「クラウドコンピューティングEXPO秋 2016」レポート
IoT一色だった秋の祭典、2つのアプローチで見極めるクラウドサービス選び(1/2 ページ)
2016年秋のクラウドコンピューティングEXPOでは、IoTに関するベンダー各社の取り組みが目立っていた。IoTのサービスは大きく2つのアプローチに分けられる。1つは情報収集、もう1つはデータ分析だ。
恒例のIT展示イベント「Japan IT Week 秋 2016」から、「クラウドコンピューティングEXPO」(以下、クラウドEXPO)に注目し、最新の潮流を探った。
今回のクラウドEXPOでは、どのブースでも「IoT(モノのインターネット)」というキーワードを強く打ち出していた。ベンダー各社のアプローチを探る中で、一時期バズワード化していた「ビッグデータ」というキーワードが鳴りを潜めていることも見えた。もう1つ、各社が足並みをそろえて提供するサービスが、クラウドへのバックアップサービスだ。機能や価格の差こそあれ、ほとんどのベンダーがメニューに入れており、同サービスの浸透度合いの高さがうかがえた。
デバイスからクラウドへの情報収集機能を用意し、サービス開発の基礎を提供
クラウドEXPOを見て回る中で、多数目に付いたIoTというキーワード。歩みを止めて話を聞いてみると、そのアプローチには大きく2つの方向性があるようだ。
1つは、センサーで集めたデータをクラウドへネットワークを通じて情報収集するサービス。もう1つは、クラウドに収集したデータを分析するサービスだ。例えばさくらインターネットでは、前者の情報収集側のアプローチでサービスを提供している。同社はセンサーデバイスとクラウドサービスの提供基盤となるデータセンターを結ぶサービス「さくらのIoT Platform β」を提供。LTE回線を利用し、かつインターネットを介さずに通信する「LTE閉域網」を使う通信モジュールや、マイコンボードArduino用の拡張ボード「シールド」などのセンサーデバイスを使った通信に利用できる。現場に設置したセンサーモジュールからクラウドへ情報を集約するところまでを、さくらインターネットのサービスだけで完結できる手軽さが売りだ。通信モジュールの価格は、同社データセンターとの100万回の通信料金を含めて9960円(税別、以下同じ)(※1)と手頃な価格に設定している。
※1 2016年11月現在、キャンペーン価格で4980円。
ビッグデータの流行によって、分析ツールは一通り出そろってきた。既にそれらの分析ツールを使っている企業も少なくない。そうした企業がIoTに取り組むときに突き当たる壁が、どうやって情報を集めるかだ。さくらのIoT Platform βはそこをカバーするサービスだといえる。集めた情報は、各企業が使い慣れたアプリケーションで分析可能だという。
ニフティはもう少し幅広くサービスを提供するが、アプローチの方向性はさくらインターネットと似ている。「ニフティクラウドIoTプラットフォーム」には、ネットワークに接続する各種デバイス(IoTデバイス)間を仲介する中継サーバ「MQTTブローカー」などIoTに必要な機能をコンポーネントとして用意している。オムロンとの協業でセンサーデバイスから情報を集め、クラウドに蓄積、可視化するパッケージサービス「ニフティIoTデザインセンター」も提供する。
ニフティクラウドIoTプラットフォームでは、オムロン製の環境センサーデバイスからスマートフォンを通じてクラウドへ情報を送信する。ニフティとオムロンで共同開発したスマートフォンアプリを通じて、温度や湿度、気圧などの変化を他のスマートフォンにプッシュ通知するなど、IoTサービスの基礎となる部分をパッケージとして提供する。データ分析サービスを中心に提供する企業とは違い、センサーデバイスのメーカーとの協業によって、情報収集しやすい環境を提供していく。
センサーデバイスからクラウドでの情報可視化までを含めたトライアルキットは20万円からだという。「アイデアはあるが、どんな情報を収集できるか分からない」という企業も手軽に試せる価格だ。
分析ノウハウを生かしてデータ処理からIoTにアプローチするBIベンダー
先述したIoTのもう1つのアプローチ、クラウドに集めたデータの分析では、ビッグデータがバズワードとして流行した当時に、分析能力を磨いたベンダーが市場の中心となっている。集めたデータを可視化、分析するビジネスインテリジェンス(BI)市場は既に成熟期に入っており、差異化のための新たな分析対象の1つとしてIoT市場を意識しているようだ。
インフラ性能監視でリアルタイムな情報分析技術を磨いてきたアイビーシー(以下、IBC)は、主力製品の「System Answer G2」とIoTの組み合わせを打ち出していた。クラウドに蓄積した情報を分析し、今後の傾向を予測することにかけての機能は十分成熟しており、センサーデバイスから収集する大量のデータ分析にも力を発揮するはずだ。
特に製造業のユーザー企業から、機器の情報を収集して分析したいという要望が増えてきたという。収集した情報を分析することで、エネルギーコストの削減や機器の故障予知などに役立ちそうだ。
ただし分析側からのアプローチには悩みもあるようだ。IoTではMQTTなどの通信プロトコルが使われるが、その上のアプリケーションレイヤーで扱うデータ分析の形式は統一されていない。データ形式ごとにコネクターを開発すれば対応できるが、それらの開発費は最終的にユーザー企業のコストに反映される。こうした悩みが聞こえるあたりで、IoT市場がまだ成長途上だと感じられた。
出展しているBIベンダーから話を聞く中で、もう1つ気付いたことがあった。これらBIベンダーは、以前ならビッグデータをキーワードに売り込んでいただろうということだ。その市場が成熟し、センサーデバイスから集まるデータに注目して売り出し始めたことで、ビッグデータというキーワードが影を潜めたのだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー