動き始めた「ラーニングアナリティクス」【第3回】
九州大学でも実践中、「ラーニングアナリティクス」が“空論”ではないこれだけの根拠(3/3 ページ)
総合的なラーニングアナリティクスの具現化も
アダプティブラーニングはラーニングアナリティクスの応用例の1つではありますが、データの収集・分析対象はその機能を備えた学習アプリケーションや教材そのものに限定されていることが多く、ラーニングアナリティクスの部分的な要素を具現化したものに過ぎません。一方、連載第2回で紹介したラーニングアナリティクスの4機能(学習履歴の収集、学習履歴の格納、学習履歴の分類・整理、学習履歴の分析)を実現する製品/サービスは個別には提供されているものの、これらを統合的にカバーする製品/サービスは限られているのが現状です。
ラーニングアナリティクスの構成要素を幅広く提供するベンダーの1社が、筆者が代表を務めるデジタル・ナレッジです。同社は2015年10月、同社の学習管理システム「KnowledgeDeliver」や教育ビッグデータサービス「KnowledgeRecorder」のラーニングアナリティクス用オプションとして「Analytics+」の提供を開始。KnowledgeDeliver/KnowledgeRecorderとの組み合わせで、ラーニングアナリティクスの主要機能をカバーします。Analytics+の中核要素となる教育ビッグデータ分析・可視化ツール「Analytics+/View」は無償で提供しています。
デジタル・ナレッジのツール群は、前述したラーニングアナリティクスの4機能のうち、3機能をカバーします。1番目の要素である「学習履歴の収集」は、KnowledgeDeliverとKnowledgeRecorderが担います。KnowledgeDeliverが扱えない他社製LMSや学習用アプリケーションなどからのデータをKnowledgeRecorderで収集する仕組みです。KnowledgeRecorderは他にも、学習履歴データベース「LRS」(ラーニングレコードストア)機能、多様なデータを標準化する「データクレンジング」機能を備え、2番目の「学習履歴の格納」を実現します。4番目の「学習履歴の分析」は、学習履歴の分析機能を持つAnalytics+がカバーします(図3)。ただし3番目の「学習履歴の分類・整理」、つまりデータクレンジングは、一部は自動化の機能を提供するものの、基本的には後述の「ラーニングデータサイエンティスト」による手動での対処が必要となります。
ラーニングアナリティクスの主要機能としては上記の4点ですが、より直接的に価値を生み出すには単なる分析にとどまらず、ラーニングアナリティクスによる教育ビッグデータの分析結果を具体的なアクションに結び付ける仕組みが別途必要になります。Analytics+の場合、こうした機能は有償オプションの「Analytics+/Robot」で提供します。例えば前述したアダプティブラーニング機能に加え、学習履歴や行動履歴から退学につながる行動を察知し、管理者や教員に事前にアラートを出す「退学予兆検出」機能、企業向けに優秀な営業成績を上げる可能性の高い人を抽出する「ハイパフォーマ予備群抽出」機能などを用意しています。
「ラーニングデータサイエンティスト」の育成が必須に
以上、ラーニングアナリティクスの事例や製品/サービス動向を紹介してきました。ラーニングアナリティクスは実証実験の段階を過ぎ、実際に効果を発揮する段階にきていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
前述の通り、アダプティブラーニングなどラーニングアナリティクスの部分的な要素を具現化した製品/サービスは充実し始めたものの、ラーニングアナリティクスの構成要素を包括的にカバーする製品/サービスは限られているのが現状です。ラーニングアナリティクスに限った話ではありませんが、目的によって導入すべき製品/サービスは変わります。ラーニングアナリティクスに取り組みたい教育機関は、まず目的を明確にした上で、その時点で利用可能な製品/サービスの選択肢の中から選定するか、自前で構成要素をそろえて必要なシステムを構築するかの判断が必要になります。
ラーニングアナリティクスの効果的な実践には、教育ビッグデータの分析やラーニングアナリティクス関連の機能開発を担うラーニングデータサイエンティストという人材の育成が求められます。データを取り扱い分析するデータサイエンススキル、アプリケーション開発スキルといった一般的なデータサイエンティストのスキルに加え、eラーニングや教育のノウハウをも兼ね備えた人材のことです。自前でラーニングデータサイエンティストを育成するのが難しい教育機関は、ラーニングデータサイエンティストの育成支援や分析作業のアウトソーシングサービスを手掛けるベンダーに協力を仰ぐことも有力な選択肢となります。
教育ビッグデータから教育価値を引き出すラーニングアナリティクス。今後多くの企業からラーニングアナリティクスの製品/サービスが提供され、多くの教育機関がその恩恵を受けることでしょう。
執筆者紹介
吉田 自由児(よしだ・じゆうじ) デジタル・ナレッジ代表取締役COO、デジタル・ナレッジ教育テクノロジ研究所所長
1973年生まれ。早稲田大学理工学部卒。大学でCAI(コンピュータ支援教育)を研究しデジタル・ナレッジ創業時から参加。エンジニアとしてeラーニングシステムのパッケージ開発や数多くの個別SI(システムインテグレーション)に従事。近年はラーニングアナリティクスへの関心が高く、同社ラーニングアナリティクス総合サービス「Analytics+」の初期バージョンを1人で開発した。
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動き始めた「ラーニングアナリティクス」
教育や学習活動から生まれる教育ビッグデータを生かす「ラーニングアナリティクス」。その実態を明らかにする。
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