なぜ日本の学校にITが必要なのか【中編】
小学校の「プログラミング教育必修化」が必要なこれだけの理由(3/3 ページ)
プログラミング教育必修化は、国家の競争力の源泉となるか
漢字が満足に書けない、掛け算もこれからという小学校低学年から、簡易なものとはいえプログラミングを教えるのは非現実的だと考える人は少なくないだろう。しかも小学校は中学校以降とは異なり、教科担任制を導入しているところはほとんどない。教員は担当しているクラスの国語、算数、理科、社会などほとんどの教科を1人で教えなくてはならない。現場にいる教員の方々の苦労に気が遠くなる思いだ。
それなら、プログラミングは教科担任制にして専任の教員を置けばよいと考える人もいるかもしれない。だが、まだ初等教育の中心にはなっていないプログラミングだけ教科担任制にするのは、小規模校が多い小学校には重過ぎる負担となってしまうだろう。
一方で国家の競争力の源泉ともいえる、学習者のITスキル向上は待ったなしだ。ITがあらゆるビジネスで必須となり、将来的に拡大していく社会構造のイノベーションの中心的な要素となっていく中、日本が世界をリードする存在となり続けるためには、高度なITスキルを持つ人材の育成がどうしても必要になる。その育成機会を教育機関が提供することには、一定の合理性があるといえる。
「どの学年からプログラミング教育を開始するべきか」「必ずしも必修でなくてもよいのではないか」といった議論はもちろんある。だが私は、総論として早期のプログラミング教育必修化に賛成する。
私は1980~90年代に学生時代を過ごし、戦後日本の最大の好景気の時代をつぶさに見た。その後の「失われた20年」と呼ばれる景気後退期の過半を社会人として過ごしてきた。この20年は、ちょうど1990年代に始まったインターネットの黎明(れいめい)期から普及期と一致する。
米国ではこの間に、GoogleやFacebookに代表される先駆的なIT企業が続々と誕生した。これらの新興企業に、その少し前の時期に起業してこの時期に大きく成長し、巨大企業となったMicrosoftやAppleなどが加わり、世界ナンバーワンの米国経済をけん引してきた。さらに中国やインドは国策としてIT産業を育成し、新興勢力が大きく成長してきた。
その間の日本はどうか。確かに楽天やソフトバンクが成長したことは、国内市場の中では大きな要素ではある。だが各国と比べると売り上げや株式時価総額の桁が幾つも足りない。この20年の積み重ねで、GDP(国内総生産)世界2位で、1人当たりGDPが世界1位の経済大国だった日本が衰退してしまった。
日本がGDP世界2位の座を中国に譲ったのが2010年。その後も2位の座を掛けて中国とデッドヒートを繰り広げているさなか――というのは、日本人のみが持つ幻想だ。その後のたった5年で、中国とはGDPにして2倍以上の差がついてしまったのだ。先進国の中でも、日本の存在感が高まらない状態が続く。
格差社会や貧困層の拡大が叫ばれて久しいが、今の子どもたちには今以上の景気後退の辛労辛苦をなめてほしくはない。できることなら、最盛期を日本に再び取り戻す力を得てほしい。そのための基礎となり得る可能性を十分に持っているプログラミング教育が日本に広がるのであれば、もろ手を挙げて支持したいと考えている。
本稿はプログラミング教育が取り沙汰されている理由と、その要因や背景を説明した。次回はこのプログラミング教育の是非をさらに深掘りし、さらに教育機関のIT活用の必要性をまとめて整理する。
執筆者紹介
武田一城(たけだ かずしろ) 日立ソリューションズ
情報セキュリティ、システムプラットフォーム、オープンソースなどさまざまな分野のマーケティング業務に従事。現在は特に学校IT分野における市場調査や企画に重点的に携わる。2011年より日本PostgreSQLユーザ会の理事を兼務し、代表的なオープンソースデータベース「PostgreSQL」の普及啓発活動も行っている。
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なぜ日本の学校にITが必要なのか
日本の教育機関が今、IT活用やIT教育への注力を迫られているのはなぜなのか。海外の動向にも触れながら、その背景を探る。
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