IoT時代に求められる低コストと大容量
徹底解説:一度は消えかけた「テープバックアップ」が復活した理由(2/2 ページ)
ビッグデータはテープへの招待状
それから約15年が経過した今、企業はテープバックアップシステムから手を引いた自らの決断を見直すようになっている。その要因は3つある。
1つ目の要因は、モノのインターネット(IoT)とビッグデータ分析の時代になり、驚くほど大量のデータが生み出されるようになったことだ。数十ZB(ゼタバイト)もの新しいデータを格納するためのクラウドストレージを2020年までに用意する必要がある大手クラウドベンダーはテープに注目している。テープなら、クラウドモデルを破綻させないコストで必要な容量を確保できる。テープは、アーカイブデータとバックアップの両面で非常に魅力的に見えるようだ。
また、コスト効率が良くクラウドサービスプロバイダーにデータを送信できるように、テープを使用してアーカイブデータやバックアップデータをコピーして保存する顧客が増えている。このプロセスはクラウドシーディングとして知られている。現在のネットワークで大容量のデータを転送すると、低速でコストもかさみ、エラーが発生しやすくなることを多くの企業が理解している。データを搬送可能なメディアに保存した方が利便性はずっと高く、コストも安価になる。
クラウドサービスが登場したことでテープバックアップが用済みになることはない。それどころか、クラウドストレージの仕組みによって、バックアップとアーカイブにおけるテープの価値は高まっている。
併せて読みたいお勧め記事
今、ビッグデータで何が問題なのか
書き込み速度
テープバックアップの復活を後押しする2つ目の要因は書き込み速度だ。テープのデータ転送速度はHDDよりもずっと速く、フラッシュドライブストレージに匹敵する。元から備わっている書き込み速度は300Mbpsに達する。今もNANDフラッシュのテクノロジーは確実に刷新されている。だが業界関係者は、集積回路テクノロジーが進歩していても、書き込みのパフォーマンスは低下していると指摘する。価格については、テープに優位性があり、大規模なバックアップデータやアーカイブデータをコンテナ化するタスクに最適だ。また、バックアップデータを300Mbpsの速度でテープに書き込む方が、相互接続された高価なワイドエリアネットワーク(WAN)やメトロポリタンエリアネットワークを介してTB単位のデータを送信するよりも、コスト効率はずっと高い。例えば、OC-192つまり10GのSONETトランスポートなど、10GBpsパイプでは80キロ圏内で10TBのデータを移動するのに約2時間半掛かる。
現在の書き込み速度や予想される速度なら、バックアップデータの書き込みは効率的に行える。バックアップの書き込み中に運用ストレージの遅延が増えることを懸念する関係者には、フラッシュからテープに書き込む方法やディスクに一度バックアップしてからテープに書き込む「D2D2T」(Disk to Disk to Tape)方式など、テープの書き込み処理を意識させないデータ遅延戦略が必ずある。
決定的なLTFS
3つ目の要因はLTFSだ。LTFSはバックアップ業界のテープに対する支持を一気に取り戻す可能性がある。LTFSを使用すれば、テープでファイルやオブジェクトを保存するときにバックアップソフトウェアが必要なくなる。データを記録したネイティブファイルやオブジェクトシステムは、テープメディアに完全に複製される。これは、USBドライブを使用して、HDDまたはSSDのファイルやディレクトリを記録することに似ている。バックアップ用の専用コンテナは必要ない。つまり、コンテナのデータをフォーマットするために必要な時間とデータを復元する場合にコンテナからデータを読み込むための時間の両方が不要になる。
LTFSによって、バックアップと復元時の遅延は従来のデータバックアップに比べて大幅に削減される。さらに、テープバックアップはディスク同士のミラーリングに非常に似た形になる。ただし、ディスクミラーリング戦略と関連付けられることが多いハードウェアの「同一」要件はない。実際に、LTFSテクノロジーの非常に優れた実装がさまざまなベンダーによって実現されている。オンプレミスかクラウドかを問わず、ストレージソースをLTFSテープに関連付ける認識型のグローバル名前空間から、D2D2T戦略やD2D2C(Disk to Disk to Cloud)戦略の実装を単純化する機器まで、多様にある。企業は、LTFSテクノロジーをそれぞれの環境に落とし込むことで、ほぼ全てのストレージインフラやアプリケーションのワークロードでLTFSを活用できる。
テープバックアップの超えるべき壁
テープバックアップシステムがテープベースアーカイブで見られているような復権を果たすには、超えなければならない障害がまだ幾つか存在する。
コールドデータ保存 古くてほとんどアクセスされないデータが書き込まれているドライブは、電源を切るだけでデータを動かすことなく保護できると主張する声がある。容易なデータ保護と称されているが、この戦略には脆弱性がある。この戦略には、数カ月間電源を切った後に再起動したときのHDDとSSDのエラー発生率を裏付ける信頼できる統計データが不可欠だ。こうしたデータがあれば、ビッグデータ分野で最近耳にするこのような悲惨なデータ保護のアイデアを支持する意見を一掃できる可能性が高い。
若いIT担当者にはテープに関する教育が必要 データ保護を扱った最近のイベントで、若い仮想化管理者が筆者に寄ってきて、テープテクノロジーについて聞いたのは初めてだったと語った。そして、テープテクノロジーは、自社のIT部門に大きなメリットをもたらし得るアプローチのように感じたという。その若手管理者が知りたがったのは、さらに詳しい情報を得るにはどこに行けば良いかということと、テープシステムを構築するためになぜ本で埋め尽くされた部屋を用意する必要があるのかということだった。テープライブラリという言葉を知らなかったことで、その意味を取り違えたのだ。
テープをIT部門で実装しているにしても、データ保護やバックアップにクラウドサービスを使用しているにしても、企業のバックアップがテープに行き着く可能性は高くなっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー