2012年の米国大統領選ではオバマ氏、ロムニー氏の両陣営がモバイルアプリケーションを使って大量のデータを収集し、選挙活動に生かした。政治の世界に浸透し始めたビッグデータ分析から企業が学べることとは。
一口にビッグデータ分析システムと言っても、全てが等しく作られているわけではない。リアルタイムデータも全てがリアルとは限らず、全てが本当に重要とも限らない。モバイル版キラーアプリケーションも、全てが本当にすごいアプリとは限らない。そのくらいのことは、「米史上最もオタク的な大統領選」とされた2012年の米大統領選で実践されたさまざまなデジタル戦略をざっと見直すだけで、十分に推測できる。ただし、疑う余地のないこともある。それは、他の全てのことと同様、政治もビッグデータ分析の世界に入りつつあるということだ。
共和党のロムニー陣営は各投票所の投票者数をリアルタイムで伝えてもらうべく、3万4000人のボランティアにモバイルアプリを配備したことを盛んに宣伝していたが、このアプリが「大失敗に他ならない結果」に終わったのか――そのように報じられ、それに対する否定のコメントも出されている――、それとも、民主党のオバマ陣営が有権者を投票所に向かわせるために使用したアプリ「Mobile Pollwatcher」に匹敵する成果を挙げられたのか? その判断は、選挙分析専門家に委ねるとしよう。
両陣営が投開票日に向けて用意したモバイルアプリはいずれも、選挙戦中大いに活用された大規模データベースやビッグデータ分析ツールとの間でデータをやりとりするために開発されたものだ。両陣営が採用したデータマイニングツールと予測分析手法は今後間違いなく、大いに比較されることになるだろう。ビッグデータを有意義な行動に変えるためにロムニー陣営が推進した取り組みは「Project Orca」と呼ばれ、オバマ陣営が有権者のグループ分けと絞り込みのために使用した大規模ITシステムは「Narwhal」と呼ばれた。
今回、結果としては、Orca(シャチ)がNarwhal(イッカク)を捕食することはなかった。だが、テクノロジーの点では? 今回の大統領選では、テクノロジーには新たな歴史を作る可能性があると同時にひどい弱点があることも示されたが、テクノロジーがかつてないほど大きな存在感を示したことは確かだ。とりわけ、ビッグデータはそうだ。ビッグデータを活用するには、ビッグデータを収集し、適切なデータモデルで分析する能力が必要だが、今回の選挙では、そうしたビッグデータ活用の驚くべき威力が発揮された。
米New York Times紙で「FiveThirtyEight」というブログを執筆する統計専門家ネイト・シルバー氏や、プリンストン大学の神経科学教授であるサム・ウォン氏といった世論調査専門家が選挙結果予測を的中させたのも、ビッグデータ活用の一例だ。シルバー氏やウォン氏らは、あらゆる世論調査の結果(さまざまな規模のビッグデータを収集、分析して計算された数値)を集積することで、1つの政治プロセスの結果をほぼ完璧に予測してみせたのだ。直感や政治的信念、声色といった要素は、そうした予測とは一切無関係だった。例によって政治評論家たちは、投開票日の翌日には、自分の予測がいかに間違っていたかを認めたものの、こうしたビッグデータ分析の予測が的中した事実にはあえて触れなかった。「これまで通りの政治」というわけだ。
当然のことながら、政治もここへきて、「抜け目のない商売人であれば既に昔から知っていること」を理解しつつある。それは、「多くの人たちから統計を集めることで、人間の行動は予測可能になる」ということだ。ビッグデータ分析は個人間の差異の不確実性を解消できる(参考記事:ビッグデータを生かすコツは「管理」でなく「分析」にあり)。
ビッグデータの活用が正確な政治的予測にいかに役立つかが盛んに報じられる中、私は以前セントルイスで小売業界の記者として働いていたころに取材したファミリー企業、Glik'sのことを思い出した。1897年に創業されたGlik'sはその後、米中西部の小さな町――中には、住民がわずか7000人程度のところもある――を中心に50店舗近くの服飾店をチェーン展開し、有名ブランドの衣服を提供する企業へと成長した。クリスマス商戦を間近に控え、販売業者がその年の目標数値を達成できるかどうかなど、お決まりの記事が出てくる季節になると、大手小売業者はそのシーズンの注目商品や販売予測を発表していたものだ。
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