コストとセキュリティはトレードオフの関係
IoTの未来を台無しにするセキュリティ問題、なぜリスクが増大するのか
IoT分野は成長の一途をたどっている。しかし、成長すればするほどセキュリティ問題も増えていく。今後どのようにIoTセキュリティを考えていけばいいのだろうか。
予測の範囲は大きく異なるものの、アナリストとベンダーの予測が完全に一致をしていることがある。それは、これから数年の間にネットワークに接続しているIoT(モノのインターネット)のデバイス台数が大幅に増えることだ。2020年までに増える予測範囲は200億~500億台と幅広い。数値に対して控えめという表現が適切かどうかはさておき、Gartnerは200億台と控えめな予想を立てている。最終的な台数が何台になろうとも、その数が膨大であることに変わりはない。
これは楽観的で出来過ぎた話であるように思えるかもしれない。だが影の側面もある。それは、セキュリティ問題と前代未聞のサイバー犯罪の脅威だ。場を盛り下げて、明るく輝かしいデジタル世界に向けた技術的な進歩を悪者扱いしたいと思う人はいないだろう。だが、この事実を公然と無視するのは、あまりにも稚拙な対応だ。
併せて読みたいお薦め記事
IoTマルウェア「Mirai」に関する記事
- 「Mirai」より凶悪な攻撃が起きる――IoTセキュリティが2017年に進むべき方向は
- “アンナ先輩”の「Mirai」がより凶悪に? DDoS攻撃を約50倍に増幅する手口が判明
- IoTマルウェア「Mirai」の大規模DDoS攻撃の黒幕は? 専門家が指摘する多くの疑惑
IoTセキュリティに関する記事
IoTの分野が成長すれば、セキュリティ問題が増えるという事実を受け入れよう
2016年後半から、サイバーセキュリティ業界は、幾つかの興味深いトレンドが見られている。例えば、前例のないデータトラフィックを伴うDDoS攻撃の上昇だ。サイバー犯罪は、増加の一途をたどる大きなエコシステムとなっている。2019年までにデータ漏えいによる損害は全世界で2.1兆円に上る可能性があると専門家は推測している。これは、遠い未来の話ではない。Juniper Networksによると、ビジネスインフラの接続が進むことで、2020年にはデータ漏えいに掛かる平均コストが1億5000ドルを超えるという。
最近の調査では、調査に参加した一般消費者の約52%がIoT製品に必要なセキュリティ機能が備わっていないと考えていることが明らかになった。さらに悪いことも判明している。それはIoTデバイス開発者の85%が、十分なセキュリティ機能を実装する前に製品を市場に出すべくプレッシャーをかけられている。さらに驚がくの事実も明らかになっている。調査対象となった開発者の90%が、現在市場に出回っているIoTデバイスには必要なセキュリティ機能が搭載されていないと答えているのだ。
このような状況に至った経緯
IoTデバイスが大幅に増加している理由の1つは、その価格にある。ネットワークの進化により世界各地でインターネットに容易かつ安価にアクセスできるようになり、ウェアラブルデバイスは日常に浸透しつつある。そのため、IoTデバイスの価格高騰は止まり、市場は安価なハードウェアであふれている。この価格感度の高さから、総合的なセキュリティ機能がIoTデバイスに搭載されていない状況は避けられない。というのも、低価格とセキュリティは相いれないトレードオフだからだ。
一般的にIoTデバイスは安価である。一般消費者を対象とした全接続型デバイスの50%は、メーカーが究極の選択を迫られている。大衆市場をターゲットにしたメーカーは、セキュリティ問題に投資する金銭的な余裕がほとんどない。というのも、コストの掛かる事業だからだ。
一方、サイバー攻撃者にとって、この状況は大量の脆弱(ぜいじゃく)なデバイスがはびこる豊かな土地だ。つまり人を食いものにする攻撃者にとって狩り場には多数の獲物が存在しているのだ。
DDoS攻撃は単なる一例にすぎない。だが、IoTデバイスにユーザーのデータが搭載されるようになれば、全く新しい次元の問題になる。残念ながら、インターネットに接続するIoTデバイスは日々増えているため、状況が好転しているとはいえない。
セキュリティの問題から抜け出すには
本稿の内容を読んで戦々恐々としている人もいるだろう。現時点でアクションを起こす必要はあるが、完全にお手上げというわけではない。突き詰めると、これは表裏一体の問題だ。1つはテクノロジーで、もう1つは人的な要素である。
サイバーセキュリティ業界は、さまざまなセキュリティの弱点を軽減するソリューションを生み出すことを目的とした研究開発によって進歩している。全ての関係者が問題の修復を約束すれば、セキュリティ機能が搭載された新しいテクノロジーを開発することが標準となる。今よりもずっと安全なIoTが生まれるだろう。ソフトウェア定義テクノロジーの台頭により、ハードウェアコンポーネントの何分の1というわずかなコストで、厳格なセキュリティプロトコルと暗号化を実装することが可能になっている。
ベンダーは、脱日用品化とセキュリティ機能などを搭載することで他社と差別化した製品の考案を検討すべきだろう。このような機能が搭載されればIoTデバイスの価格が上昇するのは明らかだ。このような機能をベンダーが目に見える利益として提供しなければ、消費者が追加料金を支払う気になることはないだろう。
それから、社会にとって重要なタスクが2つある。1つは、データの扱い方に関する意識を大幅に高めること。もう1つは、一般消費者が自分を保護してサイバー脅威を軽減する方法についての基本原則を伝えることだ。一般消費者は、自分たちの行動の影響を理解して、各IoTデバイスに保存するデータの種類についてよく考えなければならない。
最後に、政府機関は、適切な行動を取り、21世紀に増えるであろうサイバー犯罪の脅威に目を向ける必要がある。その対策は、サイバー対策活動を強化して、それをセキュリティポリシーの戦略的な構成要素とすることだ。政策立案者はサイバー犯罪について語ることを好むが、物事を実行に移す時期が来ている。事実、過去の賢人も「泥棒を捕らえて縄をなうことなかれ」といっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー