0.5歩先の未来を作る医療IT
医療現場にITが浸透しない理由――新しいシステムへの恐怖はなぜ生まれるのか?(2/2 ページ)
新しいものは信用できない
医療機関では新しいもの(仕組み)に対する抵抗感が他の業種と比べて強く現れるように見受けられます。日ごろから忙しくしている方々は、新しいものを導入すると、自分の負荷が増えると感じ、できるだけ現状を維持したいと考えるのは仕方がないのかもしれません。
そのため、仮に院長が電子カルテを導入しようとしても「新しいものは大変そう」という意識から、スタッフは喜んでくれません。むしろ少し厄介だと感じる場合さえあります。
新しいことを始めるときにはトラブルがつきものです。システムのトラブルは、即業務の停止を意味しますから、例えば電子カルテが止まった場合には、病院全体がパニックになります。その結果、「トラブルが発生した=IT化全体が失敗した」と感じてしまう可能性があります。過去に一度でも、何らかのシステムトラブルを経験した方にとっては「システムは信用できない、新しいものは信用できない」と感じてしまうのかもしれません。
小さな組織だから不満の声が届きやすい
現在の電子カルテの普及状況をみると、大規模病院(400床以上)は普及が進み、小規模病院(200床未満)は普及があまり進んでいないことが分かります(図1)。これは、過去の厚生労働省などの補助金施策が200床以上の病院を対象としてきた影響が大きいのですが、それだけではないように感じます。
診療所や小規模病院は組織が比較的小さく、上層部や幹部との距離が近いものです。そのため、現場の不安が上層部に届きやすい傾向があり、かえってシステム化が進みにくいことがあるかもしれません。例えば7人程度の診療所の場合、医師1人、看護師2人、事務4人という比率で、事務と看護師の半分が電子カルテ導入に不安(あるいは反対)だと考えると、約4割のスタッフが電子カルテ導入に賛成していないことになります。これでは強引に電子カルテの導入を進めることは難しいでしょう。
システム導入効果が明確ではない
医療機関のIT化が進まない原因として、医師やスタッフのIT化への不安が挙げられることを説明してきました。しかし、もう1つ重要な原因を忘れてはなりません。それは根本的な問題なのですが、実際に導入しても「効果が分かりにくい(測定しにくい)」システムが多かったことが、その原因です。
どこかのCMではありませんが、「結果にコミットする」医療業界向けのシステムがあまり見られなかったことが、医療現場のIT化が進んでこなかった大きな要因だと筆者は考えています。せっかくシステムを導入したにもかかわらず、かえって手間が増えたり、スピードが落ちたりしては、システム化の意義に疑問を持たざるを得ません。目的は「システムの導入」ではなく、「システム導入後の効果(結果)」であるべきだと、いま一度問い直してみましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
0.5歩先の未来を作る医療IT
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー