製品選定前に読んでおきたい基礎技術 バックアップ編【第1回】
いまさら聞けない、バックアップ技術の学習で欠かせない3つの基礎
バックアップ技術を学習する上で必要になる前提知識として、リストア、必要な資源、サービスレベルの3点について解説する。
本連載では、バックアップに関する絶対に外せない基礎技術要素の解説を3回にわたって掲載する。これからバックアップを学習する人、バックアップシステムを設計・構築する人を対象に、基本的な技術要素や考え方を中心に解説する。
第1回は、バックアップに関する基礎技術要素を習得する前に、バックアップの必要性に関してお伝えする。「いまさら必要性なんて……」と思う読者も多いかもしれないが、バックアップの基礎技術を学習する上で重要な前提知識になるので、ぜひ目を通していただきたい。
1.バックアップはリストアとセットで考えなければ意味がない
まず「なぜバックアップを取得するのか」と聞かれた場合、ほとんどの人は次のように答えるだろう。
「万が一のシステム障害や災害に備えて、重要データを保護・保管するため」
もちろんその通りだが、万が一のときにデータだけを退避していても、サービス継続・障害復旧の観点ではあまり意味がない。バックアップしたデータは、復旧(リストア)することで初めてその目的を達するからだ。
バックアップはリストアとセットで考えないと意味がない。いくらデータを収集しても、有事の際に使えない(リストアできない)のであれば、それは無駄な行為になってしまう。つまりバックアップを検討する場合は、まず先にリストアありきで考えることが必須である。
バックアップ/リストアは、われわれの生活に例えれば万が一に備える保険のようなものだ。保険を検討する場合は、月々に支払う費用と万が一の際の補償内容を見比べて、自分に合った最適な物を選択するだろう。保険に例えた場合、バックアップは月々に支払う保険料で、リストアは万が一の際に支払われる補償料である。補償が支払われない保険に加入するなどあり得ないのだ。
2.バックアップは非常に多くの資源を必要とする
次に、バックアップは非常に多くの資源を必要とすることを認識すべきである。ここで言う資源とは、「バックアップしたデータの保存場所」「バックアップするシステム的な仕組み」「バックアップに関わる人的リソース」を指す。
個人PCやスタンドアロンの単一サーバなどであれば、バックアップに必要な資源は限られるだろう。例えば個人PCであればHDDを2つ用意してミラーリングしたり、重要なデータだけをDVDなどの媒体に退避して保管したりと、比較的簡単かつ安価にバックアップができる。
これが企業のシステム全体となれば、ここに掛かる資源は大きいものになる。例えば「バックアップしたデータの保管場所」をストレージ機器にした場合、バックアップデータの容量に応じたストレージ機器を用意する必要がある。極端な話だが、インフラ全てのバックアップを3世代取得すると、そのインフラで利用しているデータ容量の3倍のストレージ容量を要する。バックアップを効率化するためにバックアップツールを使う場合は、バックアップシステムを構築する必要がある上、維持管理も必要になる。
つまりバックアップ/リストアの対象とするデータは、必要性を考慮して絞り込みをしないと、膨大なコストが発生してしまうということだ。
顧客のクレジットカード情報のように重要かつ機密性の高いデータを扱う場合も注意が必要だ。ビジネス視点では、ビジネスを加速させる大きな原動力になるデータだが、システム視点ではこのようなデータを扱うこと自体が大きなリスクとなる。「データの存在自体に高い価値」を持つと同時に「漏えいするリスク」の両面を持つ。このようなデータに関してはデータセキュリティの観点を優先させるべきだ。本連載では割愛するが、データセキュリティに関してはまた機会をみて解説する。
3.有事の際にどれぐらいのサービスレベルを維持するか
有事の際にどれぐらいのサービスレベルを維持するかも大切だ。バックアップデータを使ってサービスを復旧するに当たっては、サービスインフラがどれぐらいのサービスレベルを提供したいかというインフラ全体の方針に基づいたバックアップ/リストアのデザイン(設計)が必要となる。そのデザインの根幹となるのは技術的な知見や経験、バックアップツールの機能や運用ノウハウだ。つまりバックアップ/リストアで取る手法はシステムのサービスレベルを軸に組み立てることが理想的である。
サービスレベルの指標として、以下の考え方がよく使われる。
- RPO(Recovery Point Objective)
- RTO(Recovery Time Objective)
RPOはリカバリー可能な時点の目標であり、どの時点の状態に復旧できるかを指している。RTOは復旧に必要な時間の目標であり、どれくらいの時間で復旧できるかを指す。
バックアップデータをリストアすると、システムのデータを現在から過去へ戻すことになる。その際、どれぐらい過去まで戻すことを許容するのかという指標がRPOである。例えばバックアップを毎日取得しているデータをリストアする場合、少なくとも24時間以上前のデータに戻ることはない。RPOを考慮したバックアップ計画の重要性がお分かりいただけただろうか。
またバックアップデータをリカバリーする際には、リカバリーに要する時間も考慮する必要がある。システム障害などでリカバリーが必要になる場合、大量のデータをリカバリーすることになる。場合によっては数時間からそれ以上の時間を要することもある。サービス復旧までに要する時間の中で、リカバリーに要する時間は大きなポイントになるので、RTOを考慮したバックアップ計画も重要だといえる。
バックアップ/リストアにはさまざまな手法や技術が存在し、それぞれに得手、不得手があり、要する資源も大きく異なる。対象システムで目標とするRPO/RTOを実現するために、どのような手法や技術を用いるべきかなどは次回以降に紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品選定前に読んでおきたい基礎技術
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー