2016米大統領選を検証
「トランプ大統領誕生」をデータ分析の専門家はなぜ予測できなかったのか(1/2 ページ)
米大統領選でのドナルド・トランプ氏の予想外の勝利を受け、メディアや世論調査会社はデータ分析に失敗した原因の検証を進めている。
米大統領選の翌11月9日、メディアにはさまざまな見出しが踊った。中でも秀逸だったのは、「Man Nostalgic For Simpler Era Of 20 Hours Ago(20時間前のもっと単純だった時代が懐かしい)」というものだ。
秀逸と感じたのは、1つには面白いからだ。この見出しは風刺ニュースサイト「The Onion」に掲載されたものだ。もう1つ理由を挙げるとすれば、それはこの見出しが「かつてテレビのリアリティー番組に出演していたビジネスパーソンのドナルド・トランプ氏が勝つことなどない、勝つはずがない」という、ほとんどの人たちがついさっきまで抱いていた思い込みを暗に揶揄(やゆ)しているからだ。
データサイエンティストが分析するのは可能性
11月8日夜に開票が始まるまで、メディアにはそうした思い込みがまん延していた。「The New York Times」は民主党のヒラリー・クリントン候補の勝率を85%と予想し、「Huffington Post」は98%と予想。過去の大統領選で州ごとの当選結果をほぼ正確に予測した“天才統計学者”のネイト・シルバー氏は、自身のブログ「FiveThirtyEight」でクリントン氏の勝率を71%と予想していた。
「これは逆にトランプ氏の勝率が30%近くだったということでもある」。そう指摘するのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営学大学院のエリック・ブリニョルフソン教授だ。
「つまり勝率はゼロではなかった。起きる可能性が30%あれば、当然、実際に起きることもある」と同氏はメールで説明する。
起きる可能性がもっと低くても、起きるときは起きる。2016年のメジャーリーグ(MLB)のワールドシリーズがいい例だ。FiveThirtyEightによれば、第4戦後のシカゴ・カブスの優勝確率は15%だった。だがその後カブスは連勝し、11月2日の第7戦で108年ぶりの優勝を果たしている。
ブリニョルフソン教授が指摘しているように、データサイエンティストが分析するのは可能性であって、確実性ではない。であれば、上記のような事例は科学的には驚くに値しないのかもしれない。だがデータや予言のような予想に基づき、政治情勢や景況を判断している人たちにとっては、警鐘となるものだ。
敗因は過信
だが高度な分析ツールやデータモデルを活用できる昨今、なぜ、もっと十分に起こり得る結果としてトランプ氏の勝利を予測することができなかったのだろうか。
The New York Timesのメディアコラムニストであるジム・ルーテンバーグ氏は、今回の失敗はジャーナリスト、つまり大統領選の状況を米国民に報じる責任を担った人たちの責任だと指摘する。サブプライムローン問題に端を発したグレートリセッション(大不況)の終息から7年が経過する中で、政治的疎外感を抱いている人たちの不満をメディアは正しく把握することができなかった。欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う2016年6月の国民投票に先立ち、英国メディアがそうした兆しを読み取れなかったのと全く同じ構造だ。
「ジャーナリズムの何かが決定的に壊れたのは明らかだった。メディアは結局、世界を一変させるような反体制ムードの高まりを捉えることができなかった」とルーテンバーグ氏は指摘する。
世論調査を実施したメディアの多くは自らの誤りを認めている。Huffington Postで世論調査を担当する上級編集者ナタリー・ジャクソン氏は、自身が票を読み違えた原因について、「世論調査を過信していたせいだ」と分析する。
「世論調査はおおむね正しいということに、私は少しも疑いを持たなかった。だから、他の世論調査会社と同様、私もデータを信用し支持した。それが間違いだったことは認めざるを得ない」と同氏は語る。
Huffington Postが使用したデータモデルは世論調査のみに頼り、経済指標や、同じ政党が3期連続で政権に就くことはめったにないという事実は考慮に入れなかったという。
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