「エンドポイントセキュリティ」再浮上のなぜ【最終回】
次世代エンドポイントセキュリティの2大製品「NGEPP」「EDR」を比較、何が違うのか?(3/3 ページ)
EDR製品の選び方
前回「次世代エンドポイントセキュリティの大本命? CSIRTを救う『EDR』とは何か」で述べた通り、EDR製品はインシデントレスポンスで求められる「検知」「調査」「対処」の各フェーズで有益な機能を提供する。選定に当たっては、それら各フェーズにおける機能を中心に評価することになる。
検知
EDR製品における検知は、マルウェア感染したエンドポイントの検知を意味する。検知に利用する脅威情報データベースであるセキュリティインテリジェンスは、EDRベンダー自体が持っている場合と、他のベンダーから取り込む場合とがある。
取り込み可能なセキュリティインテリジェンスは、EDR製品によって異なる。セキュリティインテリジェンスの取り込み手段は、セキュリティ侵害の痕跡情報である「IOC」(Indicator of Compromise)の主要フォーマット(OpenIOCやSTIXなど)によるもの、マルウェア検査サービス「VirusTotal」が出力するファイルのハッシュ値によるものなどさまざまだからだ。
現在はセキュリティベンダーを中心に、自社が保有するセキュリティインテリジェンスを公開する動きがある。だがEDRベンダーの場合、自社製品で扱うセキュリティインテリジェンスを開示していない場合が多く、セキュリティインテリジェンスの質や量のよしあしを判断するのは難しい。少なくとも、ベンダーが「脅威だ」と判断する根拠をある程度開示していれば、特に検知後の調査フェーズで役立つ。
調査
EDR製品の中で、最も機能的な差が生じやすい部分が調査だ。より詳しくいえば、どのような情報をどの程度得ているかに差がある。例えばプロセス情報1つを取っても、そのプロセスのハッシュ値を取得できるだけなのか、そのプロセスの親プロセス(生成元プロセス)が何かを含めて特定できるのか、そのプロセスがハンドルしているファイルまで特定できるのかなどは、EDR製品によって異なる。
特定のエンドポイント1台のみを詳しく調査したいのか、あるいは全エンドポイントを幅広く調査したいのかによっても選び方は変わってくる。特定の1台のみを調査する場合は、エンドポイントに対してのインタラクティブな操作が求められる。これはいわゆるリモートログインによる端末情報の収集のことで、端末の状況を正確かつ素早く把握するのに役立つ。一方で全エンドポイントの調査においては、網羅的な調査の実現が求められることになる。
調査できる情報量が多いだけで「優れたEDR製品だ」といえるかというと、必ずしもそうではない。だが少なくとも、どこまでの情報を知りたいのかをイメージしておかないと、「取得できると考えていたはずの情報が取得できなかった」ということになりかねないので、注意が必要だ。
対処
大抵のEDR製品は、特定プロセスの停止やエンドポイントの隔離といった対処に役立つ機能を有する。ただしレジストリの値を感染前の状態に戻したり、マルウェアのファイルを削除したりする機能を標準で用意しているかどうかは、EDR製品によって異なる。マルウェアファイルのハッシュ値やIPアドレス情報をブラックリスト化する機能、パッチを適用する機能の有無も同様だ。運用時にどのような対処をするかイメージした上で、EDR製品がどこまで満たすかを確認しておくことが重要になる。
EDR製品は脅威の検知や調査、対処の各フェーズに応じた機能を提供する。もちろん一連の機能を全て提供している製品が存在すればよいが、各製品によって得意不得意があるのが現実だ。まずは、どのフェーズの強化に力点を置くかを明確にした上で、製品検討に入るのがよいだろう。
以上見てきたように、次世代エンドポイントセキュリティと一口に言っても、実現したいことが何かによって選定すべき製品が異なる。各製品で望むことが実際に実現できるかどうか、イメージしている運用との間にギャップはないかどうかを事前に評価することが、次世代エンドポイントセキュリティ製品選びに失敗しないために重要となる。
一般的な次世代エンドポイントセキュリティ製品はソフトウェアとして提供されており、ハードウェアベースのセキュリティ製品と比べて導入は容易だ。試験導入してみて自社に合わなければ選び直すことで、失敗のリスクを低減することもできる。エージェントの一括導入を効率化するにはソフトウェア配布の仕組みが役立つので、必要に応じて導入を検討したい。
阿部淳平(あべ・じゅんぺい) ネットワンシステムズ
前職含めて約10年にわたりセキュリティ製品を担当し、ファイアウォール・IPS製品などの提案、評価、検証、技術サポートを実施。現在はエンドポイントセキュリティを含めたさまざまなセキュリティ製品を組み合わせた、新しいソリューションの開発にも取り組んでいる。
尾山和宏(おやま・かずひろ) ネットワンシステムズ
2013年からセキュリティ製品を担当し、エンドポイントセキュリティやネットワークセキュリティ製品についての提案、評価、検証、技術サポートを行うとともに、最新のセキュリティトレンドについての調査や実際の製品を使用した検証を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「エンドポイントセキュリティ」再浮上のなぜ
エンドポイントセキュリティを取り巻く動きが活発化している。その理由とは何か。ベンダーはどう動き、どのような製品/技術を世に出し始めているのか。徹底解説する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー