恋に落ちると欠点が見えなくなる
あなたもとらわれる「IKEA効果」 組織が変われない理由の1つ?
企業は新たなITを取り込むとき、従来の固定概念を捨てなければいけない。しかし、考え方を転換することは容易ではない。その理由とは?
最高情報責任者(CIO)は、会社のIT資産を「保有」して管理するという従来の役割を捨て、会社の事業側とオープンな協力関係を築き、カスタマーサービス指向を取り入れることが求められている。言うことはたやすいが、CIO自身とIT部門をそうした思考に順応させるには、ITに対する考え方の転換が必要であり、そのためには相応の心理学が求められる。
だがCIOや専門家へインタビューしたところ、考え方の転換が可能であることが分かる。そのためには、大切にしてきた信念の再考や、新しい仕事文化の妨げとなる障壁を克服するための取り組みが必要だ。
Level 3 CommunicationsのCIO アティラ・ティニック氏は、ソフトウェア開発や経済、心理学に重点を置いたIT関連の教育に携わった経歴を持つ。特に心理学の専門知識は最も役に立ったと振り返る。「いつも一番助けになったのは心理学かもしれない。ITの切り替えは、最大級の難題だったかもしれない」と同氏は言う。
ITの切り替えとは、例えばオンプレミスからクラウドへの移行といった、単純に1つの技術を別の技術に入れ替えることだけではなく、プロセスや人員の変更も伴う。
「IT部門の一員であれ、特定のシステムのユーザーであれ、多くの人は自分が担うアプリケーションの機能を中心に自分のスキルセットを定義する」とティニック氏は話す。
「IKEA効果」と「IT部門の思考」
IT管理者と、そのIT管理者が構築やメンテナンスに関わったシステムとの間にある一種の一体感は、組織的変化の工程において1つの障壁となる。デューク大学フクアビジネススクールの教授 ダン・アリーリー氏は根底にあるこの問題を「IKEA効果」と表現する。人は労力を費やさなかった同様の製品よりも、自分で組み立てた製品に高い価値を置くという意味だ。
アリーリー氏などの行動経済研究者は、組み立てが必要なスウェーデンの家具メーカー、IKEAの製品を組み立てる人たちの中に、こうした価値観を見いだした。しかし同じような固定観念は、IT管理のような別の分野にも見ることができる。同氏は言う。「人はいったん物事に関わったり、物事を作り出したりすると、それに恋に落ちる。そして恋に落ちると欠点が見えなくなる。過度に投資して新しい物を試そうとはしない」(アリ―リー氏)
GartnerなどのIT市場調査会社はこの現象を「オーナーシップバイアス」と呼ぶ。これが妨げとなってCIOは、レガシーシステムといった「非差別化資産」から抜け出すことができない。ビジネス技術コンサルティング会社のWest Monroe Partnersも、オーナーシップバイアスをIT管理者が払拭(ふっしょく)すべき障壁と見なしている。
West Monroe Partnersの上級ディレクター兼技術プラクティス責任者、コリー・チャプリン氏は自身の経験から、オーナーシップバイアスはCIOよりも、CIO直属の部下にはびこっていると解説する。従来のように「構築して管理する」方式ではなく、同社のいう「統合して組み立てる」方式をIT部門が採用する上で、このバイアスが介入する。
IT部門はこれまで技術を保有することに重点を置き、その保有を中心としてスキルセットを培ってきた。「それが雇用の安定だった」とチャプリン氏は話す。
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