変わるIT部門が必要なスキル
CIOが頭を悩ますIT人材不足、解決の鍵は「人事部門」
IT人材が不足している中、最高情報責任者(CIO)は人事部門と強固な関係を築く必要がある。「どのように関係を築けばいいのか」「なぜ協力が必要なのか」を紹介する。
米国にあるアラバマ大学(UAB)でバイスプレジデントと最高情報責任者(CIO)を兼務するカート・カーバー氏は、幅広い雇用戦略によってIT人材の不足に取り組んでいる。
カーバー氏は人事部門と戦略的に協力するようになり、若手のIT人材や、型にはまらないIT人材を発掘するユニークなパートナー関係を構築している。また分析やセキュリティ、ビジネスインテリジェンス(BI)に関する専門知識を持つ従業員をUABに引き止めておくため、今まで以上のインセンティブを提供している。
「毎年の昇給はしていないが、能力給を支払っている。セキュリティとBIの専門知識を持っているIT人材には、より多くの能力給を支払って人材の抱え込みを図っている。なぜなら、この分野の従業員は欠かすことができないからだ」とカーバー氏は説明する。
現在、あらゆる業界のCIOは、その規模を問わず、技術職の人材を獲得するべく激しい争いを繰り広げている。Harvard Business Review Analytics Servicesが実施したRed Hat後援のレポート「I.T. TALENT CRISIS: PROVEN ADVICE FROM CIOs AND HR LEADERS」(IT人材の危機:CIOと人事のリーダーからの実績に基づいたアドバイス)では、上級ITリーダーの肩に、IT人材の需要と供給の関係が重圧としてのしかかっていることが指摘されている。さらに地方自治体や法律事務所、不動産、メーカーなど歴史的にローテク業界のCIOは、人材獲得のためにGoogleやAmazonなどのハイテク業界のCIOと争わなければならないことにも言及されている。
新たな現実によって新たな振る舞いが求められていると専門家はいう。
IT人材の不足
カーバー氏は、上述の「I.T. TALENT CRISIS」でインタビューを受けた数多くのCIOのうちの1人だ。同氏はレポートのタイトルに同意し、CIOが危機の真っ只中にいることを認め、次のように語っている。「デジタル化によって、職場で変化が生じている。さらに高等教育やテクノロジーの中でも変化が起こっている。この3つの変化は人材不足の問題に影響している。重視されるIT技能の幅は広がっている」(カーバー氏)
重圧にさらされているのは大学や自治体のCIOだけではない。2016年にHarvey NashとKPMGが実施した「Harvey Nash/KPMG 2016年度CIO調査」では、アンケートに参加した3352人の上級ITリーダーの65%は、技能が不足しているために自社が停滞していると考えていることが明らかになった。これは前年の59%を上回る結果だ。Gartnerのレポート「2016 CIO Agenda」でも、上級ITリーダーの27%が、技能とリソースの不足が成功への最大の障害になっていることを把握していると報告がなされている。それから、International Data GroupのCIO Executive Councilが実施した調査「2016 IT Talent Assessment Survey」では、「人材に関する強固で太いパイプを持っている」と回答したのは131人のITリーダーのうちわずか8%だった。
CIO Executive Councilでグローバルメディア支局とクライアント調査部門のマネジャーを務め、同社調査の執筆と監督をしたブレンダン・マクゴーワン氏は次のように指摘する。「ITリーダーの5分の3(60%)は、3年前と比べて優秀なIT人材を引き付けるのが難しいと感じている」(マクゴーワン氏)
IT人材の需要が減る見込みはない。米国労働省の「Bureau of Labor Statistics」によれば、コンピュータと情報テクノロジーに関連する雇用は、2014年から2024年までの10年で12%増加し、約50万件の新規雇用をもたらすという。
「あらゆる企業はテクノロジーがけん引している。この状況を踏まえると、IT人材の不足は、IT部門限定の問題ではなく、企業全体の問題だ」(マクゴーワン氏)
IT部門と人事部門の関係
カーバー氏は、人事部門とのパートナー関係によって現在の雇用危機から脱却を図ろうとしている。人事部門と強い結び付きを築くのは、楽な作業ではなかった。カーバー氏は、分析やセキュリティ、BIの専門知識を持つ従業員に他の従業員とは異なるインセンティブを与える方策を採ったが、この方策は人事部門が納得できるものではなかった。人事部門は大学全体という観点から、同氏の方策を“大学内での給与格差の根源”として捉えていたとカーバー氏は振り返る。
今日、IT部門と人事部門の関係はより強固な基盤の上に構築されている。「IT部門と人事部門は人事コンサルタントという“架け橋”でつながっている。1人の共有の人事リソースを設けることで、この1年の間に多くのイニシアチブを展開することができた。多くの場合において、大学はインセンティブを良いアイデアだと感じ、大学全体で導入することになった」とカーバー氏は説明する。
I.T. TALENT CRISISのレポートでも、「人事部門との密接な関係は、CIOが持つ中で最も強力な武器の1つである」と述べられている。また同レポートでは、「組織の成功に不可欠な技術人材がいる場合、CIOと人事部門は協力して人材を抱え込み、人材を育成するための枠組みを変えなければならない」という指摘もなされている。マクゴーワン氏は「人事部門との協力関係は絶対に欠かすことができないものだ。特に新入社員レベルの人材に関しては、求めるものを明確にしておかなければならない」と語る。
ITスキルセットの再考
事実、カーバー氏の戦略の1つはIT部門の役職に求められるスキルセットを再考することだ。「昔は大卒の資格保有者のみが雇用対象になっていたが、今では状況が異なる」とカーバー氏は話す。
カーバー氏によれば、特定の新入社員レベルのIT部門の役職は、コンピュータ科学の専門知識は必要ないという。具体例としてログファイルの選別や、レスポンシブなプログラミング、ヘルプデスクの対応などを挙げ、次のように語る。「ヘルプデスクではある程度の技術的スキルが必要だが、実際に求められるのは、コミュニケーションスキルや協調スキル、チームで働くスキルだ」(カーバー氏)
このような非技術職にはトレーニングが必要になる。だがインターンシップや修了プログラム、コードキャンプ、都市部の若者に1年間の職業訓練プログラムを提供するYear Upといった団体を通じてトレーニングをすることは可能だ。「私はコンピュータ科学が大好きで、コンピュータ科学専攻者が望ましいと考えている。だが今すぐに任命できる職務は多く、Year Upなどのプログラムを終えた優秀な候補者もいる」とカーバー氏は述べる。
雇用する人材と雇用手段の幅を広げることは雇用者と候補者双方のメリットになる。「企業は新入社員レベルのIT職を雇う新たな手段を手に入れた。新しく雇用した人材は、後の仕事に必要なトレーニングを受けることが多い」とカーバー氏は語る。
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