プロフェッショナル向けから家族向けへと変貌か
徹底レビュー:新型「MacBook Pro」は、僕らが知っている“Pro”ではない(3/4 ページ)
Touch Barのカスタマイズオプション
ありがたいことに、Touch Barのショートカットは必要に応じてカスタマイズできる。デスクトップの「表示」メニューからTouch Barのショートカットの並び順を変更したり、ショートカットを追加/削除したりすることが可能だ。設定の変更方法もカスタマイズできる。音量を変更する場合、音量アイコンを押して音量スライダーを左右にスワイプするか、Touch Bar内の矢印キーを押してから音量ボタンを押す。つまりコントロールをカスタマイズできるからといって、必ずしも「優れた」コントロールになるわけではない。ファンクションキーの列に専用の音量ボタンがある方が、操作は簡単かつ早くなる。
Touch IDは、Touch Bar右端にある電源ボタンに組み込まれている。指紋を使ってノート型デバイスを保護できるのは極めて便利だが、WindowsノートPCでは指紋スキャナーが10年以上前から採用されている。さらにMacBook ProのTouch IDは、他の指紋センサーと同程度の精度しか備えていない。そのTouch IDは控えめに言っても、Touch Bar内の「不便」な位置にある。Touch IDを使用する際、無意識のうちにバックスペースボタンを押してしまうことがよくある。Touch IDで指紋を認証してMacBook Proのロックを解除するよりも、キーボードでパスワードを入力する方が短時間で済むのではないだろうか。
電子マネー決済サービス「Apple Pay」とTouch IDの組み合わせでオンラインショッピングは簡単になるが、Touch IDを使えるのはAppleのWebブラウザ「Safari」でショッピングしている場合に限られる。またAppleが、MacBook ProでTouch IDに使う指紋の登録を3つまでしか許可していない理由も分からない。iPhoneは5つの指紋を登録できるのにもかかわらず、である。
新しいMacBook Proに加わったTouch Bar以外の最大の変更は、キーボードの下に配置された極めて巨大なタッチパッドだろう。Appleの発表では、このタッチパッドは、従来の13インチモデルが搭載していたトラックパッドよりも46%大型になっている。過去のモデルと同様、MacBook Proの2016年モデルのトラックパッドも、感圧タッチ技術「Force Touch」を採用した独自の“クリックパッド”スタイルのタッチ面を備える。実際のタッチパッド表面は固定された1枚のガラスなのだが、振動型の触覚エンジンがタッチパッドの底面に組み込まれており、ボタンをクリックしているような感触が得られる。
Force Touchを利用することで、Appleはノート型デバイスをより薄くし、筐体内部により多くの空間を作り出すことに成功した。こうして生み出した空間に大型バッテリーなどのシステムコンポーネントを詰め込んでいる。エンドユーザーは感圧操作を使ったジェスチャを使用することで、SafariのリンクやAppleのファイル操作機能「Finder」を使ってファイルをプレビュー表示したり、「iTunes」で動画を早送りしたりすることができる。とはいえ、ほとんどのエンドユーザーは標準のマルチタッチジェスチャに巨大なタッチパッドを使用できれば満足だろう。マルチタッチジェスチャとは、例えばピンチアウト(2本の指を遠ざける操作)をしてページを拡大したり、2本指で引っ張るようにスワイプして画面をスクロールしたりする、といったジェスチャだ。
MacBook Proのパフォーマンス
13インチモデルのMacBook Proに搭載するCPUとしてエンドユーザーが選べるのは、Intelの第6世代(開発コードネーム: Skylake)「Core i5」または「Core i7」(カスタマイズ構成オプション)のデュアルコア版だ。つまりMacBook Proで動作するCPUは、最新のWindowsノートPCより完全に1世代後れている。通常であれば、ノートPCベンダーが旧式のハードウェアを搭載して新製品をリリースする場合、エンジニアはより多くの時間を費やして、バッテリー持続時間を最適にするなど最高のパフォーマンスを確実に引き出そうとするのが一般的だ。またCPUの価格低下により、比較的安価に購入できるようになるのも通例だろう。だが残念なことに、新型MacBook Proには、このどちらも当てはまらない。旧式のプロセッサを採用し、バッテリー持続時間が現在の基準よりも大幅に短いことを考えると、Touch Bar付きCore i5モデルで1799ドル(国内の公式税別価格は17万8800円)という価格は、非常に高額だといえる。
本稿のレビューに使用したMacBook Proは、256GBのSSD(ソリッドステートドライブ)、8GBのRAM、2.9GHzのIntel製プロセッサ「Core i5-6267U」(ターボブーストで最大3.3GHz)を搭載する。Intelの「Iris Graphics 550」は第6世代Coreプロセッサの内臓グラフィックスユニットで、NVIDIAの「GeForce 930M」のようなエントリーレベルの旧式専用グラフィックスユニットと同程度の性能がある。「Pro」と称するノート型デバイスに1799ドルを費やすなら、高い馬力を期待するところだ。だが新型MacBook Proにそのような力強さはない。Intelが最初にCore i5-6267Uを発表したのは2015年のことだ。確かに、このCPUは文書作成、写真編集、さらにはビデオトランスコーディングも簡単に処理する。だが、ここで問題にしているのは、高価格で販売されている「新型」のノート型デバイスに搭載されているのが、約1年前のデュアルコアプロセッサだということだ。
平均的なエンドユーザーにとって、MacBook Proのシステムパフォーマンスは素晴らしいものになっていることは間違いない。特にその要因になっているのは、SSDの高速なデータ転送速度だ。そのおかげで、旧式のハードウェアを組み込んでいるにもかかわらず、MacBook Proの動作は軽快さを感じさせる。だが企業の若手起業家が数時間に及ぶ4K映像の編集を試みる場合や、数十億人規模の顧客向けに金融関連の複雑かつ膨大な数値演算処理の実行を試みる場合は別だ。このようなケースにMacBook Proを使うと、なかなか作業が終わらない可能性が高い。
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