女性CIO誕生がいまだにニュースに
悪名高いIT業界の男女格差、“ガラスの天井”がなくならない理由は?(1/2 ページ)
Intelの最高情報責任者(CIO)に、再び女性が任命された。だが、IT業界の性別格差が解消されたのかといえば、それは違う。
Dow Chemicalの最高情報責任者(CIO)だったポーラ・トリバー氏がこのほど、Intelの新CIOに任命された。これがニュースになるのは、IT業界の経営幹部人事において性別格差が議論される機会がいかに少ないかを物語る。
Intelの方針
そもそもIntelのCIOに女性が就任するのは今に始まったことではない。トリバー氏の前任のキム・スティーブンソン氏はこれまで4年にわたって同社のCIOを務め、8月1日にクライアントコンピューティングおよびモノのインターネット(IoT)事業、そして同社のドル箱事業であるシステムアーキテクチャ(CISA)部門を担当する最高業務責任者(COO)に就任した。さらに、2012年にスティーブンソン氏にCIO職を引き継いだダイアン・ブライアント氏は、同社のデータセンター部門責任者となり、2016年4月には同部門のゼネラルマネジャーから執行副社長に昇進している。
今回、IntelのCIO職は社内から昇進した女性には引き継がれなかったが、トリバー氏が社外から起用されたという事実は、幹部人事については性別よりもビジネスの方が重視されるらしいという見方を裏付ける。
インテル最高経営責任者(CEO)のブライアン・クルザニッチ氏は2013年の就任以来、幹部は社内から昇進させるという同社の慣例を打ち破り、新しい人材を社外に求めてきた。最高マーケティング責任者(CMO)のスティーブン・ファンド氏はその代表的な事例だ。ファンド氏はStaples出身で、その前はProcter & Gambleに勤務していた。CISA担当プレジデントのマーフィーことベンカタ・レンデュチンタラ氏は1年前にQualcommから引き抜かれ、同社のナンバー2との見方が強まっている。
「クルザニッチ氏は、多数の手段を通じてIntelを再活性化する必要があると考えている。その1つが、社内外の多様な視点を反映させる上級幹部の採用だ。(トリバー氏の)起用は間違いなく、その傾向を物語る事例といえる」。Gartnerのワイヤレス・IoT技術担当アナリスト、マーク・ハング氏はそう解説する。
IT業界における女性の幹部登用のニュースといえば、トレバー氏のいたDow Chemicalでは、氏の後任に、やはり女性でIT業務のベテラン、メラニー・カルマー氏を起用している。だがガラスの天井が破れつつあるというわけではない。
IT業界の女性進出は後退
IntelやDowのIT幹部に女性が起用された事例を引き合いに、IT業界で悪名高い性別格差が解消されつつある兆候と受け止める向きもある。だがそうした見方は大きな誤りだ。
IT企業の経営幹部は依然として女性が圧倒的に少ないだけでなく、そうした幹部候補となる女性の数は減っているのが実態だ。例えば、Gartnerは2015年に実施したCIOに関する調査を基に世界のCIOに占める女性の割合は14%にすぎないと推計している。そしてその割合は過去10年間、横ばい状態にあるという。2016のHarvey NashとKPMGによるCIO調査では、上級IT管理職に占める女性の割合はさらに低く、わずか9%だった。それでも前年に比べれば3ポイント増えている。
しかも、若い女性はコンピュータサイエンスを受け入れるどころか敬遠するようになっている。Gartnerによると、コンピュータサイエンスの学位を取得した女性の割合は、、過去30年の間に激減した。ピークだった1984年は37%だったが現在は18%だ。1980年代半ばにコンピュータサイエンスの修士課程を卒業したGartnerのデブラ・ローガン氏は「この割合は年々減り続けている」と指摘し、「これはわれわれの選択なのか、それとも外部からの圧力なのか、あるいはその両方か」と首をひねる。
いずれにしても、CIO職は多様性を欠く傾向が続く。特に米国と西欧では、CIOは40~55歳の白人男性が圧倒的多数を占める。
職場のIT人材多様化の問題を専門とするローガン氏は「年齢にも性別にも人種にも多様性は存在しない」と語るが、自身もGartnerでは少数派の1人だ。
IntelのCIO起用とIT上級管理職における女性の存在については、他にも特筆すべき点がある。IntelはIT業界の中で率先して職場の多様性を実現してきた。2014年にはIntel社内とサプライヤー網を通じた「多様性の促進」を目指し、3億ドルをかけた多様性戦略を発表した。最近の発表によると、2015年末の時点で管理職に占める女性の割合は17.6%で、2014年より14.3ポイント増えている。女性の上級主席エンジニアおよびフェローの人数は、2014年の12人から2015年は21人に増えた。
しかし、そうした実績にはただし書きが付く。デイビー・アルバ氏は最近発表したIntelの多様性戦略に関する論文の中で、同社の技術職における女性のフル活用は、「市場調達可能性」、つまり米国の労働市場で技術者として採用できるスキルを持った女性の割合に左右されると指摘した。この割合はIntelの推計では22.7%。それを指標とすると、Intelの技術職に占める女性の割合20.1%(2014年比で5.8ポイント増)は、その目標に近づいている。だがスキルには溝がある。
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