成功体験の共有も実現
“感覚”による弁当、おこわ販売を脱せるか? 米八グループが実現したERPシステムとは(2/2 ページ)
カスタマイズ柔軟性の高さからOracle ERP Cloudを導入
米八グループは、まずExcelに情報を手入力する手間の省略と、各部署の情報をまとめた経営数値の見える化を実現するために、2015年4月にERPシステムの検討を始めた。同社がERPシステム選定において重要な要件としたのが、クラウドサービスとして提供されていることだった。前述したように、自社でハードウェアを保有し苦労した経験があったためだ。クラウドは継続的にコストが発生するものの、自社でサーバを持つことに比べて初期コストが抑えられるので、トータルコストとしても十分メリットがあると判断したという。
舩橋氏は各社に問い合わせ、ERPシステムの提案を受けた。米八グループの売上高は約100億円。「この企業規模に見合い、かつ今後の企業拡張に応えられる。なおかつ各店長が使えるシステムはどのようなものか、深く検討しました」と同氏は説明する。
数あるERPシステムの中からOracle ERP Cloudを選んだ理由は、ERPシステムがクラウドサービスとして提供されていたこと。そしてOracle ERP Cloudの導入担当企業として日本オラクルから紹介された中本・アンド・アソシエイツから、米八グループの要望に応じてOracle ERP Cloudをカスタマイズしてくれるという確証が得られたことだ。
「『新規店舗を除いた既存店のみの売り上げを管理したい』『従来まで運用していたExcelと同じ見た目で管理したい』といった細かい要望がありました。それに応えてくれたのが、Oracle ERP Cloudと中本・アンド・アソシエイツさんだったのです」(舩橋氏)
中本・アンド・アソシエイツによるOracle ERP Cloudのカスタマイズを含みつつも、プロジェクトはごく短期間で進んだ。2015年12月にプロジェクトを開始して、2016年4月18日には本番稼働。米八グループに加え、傘下のプラス米八、米八東日本、米八西日本の4社へ展開した。
「実質的な開発期間は約3カ月程度しかありませんでしたが、その期間に10件の帳票とそれぞれをグラフ化する機能を実装しました。これにより売上高や店舗別の管理損益の推移を見える化できました」。中本・アンド・アソシエイツの代表取締役社長、中本映子氏はこう語る。
米八グループはOracle ERP Cloud導入と併せて、各店舗にAppleのタブレット「iPad」を配布した。各店長は、iPadを使って日別や月別、エリア別、店舗別などの売り上げを手軽に確認できるようになった。これにより、各店長が「デパ地下ではおこわ単体が売れるが、駅ナカでは弁当が多く売れる」といった、今までは感覚的にしか把握できなかった事実が可視化できるようになった。各店長は自店の売り上げ推移に加えて他店の情報も加味しながら、戦略的な仕入れができるようになった。
「もともと、各店舗の店長はクライアントPCでの発注業務を嫌っていました」と舩橋氏は明かす。クライアントPCは有線LANでインターネットに接続していたので、作業場所が限られてしまうからだ。iPadなら自由な場所で好きな時間に使えるので、iPadの配布は店長に好意的に受け入れられたという。「iPadという使いやすいデバイスを配布したことや、他店の情報も見えるようになったことなどプラスの要素があったことで、各店舗に新システムが浸透していきました」と同氏は語る。
小さく素早く始めて育てる、クラウドの利点を生かした成功例に
売上高や人件費などの入力項目は、104店舗全てに対して公開している。「自店の情報と成功している他店の情報を数字で比べることで、感覚に頼っていた店舗運営が変わりつつあることを感じています」。導入から3カ月を経た感想を、舩橋氏は端的にそのように語る。店長会議でも数字に基づいた話し合いができるようになったという。
Oracle ERP CloudのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)機能を使った情報共有も活性化してきている。「例えばディスプレイの工夫で売り上げが伸びた店舗などは、写真を添えて成功体験を共有しています。こうした情報共有の他に、高い成果を上げた店舗にねぎらいの言葉をかけるといったことにも使われています」(中本氏)
かつてはクライアントPCやIT化にアレルギーを持っていた各店舗のスタッフたちも、iPadなら気軽に使えるようで、情報共有への意識が高まっているという。クライアントPCのキーボードが苦手な人でも、タブレットのタッチ操作には抵抗感がなく、それも発信しやすくなった要因の1つだろうと舩橋氏は分析している。発信しやすくなり、成功体験の共有が進むことで、Oracle ERP Cloudを使うモチベーションが向上し、自身も成功体験を得ていくという好循環が生まれつつあるのだろう。
一方で、使用する中でOracle ERP Cloudのユーザーインタフェースに気になる点があると舩橋氏は話す。「iPadからOracle ERP Cloudを利用する際、画面内のボタンが小さいので、指の大きい社員がボタンを押し間違えることがある。今後は、中本・アンド・アソシエイツさんに相談して改善していきたい」(同氏)
米八グループでのOracle ERP Cloud導入事例は、それぞれの店舗自体は小さくてもERPシステムの導入効果が得られることを証明した。しかも小さく素早くスタートし、確実に浸透させてから機能追加のロードマップを描くという、クラウドの特性を生かした導入事例だ。
今後のロードマップとしては、Oracle ERP Cloudと制度会計システムとの連係や、予算管理の高度化などを予定している。今後はイベントや天候の情報を取り込み、販売予測と結び付けていくことも考えているという。「こうした外的要因との関連性を見極めることで、店舗利益の最大化を支援していきたいですね」と中本氏は話す。
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