「NANDミラーリング」の危険度
「iPhone」のロックは約1万円で解除可能? その“大胆過ぎる手口”とは(1/2 ページ)
「iPhone」のロックを安価に解除できる方法を研究者が公開した。2015年の銃乱射事件でFBIがこの方法を使っていれば、容疑者が使用していたiPhoneのロックをわずかな費用で解除できていた可能性がある。
Appleのスマートフォン「iPhone」のロックを解除する安価な方法を、研究者が公開した。今後、当局の捜査に役立つことになりそうだ。ただしこの方法が、iPhoneの新しいモデルにも有効かどうかは定かではない。
「NANDミラーリング」の脅威
研究者が「iPhone 5c」で示したロック解除方法では、デバイスからNAND型フラッシュメモリを取り出し、そのデータをコピーする「NANDミラーリング」を用いて、iPhone 5cがパスコードを保存する領域のコピーを作成するものだ。NANDミラーリングにより、Appleが定めたロック解除試行回数の制限を気にすることなく、パスワードを総当たりで試すことができる。
この方法については約半年前に、コンピュータフォレンジックの専門家であるジョナサン・ジジアルスキー氏がコンセプトを提示済みだ。University of Cambridge(ケンブリッジ大学)の上席研究員であるセルゲイ・スコロボガトフ氏は今回、実際にこの方法でiPhoneのロックを解除してみせた。
掛かった費用は、2015年にカリフォルニア州サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の容疑者が所持していたiPhone 5cのロック解除に、米連邦捜査局(FBI)が支払ったとされる100万ドル(約1億円)よりもはるかに少ないという。
ジジアルスキー氏はiPhoneのロック解除方法として、NANDチップをデバイスから物理的に取り外す方法を紹介した。同氏がこのコンセプトの証明に使用したのは、制限を不正に回避する、いわゆる「Jailbreak」(脱獄)をしたiPhoneだった。
スコロボガトフ氏は非常勤ながら4カ月をかけて、NANDミラーリングのプロトタイプを完成させた。掛かった費用は、わずか100ドル(約1万円)だった。
一番大変な作業は、NANDフラッシュメモリのプロプライエタリな通信プロトコルを解明することだったとスコロボガトフ氏は明かす。この作業に、全体の半分の時間を費やしたという。ただし、いったん通信プロトコルが分かれば「ミラーリングの実行は比較的簡単だった」と同氏は振り返る。
セキュリティ企業TripwireのITセキュリティおよびリスク戦略担当シニアディレクター、ティム・アーリン氏は「NANDミラーリングは少ない費用で実行できるので、攻撃に活用する人が増える可能性がある」と語る。
アーリン氏は入手しやすいハードウェアを使って、約100ドルでロックを解除できたという。「スキルは必要だが、政府や国家以外の攻撃者にも十分に実行可能な方法だ」(同氏)。高度な攻撃は公開されるやいなや、瞬く間に世界中に広まる。まだ理論の段階、あるいは悪用リスクが最小限のうちに対策を講じることによって、後々、より深刻なセキュリティ問題に発展するのを阻止できる。
Dell Technologies傘下のセキュリティ企業RSAでゼネラルマネジャー兼シニアディレクターを務めるピーター・トラン氏は、「必要なハードウェアコンポーネントが安価だからといって、必要とされるスキルが少ないとは限らない」と指摘する。
プリント回路基板のチップやコンポーネントのミラーリングは、メモリフォレンジックの世界では以前からある方法だ。NANDミラーリングの手順は理論上は簡単に思える。だが、このロック解除は「決して簡単かつ迅速な方法ではなく、デバイスの抜き差しだけでは終わらない」とトラン氏は説明する。確かにハードウェアに掛かる費用は少ない。だが必要となる専門知識や時間を考えると「NANDミラーリングが近い将来、一般的なロック解除方法として広まることはないだろう」と同氏は語る。
NANDミラーリングを使ったロック解除については、iPhoneのどのモデルにまで適用可能かは定かではない。
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