを生かすことを勧める。岩居教授は自身の講義の中でも、学生が自らの学びを振り返るための動画撮影を実践しており、学習した内容を定着させる効果が見られるという。「スマートフォン1台、タブレット1台からでも始められる。どの教員でも取り組みやすく、標準化もしやすいのではないか」(同)
新潟大学教育学部附属新潟小学校の片山敏郎教諭は、「情報収集や情報をまとめる活動にITを生かすとよい」と語る。例えば学習者が自分で撮った写真を利用して、プレゼンテーション資料を作成し、発表するといった活動だ。「こうした活動はどの教科でも必要であり、かつ取り入れやすい。学年を問わず実践しやすく、ITが効果的に生かせる」と片山教諭は話す。
「アプリ選択の自由」をどこまで認めるべきか
「使えるアプリケーションを自分自身で自由に選びたい」――。学習者からのこうした声にどう対処するかは、特に個人所有のデバイスを活用するBYOD(私物デバイスの利用)の採用校では大きな課題となっている。汎用(はんよう)性の高い私物タブレットの自由な利用を許可するのか。ある程度の制限の下で利用してもらうのか。どのような方針を取るべきか、頭を抱える教育関係者は少なくないはずだ。
BYODを採用する同志社中学校では、生徒のiPad miniはモバイルデバイス管理(MDM)で管理し、学校側が指定したアプリのみを使用可能にしている。画面にはアプリストアの「App Store」やコンテンツ管理ツールの「iTunes」のアイコンを表示しない設定を施しており、生徒はアプリを自由にダウンロードすることはできない。反田教諭はこうした制限の理由について「がんじがらめに管理してしまおうと考えているわけではなく、中学生は情報リテラシーが発達段階にあることを考慮した」と説明する。
もっとも同志社中学校は、こうした制限の仕方を恒久的に続けることを決めたわけではない。同校では今後、生徒が参加する「ICT委員会」という組織を作り、適切な制限方法について議論してもらう考えだという。同様の取り組みを進める広尾学園は、iPad導入当初にはアプリのダウンロードやWebサイトのアクセス先などさまざまな制限を設けていたが、現在はICT委員会を組織し、徐々に生徒の自由度を広げつつある。
一方で新潟小学校の片山教諭は、MDMは導入しておらず、使うアプリは児童に自由に選んでもらっているという。もちろん学習活動に必要なアプリを選ぶことが前提だ。児童は自分が必要だと思ったアプリを教員に申告し、教員にダウンロードしてもらう仕組みを取る。同教諭は「アプリを精査する能力を養うために、児童がトライ&エラーをする機会を設けたい。小学生でも鍛えていける」と話す。
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